歴史が浅いながら日本のウイスキー業界で際立つ存在となった厚岸蒸溜所。
アイラモルトのようなウイスキー造りを目指しており、製造するウイスキーは「ジャパニーズアイラ」との呼び声も高まっているそうです。
本記事では、ウイスキー「厚岸」の種類や蒸留所の歩みやこだわりをご紹介します。
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ウイスキー「厚岸」の種類【24節気シリーズ】
厚岸蒸溜所では、日本の二十四節気をテーマにしたウイスキーを中心に製造しています。
日本の四季(春夏秋冬)を6つに分けた「二十四節気」をモチーフとし、約3カ月ごとにリリースされている「二十四節気シリーズ」は、2023年7月時点で11種類が販売済みです。
シリーズ名 | リリース年月 |
---|---|
【第1弾】厚岸 シングルモルトウイスキー 寒露 | 2020年10月 |
【第2弾】厚岸 ブレンデッドウイスキー 雨水 | 2021年2月 |
【第3弾】厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 芒種 | 2021年5月 |
【第4弾】厚岸 ブレンデッドウイスキー 処暑 | 2021年8月 |
【第5弾】厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 立冬 | 2021年11月 |
【第6弾】厚岸 ブレンデッドウイスキー 大寒 | 2022年2月 |
【第7弾】厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 清明 | 2022年5月 |
【第8弾】厚岸 ブレンデッドウイスキー 大暑 | 2022年8月 |
【第9弾】厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 大雪 | 2022年12月 |
【第10弾】厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 啓蟄 | 2023年2月 |
【第11弾】厚岸 ブレンデッドウイスキー 小満 | 2023年5月 |
シングルモルトとブレンデッドが混在する「二十四節気シリーズ」はストレートはもちろん、少量の加水、トワイスアップ、オンザロックなど、さまざまな飲み方で楽しめます。
本章では、そんな「厚岸」の二十四節気シリーズをご紹介します。
【第1弾】厚岸 シングルモルトウイスキー 寒露

- アルコール分:55%
- 容量:700mL
- 受賞歴
- ISC2021 銀賞
- SFWSC2021 ウイスキー部門アザーシングルモルトウイスキーカテゴリー 最優秀金賞
- WWA2021 ジャパニーズシングルモルト/ノンエイジカテゴリー 最優秀賞
厚岸ウイスキー「二十四節気シリーズ」の第1弾は、秋の二十四節気「寒露(かんろ)」をイメージしたシングルモルトです。
ドライフルーツの甘い香りをまとい、味わいはイチゴやオレンジのフルーティーさのほか、レモンの酸味とミルクのような甘味が広がります。
スパイシーなホワイトペッパーやチョコレートの甘みが漂う余韻は、厚岸での秋を感じさせるでしょう。

【第2弾】厚岸 ブレンデッドウイスキー 雨水

- アルコール度数:48%
- 容量:700mL
- 受賞歴
- WWA2022 ブレンデッドウイスキー 銀賞
- ISC2021 ワールドウイスキー部門 銀賞
- SFWSC2021 ウイスキー部門 アザーウイスキーカテゴリー 金賞
名前として使われている「雨水(うすい)」は2月19日ごろに当たる時節で、冬から春への変わり目の象徴です。
モルトの甘く香り高いピートとグレーンの軽やかさが調和し、華やかなハーモニーを生み出します。
ダークカカオやカスタードプリン、レーズン、柑橘の香りが広がり、味わいにはレモンやライムの爽やかさが感じられ、余韻にはスパイシーなホワイトペッパーやミルクチョコレートの甘味が続きます。
バレンタインに贈るチョコレートをイメージさせる、香りや余韻が楽しめるでしょう。

【第3弾】厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 芒種

- アルコール度数:55%
- 容量:700mL
- 受賞歴
- ISC2022 金賞
- SFWSC2022 最優秀金賞
厚岸ウイスキー「二十四節気シリーズ」の第3弾「芒種(ぼうしゅ)」。
芒種(ぼうしゅ)の季節である6月6日ごろは「田植え」や「のぎ(稲などの穀物の実の先端にある針状の突起)を有する植物の種」をまく時期です。
柑橘の酸味とシュガーシロップの甘さがバランス良く調和し、余韻では潮の塩味とカカオビターの苦味が広がり、柑橘の甘味が初夏をほうふつとさせる香りと味わいを引き立てます。

【第4弾】厚岸 ブレンデッドジャパニーズウイスキー 処暑

- アルコール度数:48%
- 容量:700mL
- 受賞歴
- WWA2022 ブレンデッド部門 世界最高賞
- SFWSC2022 銀賞
- ISC2022 銀賞
「厚岸 ブレンデッドジャパニーズウイスキー 処暑(しょしょ)」は、厚岸ウイスキー「二十四節気シリーズ」の第4弾です。
海外製造のグレーン原酒を輸入し厚岸で熟成させたウイスキーと、厚岸モルトと輸入グレーンとをブレンドしており、マヌカハニーやマーマレードの香りが広がります。
柑橘の酸味やシュガーの甘味のほか、余韻にはホワイトペッパーやドライソルト、シトラスビターとハチミツの甘味が口に広がるでしょう。
なお「厚岸 ブレンデッドジャパニーズウイスキー 処暑」は、ギフトにもおすすめです。
【第5弾】厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 立冬

- アルコール度数:55%
- 容量:700mL
- 受賞歴
- ISC2022 金賞
- SFWSC2022 金賞
厚岸ウイスキー「二十四節気シリーズ」の第4弾「立冬(りっとう)」は、11月8日ごろの冬の気が立つといわれている時期です。
黒糖やフルーツバスケット、チョコレート、しょうゆのような香りが広がり、柑橘系の甘味と酸味、チョコレートの甘味と苦味が調和します。
余韻はホワイトペッパー、ミカンの甘みが心地よく残り、まさにこっくりと濃厚な冬の味わいです。

【第6弾】厚岸 ブレンデッドウイスキー 大寒

- アルコール分:48%
- 容量:700mL
- 受賞歴
- ISC2023 銀賞
「厚岸 ブレンデッドウイスキー 大寒」はオレンジティー、黒糖、ストロベリー、レモンの香りが特徴的です。
シトラス系の酸味と甘味、シーソルトの味わいがアクセントを生み出し、ホワイトペッパー、カカオビターとチョコレートの甘味が余韻に残ります。
「大寒(だいかん)」は1月21日ごろの寒気が最高となるときを表す二十四節気です。

【第7弾】厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 清明

- アルコール度数:55%
- 容量:700mL
- 受賞歴
- ISC2023 金賞
二十四節気の「清明(せいめい)」にフォーカスした「厚岸」シリーズのシングルモルトです。
清明は、春の穏やかな日差しを受けて天地万物が清々しく、明るくあるという清浄明潔(せいじょうめいけつ)を略した言葉で、4月15日ごろの季節とされています。
キャラメルファッジやバニラ、マヌカハニー、柑橘、しょうゆ、潮の香りが調和し、呼応するように柑橘系の酸味と甘味、ハチミツの爽やかな味わいが広がります。
ホワイトペッパーやソルティレモン、柑橘系ビターとチョコレートの甘味が続きます。

【第8弾】厚岸 ブレンデッドウイスキー 大暑

- アルコール度数:48%
- 容量:700mL
- 受賞歴
- ISC2023 銀賞
7月23日ごろに訪れる「大暑(たいしょ)」をイメージしたウイスキー。
黒糖、ピンクグレープフルーツ、オレンジ、シリアル、ハチミツの爽やかな香りが調和し、オレンジやレモン、ハッサクといった柑橘系果実の酸味と甘味の、しょうゆのような塩味、レモングラス、セージのスパイシーさが広がります。
ホワイトペッパーやライムピール、チョコレートの余韻ある甘味が続き、まさに暑気が最高になる夏にピッタリです。

- アルコール度数:55%
- 容量:700mL
雪が降り積もりはじめる12月8日ごろの「大雪(たいせつ)」を表現したウイスキーです。
ハッサクやミカン・オレンジ・レモンの柑橘系のほか、ダージリンティーやハチミツ、黒糖、スミレの花の香りが漂います。
柑橘の甘みと酸味、しょうゆ、ハーブ、バターブレッドの風味が口の中に広がり、ホワイトペッパーとライムピール、完熟ミカンの甘みが余韻に残ります。
「厚岸シングルモルトジャパニーズウイスキー 大雪」で心身を温め、冬に備えるのもよいですね。
【第10弾】厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 啓蟄

- アルコール度数:55%
- 容量:700mL
「厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 啓蟄」は3月6日ごろに訪れる二十四節気「啓蟄(けいちつ)」をイメージしたウイスキー。
ダイダイやハッサク、ミカンといった柑橘類のほか、黒糖やみたらし団子、レモングラスが調和した爽やかな香りが楽しめます。
口に含むとマヌカハニーの味わいが生まれ、ホワイトペッパーや紅茶、塩レモン、カラメルの苦みと甘味が余韻に残ります。
「冬眠していた虫が穴からはい出す」季節を表す二十四節気「啓蟄(けいちつ)」の時期と共に「厚岸シングルモルトジャパニーズウイスキー 啓蟄」を味わってみましょう。

【第11弾】厚岸 ブレンデッドウイスキー 小満

- アルコール度数:48%
- 容量:700mL
「厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 小満」は、5月21日ごろに訪れる二十四節気の季節「小満(しょうまん)」をイメージしたウイスキーです。
黄色のトロピカルフルーツや炭のニュアンスが感じられる香りと、ハチミツレモンとピートが調和した味わい、ホワイトペッパーや柑橘の酸味と甘味が余韻として楽しめます。
「小満」の時期は万物が長じ、潤いに満ちる季節として農作物の成長が進むとされています。
豊かさと生命力が宿っているといえるウイスキーで春の息吹を感じる「小満」の季節をウイスキーとともに過ごしてみるのもよいですね。
「厚岸」24節気シリーズは節気通りに発売されていない
「厚岸 二十四節気シリーズ」は季節や自然の変化を表現した銘柄が多く、それぞれの時期に合ったウイスキーの味わいを楽しめる特徴があります。
しかし、「厚岸 二十四節気シリーズ」は、実際の二十四節気順に発売されているわけではありません。
四季 | 二十四節気名 | 日付 | 「厚岸」二十四節気シリーズの発売年月 |
---|---|---|---|
春 | 立春 | 2月3日ごろ | なし(発売未定) |
雨水 | 2月18日ごろ | 2021年2月 | |
啓蟄 | 3月5日ごろ | 2023年2月 | |
春分 | 3月20日ごろ | なし(発売未定) | |
清明 | 4月4日ごろ | 2022年5月 | |
穀雨 | 4月20日ごろ | なし(発売未定) | |
立夏 | 5月5日ごろ | なし(発売未定) | |
小満 | 5月20日ごろ | 2023年5月 | |
芒種 | 6月5日ごろ | 2021年5月 | |
夏 | 夏至 | 6月21日ごろ | なし(発売未定) |
小暑 | 7月7日ごろ | なし(発売未定) | |
大暑 | 7月22日ごろ | 2022年8月 | |
立秋 | 8月7日ごろ | なし(発売未定) | |
処暑 | 8月22日ごろ | 2021年8月 | |
白露 | 9月7日ごろ | なし(発売未定) | |
秋 | 秋分 | 9月22日ごろ | なし(発売未定) |
寒露 | 10月8日ごろ | 2020年10月 | |
霜降 | 10月23日ごろ | なし(発売未定) | |
立冬 | 11月7日ごろ | 2021年11月 | |
小雪 | 11月22日ごろ | なし(発売未定) | |
大雪 | 12月7日ごろ | 2022年12月 | |
冬 | 冬至 | 12月21日ごろ | なし(発売未定) |
小寒 | 1月6日ごろ | なし(発売未定) | |
大寒 | 1月20日ごろ | 2022年2月 |
ウイスキー「厚岸」の種類【その他】
公式ホームページのラインナップには残念ながら記載のない銘柄もありますが、Amazonなどでまだ入手可能な「厚岸」ウイスキーもあります。(2023年8月時点)
厚岸ウイスキー SARORUNKAMUY(サロルンカムイ)

- アルコール度数:55%
- 容量:200mL
- 「サロルンカムイ」の受賞歴
- ISC2021 銀賞
- SFWSC2020 最優秀金賞
- 「サロルンカムイ 海外版」の受賞歴
- WWA2022 シングルモルトウイスキー部門 銅賞
- ISC2021 金賞
- SFWSC2021 最優秀金賞
- 「サロルンカムイ 2021」の受賞歴
- ISC2022 金賞
- SFWSC2022 最優秀金賞
2020年2月に発売された厚岸蒸溜所初のシングルモルト「SARORUNKAMUY」は、3年間の熟成を経て造られています。
「サロルンカムイ」はアイヌ語で「鶴、タンチョウ」を意味しており、道東に生息するタンチョウをモチーフにしているそうです。
バーボン樽、シェリー樽、ミズナラ樽、ワイン樽で熟成したピーテッド原酒とノンピーテッド原酒をヴァッティングし、ライトリーピーテッドな風味に仕上げられています。
「SARORUNKAMUY」は国際的にも高評価を受けており、SFWSC2020で国内版が最優秀金賞に輝くなど、品質の高さが認められています。
2021年には国内版が再販されていますが、2023年8月時点では、AmazonなどのECサイトやオークションサイトでも入手が可能です。

「サロルンカムイ」のレビュー
whiskeen編集部のバーテンダーのいのかずが、実際に「サロルンカムイ」を飲んだときの感想をコメントします。
どんな味わいか紹介します!
▼香り
しっかりと感じられるベリーのフルーティーさ、ミズナラ樽由来のオリエンタルな樽香、ほどよいスモーキーな香りがします。
▼味わい
バニラやモルトの甘さ、ワイン樽由来の熟したベリーをメインに、ライトなピート感、ミズナラ樽由来のスパイシーな余韻が感じられます。
少しアルコール刺激はありますが、短期熟成とは思えないリッチな味わいです。
▼総評
ジャパニーズウイスキーの良さや蒸溜所のポテンシャルが、ハッキリと感じられる1本です。
樽の個性がしっかりと出ている印象で、飲んだときの満足感や風味の豊かさは群を抜いています。
発売当時は200mlで5,000円以上する強気な価格設定でしたが、間違いなく価格以上の味わいがありました。
厚岸ブレンデッドウイスキー北海道限定ラベル 2021

- アルコール度数:48%
- 容量:200mL
厚岸町の清澄な大自然で誕生した北海道限定の「厚岸」です。
ぜいたくに使われた厚岸蒸溜所のモルトと、熟成されたグレーンが融合し、豊かな風味を生み出しています。
ニューボーン「厚岸」の種類
「厚岸」の種類には、他にも「NEW BORN」シリーズが販売されています。
ニューボーンとは、まだウイスキーと呼べない原酒で熟成年数は浅いものの特有の香りや味わいがあります。
特に厚岸で採れる牡蠣(カキ)との相性が良く、数滴たらすと旨味が一体となり、潮の香りがより広がります。
厚岸 NEW BORN FOUNDATIONS 4

- アルコール度数:48%
- 容量:200mL
2019年8月に発売された「厚岸 NEW BORN FOUNDATIONS 4」は、13〜30カ月の熟成したモルトとグレーンのブレンデッドウイスキーです。
厚岸蒸溜所で蒸留・熟成した原酒のみを使用し、北海道産の大麦麦芽も一部原料に含みます。
モルト中の50%以上はシェリー樽熟成原酒を使用しており、ミカン、シトラス、レーズンなどの香りのほか、ホワイトペッパーとダークチョコレートのスパイシーでビターな味わいが特徴です。

厚岸 NEW BORN FOUNDATIONS 3

- アルコール度数:55%
- 容量:200mL
「厚岸 NEW BORN FOUNDATIONS 3」は、2019年3月に発売されたシングルモルトで、希少なミズナラ樽で8~23カ月熟成したノンピーテッドモルト原酒を使用しています。
使用されているミズナラ樽は、厚岸蒸溜所初の地元北海道産ミズナラ材です。
黒糖、バニラ、フレッシュメロンの甘い香りにナツメグのスパイシーな香りも感じられます。
また、イギリスの作家・ジャーナリストでウイスキー評論家のジム・マレー氏の 「ウイスキーバイブル2020」で、93点の高得点を獲得するほど、評価が高いウイスキーです。

厚岸 NEW BORN FOUNDATIONS 2

- アルコール度数:58%
- 容量:200mL
「厚岸 NEW BORN FOUNDATIONS 2」は、厚岸蒸溜所が2018年8月に発売のウイスキー。
バーボン樽で8~17カ月熟成したピーテッドモルト原酒をヴァッティングして造られました。
ピーティーさのほか、厚岸の海霧と風由来の塩味と柑橘類の風味が見事に調和し、個性豊かな味わいが楽しめます。
ジム・マレー氏の「ウイスキーバイブル2020」で高得点の94点を獲得し「Liquid Gold award」を受賞しています。

厚岸 NEW BORN FOUNDATIONS 1

- アルコール度数:60%
- 内容量:200mL
「厚岸 NEW BORN FOUNDATIONS1」は、2018年2月にリリースされた厚岸蒸溜所の初商品です。
バーボン樽で5~14カ月熟成したノンピートモルト原酒をヴァッティングし、アルコール度数は60%と樽出し原酒に近い味わいが特徴です。
18年以上の長期熟成モルトが豊かな香りとスモーキーな要素を醸し出し、コクと甘み、樽香が見事に調和。
レモンやナッツ、ハチミツの甘い香りが漂い、柑橘系の酸味とふくよかな甘みを楽しめます。
バニラの甘さとコーヒーのビター感をほうふつさせる余韻のほか、スモーキーな心地よい余韻が堪能できるでしょう。
ウイスキー「厚岸」について

北海道の地名が名前についた「厚岸」はスコッチウイスキーの伝統製法によって造られています。
厚岸の豊かな自然環境が育む厳選された原料を使用することで、地域の特色を映し出しています。
ウイスキー「厚岸」の製造地

ウイスキー「厚岸」は北海道の南東部に位置する厚岸町にある厚岸蒸溜所で製造されています。
厚岸蒸溜所を営む堅展実業株式会社は、異業種からウイスキー造りに参入。
スコットランドの伝統的な製法に倣ってアイラモルトのようなウイスキーを造ることを目指しています。
「厚岸」はアイヌ語で「牡蠣のあるところ(アッケシシ)」という意味です。
南側には厚岸湾が入り組み、厚岸湖を形成しています。
そんな厚岸の地は深い霧と豊富な泥炭が特徴で、ウイスキー造りに適した土地です。
厚岸蒸溜所の歩み

アイラへの憧れと敬意からスタートし、一歩ずつ手探りで製造工程を築き上げてきた厚岸蒸溜所の歩みを追ってみましょう。
完全ゼロからのウイスキー製造を開始する
厚岸蒸溜所は製造経験者のいない「完全ゼロ」の状態からウイスキー製造をスタートさせました。
彼らはスコットランドの文献や技術者の知識を学ぶだけでなく、トップレベルの企業が行う品質管理を取り入れます。
2013年にはウイスキーの試験熟成を開始し、2016年に蒸留を開始。
厚岸蒸溜所は、徹底した学習と努力でウイスキー製造のすべてをゼロからスタートし、自らの道を切り開いてきたことが分かります。
「多層レイヤー」によるブレンド法にたどり着く
厚岸蒸溜所は、ウイスキー造りにおいて独自のブレンド法「多層レイヤー」を確立しました。
多層レイヤーとは、季節ごとに異なる原酒や樽を組み合わせ、ウイスキーの味や香りに多様な層を重ねる手法です。
この手法により、独自の個性を引き出すことに成功しました。
多層レイヤーによる「厚岸」独自の味わいは、男性だけでなく特に若い女性にも喜ばれるそうです。
フルーティーな風味を持ちながらも、豊かなコクと余韻を楽しめるウイスキーとして、高い評価を受けるようになりました。
国内外から高く評価される「厚岸」
厚岸蒸溜所は多彩な種類のウイスキーを世に送り出し、国内外から高い評価を受けています。
2018年には「NEW BORN FOUNDATIONS」のリリースをスタート。
その後も「SARORUNKAMUY」や「二十四節気シリーズ」など独自のウイスキーを発売し、多くは国際的なコンペティションで受賞を果たし、いずれも高品質だと認められました。
二十四節気シリーズ「寒露」のWWA2021最優秀賞、「厚岸ウイスキー SARORUNKAMUY」のSFWSC2020最優秀金賞は、厚岸蒸溜所のクオリティーを証明した一例といってもよいでしょう。
「厚岸」成功の背景には、ウイスキー造りの情熱と試行錯誤を重ねてきた蒸留所の姿勢があります。
「厚岸」のこれから

ウイスキー造りのプロでない者たちが、スコットランドの知識と技術を学びながら、独自のブレンド法を確立した厚岸蒸溜所の挑戦。
彼らは現在も心地よいピートの世界を広める使命感を胸に、独自のウイスキー造りを続けています。
彼らの思いは、「心地よいピートの世界を1人でも多くの人に届けること」。
今後も地域との深いつながりを大切にし、世界でも認められるオリジナルなウイスキーを創造していくことでしょう。
ウイスキー「厚岸」の製造のこだわり

『アイラモルトのようなウイスキーを造りたい』という厚岸蒸溜所の代表の思いが、ウイスキー製造に息づいています。
本章では、厚岸蒸溜所のこだわりや技術に迫ります。
厚岸町だからこそ可能な「テロワール」
ウイスキー造りに深く関わる厚岸町の特有の環境と「テロワール」。
「テロワール」とは、特定の地域の気候・土壌・環境などが作物や飲料に与える影響を指しており、その地域ならではの風味や特性を生み出す要因です。
「厚岸」の場合、北海道の大自然から得た大麦、ミズナラ、ピートなどが、独自の風味を生み出しています。
使用する二条大麦は涼風品種を栽培しており、収穫からウイスキー造りがスタートしています。
フォーサイス社のポットスチル
厚岸蒸溜所では、本場スコットランドの蒸留機器を採用しています。
採用しているポットスチルはスコットランドのフォーサイス社製。
蒸留機器だけでなく施設の設計すべてをフォーサイス社の職人が手掛けており、スコットランドの本格的なウイスキー製造が再現されています。
ミズナラ樽を採用
ウイスキー「厚岸」はバーボンやシェリー樽などに加え、希少なミズナラ樽も使用しています。
ミズナラは希少な木材で、他の樽とは異なる香りや風味をつけるために欠かせません。
ミズナラの特有の香りが原酒に調和し、個性的なウイスキーが誕生しています。
また、熟成庫は厚岸湾の近くに位置し、海洋性気候の影響を受けながら熟成が行われます。
清流「ホマカイ川」からの恵み
「ホマカイ川」は蒸留所のそばを流れる清らかな川で、ウイスキーの製造に必要な水を供給します。
ホマカイ川の水は美しい自然環境に育まれたもので、川には貴重な動植物も生息しているそうです。
蒸留所のある厚岸町近辺は「厚岸霧多布昆布森国定公園」に指定されており、この土地の豊かな水と自然が大切にされています。
自然からの恩恵を大切にし調和することが、ウイスキー造りへと結びついているのでしょう。
「厚岸」はまずいのか?ウワサを検証
SNSでウイスキー「厚岸」の評価を調べると、高評価のある一方で「磯臭い」「まずいと感じた」との口コミもありました。
「厚岸」はアイラモルトを目指した味わいのため、ピートが苦手な人には合わないかもしれないという意見にも注目です。
SNS上の評価は主観的で好み・個人の感じ方によるものなので、実際に飲んでみて自分の好みと合うか判断するのが一番だといえるでしょう。
最後に

厚岸蒸溜所はアイラモルトを目指し「二十四節気シリーズ」といった独自の銘柄が生み出しており、製法も多層レイヤーといったこだわりを持っています。
技術の磨き込みとテロワールを大切にし、独自のウイスキーを提供し続ける姿勢が印象的ですね。
この先も地元の恵みを活かし、世界に誇るウイスキーを追求していくことでしょう。