バーボンは、「辛口」「男性的」と評されることが多いウイスキーです。
スコッチやジャパニーズなどのシングルモルトに比べると、穀物のスパイシーさが際立っているので「飲みにくい」と感じる方もいるでしょう。
しかし、バーボンの魅力はその「スパイシーさ」「辛さ」、「力強さ」にあります。
今回はそのバーボンの魅力を伝えるべく、バーボン・バー勤務経験のある筆者が、これまで飲んだことのあるバーボンの中から厳選して12本ご紹介します。
バーボンの特徴や選び方も解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
バーボンとはアメリカンウイスキーの一種
おすすめをご紹介する前に、バーボンの分類について簡単に解説します。
アメリカンウイスキーは世界5大ウイスキーのひとつ
バーボンとは、アメリカンウイスキーの一種です。
アメリカンウイスキーとは、その名のとおりアメリカ産のウイスキーのこと。
スコッチやジャパニーズ・カナディアン・アイリッシュと並ぶ「5大ウイスキー」のひとつです。
バーボンとアメリカンウイスキーの関係
「アメリカンウイスキー=バーボン」と誤解されがちですが、バーボンはアメリカンウイスキーのひとつに過ぎません。
簡単にいうと、アメリカンウイスキーの中で「原料に51%以上トウモロコシが含まれているウイスキー」がバーボンです。
バーボンの定義は、アメリカ合衆国の連邦規則集、第27編のアルコールに関する規定に定められています。
参考:27 CFR Part 5 -- Labeling and Advertising of Distilled Spirits
他にも蒸留や樽詰めにおける細かい規定はありますが、他のアメリカンウイスキーとの大きな違いは原料です。
アメリカンウイスキーを原料比率で分類すると、次の6種類に分けられます。
- バーボンウイスキー(トウモロコシ51%以上)
- ライウイスキー(ライ麦51%以上)
- ホイートウイスキー(ホイート、つまり小麦51%以上)
- モルトウイスキー(モルト、つまり大麦麦芽51%以上)
- ライモルトウイスキー(ライモルト、つまりライ麦麦芽51%以上)
- コーンウイスキー(トウモロコシ80%以上)
参考:https://life.nikka.com/sp/enjoy/library-episode08-04.html
いずれのアメリカンウイスキーも、160プルーフ(アルコール度数80%)以下で蒸留することが定められています。
原料の分類以外では、アメリカンウイスキーにはテネシーウイスキーという種類があります。
テネシーウイスキーは「ジャック ダニエル」が有名ですね。
テネシーウイスキーもバーボン同様、トウモロコシ51%以上という原料比率の規定があります。
バーボンの特徴と種類
バーボンの特徴や種類について説明します。
ぜひ、他のウイスキーとの違いを確認してみてください。
バーボンの特徴
バーボンには、他国のウイスキーにはない特徴が3つあります。
- 原料に使われるトウモロコシ
- ミネラル分の豊富な水
- 内側を焦がした貯蔵樽
原料
バーボンの甘みは、原料のトウモロコシが由来です。
さらにライ麦が入ることで、スパイシーさが生まれます。
ウイスキーの原料について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
水
バーボン造りにおいて、ライムストーンウォーターと呼ばれる硬水が使用されていることも大きな特徴です。
多くのスコッチやジャパニーズウイスキーは軟水で造られていますが、バーボンに使用されているのは硬水。
このため、バーボンは他国のウイスキーに比べて辛口に仕上がるのです。
樽
最後の特徴は、貯蔵する樽です。
貯蔵に内側を焦がしたオークの新樽を使うことで、他国のウイスキーにはない香ばしいフレーバーが生まれます。
バーボンの種類
バーボンは、次のように分類できます。
- ストレートバーボン(2年以上熟成させたバーボン)
- シングルバレル(単一の樽出しバーボン)
- スモールバッジ(少数の厳選された樽のみをブレンドしたバーボン)
シングルバレルは、1つの樽からできた唯一無二の味を楽しめるバーボンです。
通常、バーボンは複数の樽の原酒をブレンドして味の調整をしますが、シングルバレルは1つの樽の原酒のみを使用。
できの良いバーボンを、そのまま味わえます。
バーボン・バー勤務経験者がすすめるバーボンの選び方
バーボンは好みや価格で選んでしまいがちですが、飲み方とアルコール度数で選ぶことも大切です。
詳しく解説します。
飲み方で選ぶ
価格や好みのほかに、飲み方でバーボンを選ぶのもおすすめです。
ロックやストレート
ロックやストレートで飲むなら、大抵のバーボンは美味しく飲めるでしょう。
特にロックで飲む場合は、味わいや風味の変化をゆっくりと楽しむのがいいですね。
ハイボール
ハイボールで飲む場合は、小麦比率の高いバーボン、もしくはライ麦を使用していないバーボンを選ぶのがおすすめです。
ライ麦比率が高いと、ライ麦の味と炭酸の苦みが合わさり、味のバランスが崩れやすいのです。
あえて苦さを楽しみたいのならよいのですが、そうでない場合はライ麦の少ない甘めのバーボンを選びましょう。
水割り
バーボンの水割りはスパイシーさが薄まってアンバランスになりやすいので、少なめの水で作ることをおすすめします。
ハイボール同様、小麦比率の高いバーボンだと飲みやすい水割りが作れます。
また、割り水の硬度も重要です。
バーボンは硬水でできているウイスキーなので、可能なら割り水も硬水を使うとよいでしょう。
他にもウイスキーの飲み方はいろいろあります。詳しくはこちらをご覧ください。
アルコール度数で選ぶ
好みや飲み方の他に、アルコール度数でバーボンを選ぶ方法もあります。
バーボンの多くは、加水してアルコール度数を40%程度に調整して製品化されています。しかし、中には加水せず高アルコール度数のまま製品化されているバーボンもあります。
バーボンそのものの味を知りたいなら、高アルコール度数のバーボンを選んでみてください。アルコールの刺激の奥に、穀物の深い甘みと豊かな香り、長い余韻を楽しむことができます。
飲みやすさを重視するなら、アルコール度数の低い加水されたバーボンを選びましょう。おつまみや食事に合わせながら気軽に楽しむことができますよ。
初心者におすすめ クセの少ないデイリーバーボン
バーボンを飲み慣れていない方や、ウイスキーそのものをあまり飲んだことがない方におすすめしたいバーボンをご紹介します。
メーカーズマーク

メーカーズマーク | アルコール度数:45% 容量:700mL 希望小売価格:2,800円(税別) 所有者:ビームサントリー参考:サントリー |
赤い封ろうが特徴の「メーカーズマーク」。
甘い風味とバニラ香が心地よい、非常に飲みやすいバーボンです。
飲みやすさの秘密は、原料に小麦を使用していること。
通常、バーボンはトウモロコシとライ麦と大麦麦芽を使用していますが、「メーカーズマーク」はライ麦の代わりに冬小麦を使用しており、小麦由来の甘さが飲みやすさを生み出しています。
ロックはもちろん、ハイボールや水割りで飲むのもおすすめです。

ジムビーム
ジムビーム | アルコール度数:40% 容量:700mL 希望小売価格:1,540円(税別) 所有者:ビームサントリー 参考:サントリー |
バーボン市場を多く占める大人気のバーボン、「ジムビーム」。
飲みやすいうえにリーズナブルなので、ロックやソーダ割り、カクテルなどにして自由に楽しめるバーボンです。
味わいは軽く、それでいてバーボンらしいスパイシーさがあります。
キャラメルなどの甘い香りも楽しめるので、バーボン初心者でも飲みやすいのが特徴です。
柑橘との相性も良いので、レモンやオレンジと共に飲んでも良いでしょう。

エンシェント・エイジ(2A)
2年以上の熟成をさせたストレートバーボンの代表銘柄。
名前は「古き良き時代」という意味で、アメリカにおいては開拓時代のことを指します。
程よいコクがありつつ、喉越しは非常にスムーズ。
ロックでもハイボールでもおいしく飲める、肩肘を張らずに楽しめるバーボンです。

中級者におすすめ バーボンらしい力強さを感じる1本
飲みやすいバーボンでは物足りない方におすすめしたい銘柄をご紹介します。
バーボンの力強さや、「骨太」と形容されるコクが楽しめる銘柄です。
オールド クロウ

オールド クロウ | アルコール度数:40% 容量:700mL 所有者:ビームサントリー 参考:サントリー |
味わいと香りのバランスがよく、穀物の爽やかさが感じられるバーボンです。
ラベルには、名前にあるクロウ(カラス)が描かれていますが、実は名前の由来は創業者のジェイムズ・クロウ医学博士。
博士は、バーボン造りに欠かせない製法である「サワーマッシュ方式」を開発した人物として有名です。
コクと深みがあるので、ロックでじっくりと味わうのがおすすめです。

バッファロートレース
バッファロートレース | アルコール度数:45% 容量:750mL 所有者:サゼラック社(代理店:明治屋) |
ライ麦由来のスパイシーさと、バニラの甘さをバランスよく楽しめるのが「バッファロートレース」です。
バッファロートレース蒸留所は、アメリカの中で現在操業している最古の蒸留所。
禁酒法の時代ですら、特別に稼働が許されていたという歴史ある蒸留所のひとつです。
「バッファロートレース」は8年以上長期熟成された原酒が使用されており、非常にまろやか。
ロックやストレートでじっくり味わいたいバーボンです。

ワイルドターキー 8年
ワイルドターキー 8年 | アルコール度数:50.5% 容量:700mL 所有者:CT Spirits Japan |
「ワイルドターキー」は甘さが控えめで、穀物の力強さが感じられるバーボンです。
その理由は他のバーボンよりも原料のライ麦比率が高く、トウモロコシ比率が低いため。甘さが抑えられ、ライ麦のスパイシーさが際立っています。
特に、「ワイルドターキー8年」はコクのあるフルボディで、「ワイルドターキー」よりも力強い味わい。高いアルコール度数で、濃厚な味と香りが楽しめます。
ぜひロックで味わってみてください。

ノブクリーク シングルバレル

ノブクリーク シングルバレル | アルコール度数:60% 容量:750mL 所有者:ビームサントリー 参考元:サントリー公式サイト |
キャラメルやバニラの甘い香りに加え、オーク樽のウッディな香りが楽しめるバーボン。
アルコール度数60%の重厚感がある味わいで、飲んだ後も長い余韻が楽しめます。
「ノブ クリーク シングルバレル」は、9年樽熟成の中から、さらに厳選した1つの樽を原酒としてボトリングしています。
造っているのは「ジムビーム」の第6代マスターディスティラー、ブッカー・ノウ。
「ノブ クリーク シングルバレル」本来のバーボンの味を目指して造られた逸品です。

特別な日に飲みたい 高級なプレミアムバーボン
厳選された樽から造られた、プレミアムなバーボンを紹介します。
特別な日に飲むのはもちろん、プレゼントにしても喜ばれるでしょう。
ブラントン
ブラントン | アルコール度数:46.5% 容量:750mL 所有者:サゼラック社(宝ホールディングス) |
八面体のおしゃれなボトルが印象的なプレミアムバーボン。
ラベルには蔵出しの日付やボトルナンバーなどが記載されています。
「ブラントン」はいわゆるシングルバレルで、1つの樽からボトリングされています。
その証として、ラベルに製造番号などが記載されているのです。
まろやかで甘みもありますが、バーボンらしい骨太なコクが感じられます。
ウッディな香りも楽しめるので、ストレートで飲んで複雑かつ成熟した味わいをゆっくりと堪能するのがおすすめです。
加水しても、コクがしっかりと残るので、トワイスアップやロックで飲むのもおすすめです。

イーグル・レア 10年
イーグル・レア 10年 | アルコール度数:45% 容量:700mL 所有者:サゼラック社 (代理店:明治屋) |
アメリカの国鳥であるイーグル(ワシ)の名前を冠したバーボン。
「レア」は「希少」という意味です。
10年もの長期熟成を経ており、深いコクがあります。
木やナッツ、土や革などのさまざまな香りが楽しめ、バーボンの奥深さが感じられますよ。
ストレート、もしくはトワイスアップで飲むのがおすすめです。

フォアローゼズ プラチナ
フォアローゼズ プラチナ | アルコール度数:43% 容量:750mL 所有者:キリンホールディングス 参考:キリンホールディングス |
4輪のバラが描かれている、日本では有名なバーボン「フォアローゼズ」。
「フォアローゼズ プラチナ」は、ケンタッキー州200周年を記念して造られたお酒です。
長期熟成した限りある樽から、さらに熟成のピークに達したものだけを厳選してボトリングされているぜいたく品。
口当たりはクリーミーで、バランスの取れた味の中には木の香りやバニラ香があり、ラベルに描かれたバラのように華やかなバーボンです。

一度は味わいたい、入手困難な幻のバーボン
生産量が限られている希少なバーボンを紹介します。
ヴェリー オールド セントニック 12年 エンシェントカスク
ベリー オールド セントニック 12年 エンシェントカスク | アルコール度数:45% 容量:750mL |
野性味のある辛口のバーボンで、非常に飲みごたえのある「ヴェリー オールド セントニック」。
酸味とフルーティさがあり、一度飲んだら忘れられないほどのおいしさです。
原酒はヘブン・ヒルで、わずか3人の職人が熟成管理やボトリングなどを行っています。
職人が少ない上に手作りなので生産量を増やすことができず、結果、市場に出る本数が少ないのです。
ラベルの「ニックじいさん」は、禁酒法時代に密造酒を造っていたとされる人物。
クリスマスには、特別に販売もしていたという逸話が残っている人気者です。
そのニックじいさんにあやかって付いた名前が「オールド セントニック」。
「セント・ニコラウス(サンタクロース)のバーボン」や「聖人ニックじいさんのバーボン」という意味です。
パピー ヴァン ウィンクル ファミリーリザーヴ 15年

パピー ヴァン ウィンクル ファミリーリザーヴ 15年 | アルコール度数:53.5% 容量:750mL |
市場でなかなか見つけることのできない、かなり希少なバーボンです。
「パピー ヴァン ウィンクル」は、アメリカではコレクターが血眼になって探すほどの人気アイテムなのです。
酒名は禁酒法解禁後のバーボン営業に尽力した、ジュリアン・P・パピーヴァン・ウィンクル氏から。
ラベルに描かれている人物、その人です。
製法にこだわり、原料はライ麦ではなくトウモロコシと小麦を使用。最高の熟成を迎えた樽だけを厳選してボトリングされています。
原料から瓶詰めまでを社長のヴァン・ウィンクル・3世が徹底的に管理している、最高級バーボンです。
小麦由来の甘みがありますが、力強く奥深い味わい。
余韻が非常に長く、じっくりと味わうことができます。ぜひストレートで飲みたい逸品です。
ボトルのパピーヴァン・ウィンクル氏のように、葉巻を合わせるのも一興ですよ。
まとめ
バーボン・バー勤務経験者目線で、おすすめの12本のバーボンを紹介しました。
一口にバーボンといっても、実は味わいにはさまざまな種類があります。
また、同じバーボンでも、飲み方を変えれば味わいが変わります。
この記事を参考にいろいろなバーボンを試して、好みに合ったものを見つけてみてください。
ご自身の好みが分かれば、それを軸にさまざまなバーボンの味を楽しめるようになりますよ。