「ボウモア」は、知名度が高くファンが多い銘柄です。
流通量も多いことから、コンビニで見かけたことがあるという方もいるのではないでしょうか。
磯の香りと柑橘系のさわやかな香りのバランスがよく、「アイラの女王」と呼ばれています。
一方で、ネット上では「ボウモア まずい」「ボウモア 正露丸」という言葉を見かけることがあります。
ではなぜ、『まずい』といわれているのでしょうか?
この記事では、「ボウモア」がまずい、おいしいと意見が分かれる理由について説明します。
「ボウモア」の販売されている種類、おいしい飲み方について紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の監修者

大中 ヨシ
都内勤務のバーテンダー兼ウイスキー専門のwebライター。ウイスキープロフェッショナル資格所有。休日には蒸留所や温泉を巡っています。普段はジャパニーズやスコッチを愛飲。推し蒸留所はキルホーマンです。
ボウモアとは
「ボウモア」はゲール語で「大きな岩礁」という意味です。
その名の通り、ボウモア蒸溜所は波打ち際の岩盤を削り取り整地した場所に建設されています。
ダイレクトに海に面した環境でウイスキー造りをしているため、「海のシングルモルト」と表現されている点にも注目です。
常に海と対峙する姿にロマンを感じますね。
そんな「ボウモア」の歴史や製法を説明します。
「ボウモア」の歴史
ボウモア蒸溜所の創業は1779年。
アイラ島最古の認定蒸留所で、スコットランド全体でみても2番目の古さを誇ります。
1980年には故エリザベス2世が訪問した、輝かしい歴史があります。
そんな華やかな経歴とは裏腹に、経営は安定せずオーナーが何度も交代しています。
1994年にサントリーが買収し、経営を根本から立て直しました。
現在はサントリーの子会社であるビームサントリーに移管・運営しています。
「ボウモア」の製造場所
ボウモア蒸溜所は、スコットランド西岸沖に位置するアイラ島にあります。
アイラ島は日本の淡路島程度の狭い面積しかありませんが、現在9つの蒸留所(※)が稼働しています。
※2022年9月現在。復活予定のポートエレン蒸留所を含めず。
穏やかな気候とピートが豊富に採れる環境から、昔からウイスキー造りが行われていました。
その気候や風土から、アイラ島は「ウイスキーの聖地」と呼ばれています。
また、ボウモア蒸溜所の海抜0mに位置する貯蔵庫の存在は、ウイスキーの聖地の中でも特別です。
No.1 Vaultsと呼ばれるこの貯蔵庫は、スコッチモルトウイスキー貯蔵庫の中で最古という歴史があります。
さらに、貯蔵庫の床面は海面より下に位置し、半地下のような造りになっていることから貯蔵庫全体が湿っており、海の香りが常に充満している環境です。
以上のことから、ボウモア蒸溜所は唯一無二の蒸留所だということがわかります。
「ボウモア」の製法
ボウモア蒸溜所は240年以上の歴史を持ち、製法も継承し続けています。
代表的な製法のひとつがフロアモルティングです。
フロアモルティング
フロアモルティングとは、大麦を床全体に広げ発芽を促す技法を指します。
発芽した大麦を乾燥室に運び、ピートを焚く熱で発芽をストップさせるという焚きこみ作業により、「ボウモア」特有のスモーキーな香りが誕生。
さらに、発芽に最適な温度に保つために4時間ごとに手作業でかき混ぜるという、根気のいる作業です。
また現在、ボウモア蒸溜所では全モルトの30%ほどを自家製のモルトでまかなっています。
ちなみに、自社で100%フロアモルティングをしているスコッチウイスキー「スプリングバンク」も、この機会にぜひ覚えておくとよいでしょう。
蒸留
粉砕・糖化・発酵という行程を経て、ウォッシュと呼ばれるもろみが出来上がります。
ウォッシュを蒸留し、アルコール度数を高めていくのですが、その際に使う蒸留器は小型のポットスチルです。
ボウモアの蒸留回数は2回で、出来上がった原酒の中でも香りがよいものだけを取り出し、樽に詰めていきます。
小型のポットスチルを使用して蒸留されるスコッチウイスキーには「マッカラン」もありますので、気になる方は以下の記事をあわせてご覧ください。
熟成樽
熟成のためにメインで使用している樽は、ホワイトオークのバーボン樽とスパニッシュオークシェリー樽の2種類です。
割合はバーボン樽を70%、シェリー樽を30%の比率で使用。
そのほか、ワイン樽やミズナラ樽などさまざまな熟成用の樽が用意されています。
さらに、ウイスキーの品質を保つために樽は3回までの使用と決められている徹底ぶりです。
余談ですが、熟成樽を2回までしか使用しないスコッチウイスキーには「グレンモーレンジィ」もあります。
「ボウモア」商品ラインナップ
『終売、休売の商品もあるのでは?』という噂が流れる「ボウモア」。
2022年10月現在、サントリーのオフィシャルサイトに掲載されている各商品を紹介します。
ボウモア12年

アルコール度数:40%
ボウモア蒸溜所の代表的な存在である12年ボトルです。
香りは潮風の風味とやわらかいスモーキーフレーバー、そしてさわやかな柑橘系が混ざり合っています。
口に含むと、塩っぽさの後、はちみつに似た甘味が余韻として残ります。
アイラモルトの個性を残しつつ、ピート香を抑えた中間的な味わいです。

新サイズ350mLで試すこともおすすめ
以下の記事でも紹介していますが、「ボウモア12年」には新サイズ350mLが登場しています。
350mLサイズは『ピート香が得意かどうかわからない』という方でもチャレンジしやすいサイズと価格ですので、ぜひ一度手に取って、あなたの味覚に合うかどうか試してみてください。

ボウモア12年のおいしい飲み方
おすすめはハイボールです。
さわやかな柑橘系と、潮風の香りがふわっと立ち上がります。
飲み口はドライさが際立ち、食中酒にぴったりです。
燻製(くんせい)系のおつまみや、牡蠣(かき)などの海鮮と合わせると相性抜群ですよ。
ボウモア15年

アルコール度数:43%
12年間バーボン樽で熟成したのち、3年間シェリー樽で追加熟成しています。
「ボウモア12年」と比べると、よりビターさが増し、ダークチョコレートのような甘さと、コーヒーのような苦味を感じます。
舌触りが滑らかで、スモーキーさは控えめです。
ボウモア15年のおいしい飲み方
ストレート、もしくはトワイスアップがおすすめです。
お好きな方はシガーと合わせてみてはいかがでしょうか。
ボウモア18年

アルコール度数:43%
「ボウモア15年」と比べると、シェリー樽熟成の特徴をしっかりと感じる、ぜいたくな1本です。
穏やかな香りで、ほとんどピート感がありません。
チョコレートや完熟したフルーツの甘さをふわっとスモーキーさが包み込む。そんなイメージの味わいです。

ボウモア18年のおいしい飲み方
ストレートがおすすめです。
チョコレートやドライフィグと相性がいいので、ゆったりとした気分で味わってみてください。
ボウモアNO.1

アルコール度数:40%
「NO.1」には2つの「1」の意味が隠れています。
1つ目は、ファーストフィルバーボン樽を使用している点です。
ファーストフィルとは初めてスコッチウイスキーの熟成に使われる樽のことを指します。
2つ目は、ボウモア蒸溜所のNo.1 Vaultsで熟成している点です。
樽は呼吸します。
海抜0mで熟成するため、潮の気配をしっかりと吸ったウイスキーが出来上がるのです。
「ボウモア 12年」をよりライトにした味わいで、フレッシュな香りの中に潮の気配を感じます。
ボウモアNO.1のおいしい飲み方
ハイボールがおすすめです。
かなり飲みやすく、バーボン樽らしいバニラやはちみつの印象を強く感じます。
昼間から、外で太陽を浴びながら飲むと気分爽快です。
正露丸のにおい?「ボウモア」がまずいといわれる理由とは

歴史ある蒸留所で伝統的な手法で造られる「ボウモア」ですが、味の評価を聞くと「おいしい」という人と「まずい」という人とに見事に分かれます。
ではなぜ、まずいといわれてしまうのでしょうか。
原因は香りにありました。
アイラモルト最大の特徴
アイラモルト最大の特徴であるピート香が、「正露丸」「煙たい」「歯医者さんみたい」などと表現される香りの正体です。
フロアモルティングの章で説明した通り、大麦の発芽を止めるためにピートを焚きます。
ピートとは植物が堆積し炭化した泥状の燃料のことですが、アイラ島のピートには海藻が多く含まれているため、他の地域のピートと比べて磯の香りがします。
この磯の香りが、薬品のヨードとそっくり。
以上のことから、「ボウモア」の香りを嗅ぐと正露丸や歯医者を連想させ、受け付けない人が一定数発生し、まずいといわれるのです。
Twitterの口コミ
実際に「ボウモア」を飲んだ方のクチコミをTwitterで見てみましょう。
強烈で個性的な香りが、まずいという感想につながっていることがわかります。
「ボウモア」まずい問題の結論
「ボウモア」をまずいと感じる傾向がある人は以下の通りです。
- ウイスキー初心者の人
- 香りやクセが強い食べ物が苦手な人
しかし、ブルーチーズやパクチーなど、「香りが強くてうまい食べ物」が大好き、という方も一定数います。
同じように、アイラモルトのピート香が大好きなピートフリークも世界中に存在するほどです。
あなたもピート香の良さを感じるようになれば、どんどんピート香の魅力にはまっていくでしょう。
まずはサイズが選べる「ボウモア12年」から試してみて、少しずつピートに慣れていくのはいかがでしょうか。


まとめ
アイラモルトの入門としてよく取り上げられる「ボウモア」。
ボウモア蒸溜所はアイラ島最古の蒸留所で、現在でも伝統的な製法を守りながら、海と共にウイスキーを造り続けています。
「ボウモア」を知れば知るほど「飲んでみたい」と感じたのではないでしょうか。
また、人を選ぶ香りは、海藻を含んだピートが原因だと解説しました。
まずいと評価されることもありますが、「ボウモア」はたくさんの魅力が詰まったウイスキーです。
少量サイズでも売っていますので、まずいという噂に怯むことなく、ぜひチャレンジしてみてください。