雄鹿のラベルが印象的なシングルモルト「グレンフィディック」。
スコットランドのスペイサイド地域で造られるこのウイスキーは、シングルモルトの中で世界最大級の売上を誇ります。
リーズナブルな値段で手に入れやすく人気がある一方、「まずい」という噂も。
噂の理由や、銘柄の特徴、味わいについてみてみましょう。
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「グレンフィディック」とは
スコットランドのシングルモルト「グレンフィディック」。
多くのウイスキーを生み出しているスペイサイド地域でも、世界中で多くの人に愛されるこの銘柄について解説していきます。
「グレンフィディック」の発祥の地
グレンフィディック蒸留所は、1886年にスコットランドのスペイサイド地域に建てられました。
同蒸留所があるダフタウン地区は、ウイスキー造りが盛んなスペイサイドの中でも特に蒸留所が多い地域です。
グレンフィディック蒸留所の近くにはバルヴェニー蒸留所やキニンヴィ蒸留所もあり、全て創業者のウィリアム・グラントによって建てられました。
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「グレンフィディック」名前の由来
「グレンフィディック」はゲール語で「鹿の谷」を意味します。
その名の通り、ラベルにあしらわれた雄鹿のマークが特徴です。
創業者のウィリアム・グラントは、「鹿の谷で最高の一杯をつくる」という夢を掲げウイスキー造りに取り組みました。
その創業者精神は、現在まで受け継がれています。
「グレンフィディック」の味の特徴
1963年にシングルモルトとして売り出され、たちまち人気となった「グレンフィディック」。
人気の理由は、飲みやすさにあります。
軟らかいロビーデューの湧き水を使用することで生まれるスッキリとした味わい、特徴的なフルーティーさは、ウイスキー初心者の方にもおすすめです。
発売当時は革新的な味わいで注目を集めましたが、今では飲みやすさが人気となり、世界最大級の売上を誇っています。
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「グレンフィディック」の歴史
現在では数少ない家族経営の蒸留所で造られる「グレンフィディック」。
家族総出で作り上げてきた歴史を見ていきましょう。
禁酒法時代を生き抜いた創業者たち
創業者であるウィリアム・グラントは、ウイスキー造りの夢をかなえるため、1886年に蒸留所の建設を開始します。
自身の9人の子どもたちと、1人の石工職人の助けを借り、石を1つ1つ積み上げて作ったそうです。
家族総出で作り上げた蒸留所は、1887年にウイスキーの蒸留を始めます。
創業当初は、ブレンデッド用のモルトウイスキーを製造していました。
1920年から1933年まで施行されたアメリカの禁酒法により、スコッチの売上も大打撃を受けます。
スコットランドでは次々と蒸留所が閉鎖しましたが、グレンフィディック蒸留所は禁酒法時代でも操業を続け生き残りました。
厳しい時代を乗り越えたグレンフィディック蒸留所は、1950年代に入ると、さらなる上質なウイスキーの製造を目指します。
蒸留器を作る銅器職人や、樽の製造・修理を行うクーパーの常駐など、専門のスキルをもった職人を置く体制を作りました。
シングルモルトの発売開始から現在
1963年、ウィリアムのひ孫サンディ・グラント・ゴードンは、シングルモルト「グレンフィディック」の販売を開始します。
それまでブレンデッドが主流だったスコッチですが、爽やかな味わいの「グレンフィディック」はたちまち人気になります。
その後、創業100周年の記念ボトルや、革新的なシングルモルトを造るための「実験」をイメージして作られた限定ボトル、30年を超える長熟ボトルなどを発売。
特に50年もののウイスキー、64年もののウイスキーは、禁酒法時代を生き抜いた長い歴史を持つ蒸留所ならではの銘柄です。
「グレンフィディック」の製法
爽やかで軽い飲み口の「グレンフィディック」。
創業者一族のこだわりが詰まったその製法を解説します。
スコットランド最多の蒸留機
世界屈指の売上を誇るシングルモルトらしく、グレンフィディック蒸留所は充実した設備を備えています。
24時間フル稼働のマッシュタン(糖化槽)、24基のウォッシュバック(発酵槽)でもろみを造ります。
蒸留には、スコットランドで最多となる合計28基の蒸留機を使用。
創業当時と変わらない形状のポットスチルを使い、伝統を守っています。
各分野のスペシャリストによる品質管理
グレンフィディック蒸留所の特徴は、各分野の専門家による徹底した品質管理です。
ポットスチルは銅製で変形しやすく、まめな手入れが重要です。
1957年から銅器職人を常駐させる体制をとり、28基のポットスチルの管理を行っています。
また、現在では珍しく蒸留所内にクーパレッジ(樽の製造、修理を行う作業場)を設置しているのも特徴です。
クーパー(樽職人)による樽の製造、修理、熱処理(チャー)は、ウイスキーの品質を左右する重要な作業ですが、各分野に専門家を置くことで高い品質を維持し続けているのです。
「グレンフィディック」のラインナップ
長い歴史を誇る「グレンフィディック」は、長期熟成の限定銘柄から、実験的な試みを行ったものまで、幅広いラインナップをそろえています。
各銘柄の特徴や味わいを解説します。
グレンフィディック12年スペシャルリザーブ
アルコール度数:40%
容量:700mL
「グレンフィディック」のスタンダードボトルで、世界屈指の売上を誇るシングルモルトです。
アメリカンオーク樽とヨーロピアンシェリー樽で最低12年間熟成された原酒をヴァッティングしています。
創業当時からの強いこだわりである、なめらかな飲み口と洋ナシのようなフルーティーな香りが特徴の銘柄です。
2014年にインターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)で金賞、インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション(IWSC)で金賞を受賞し、世界的にも評価されています。
グレンフィディック15年 ソレラリザーブ
アルコール度数:40%
容量:700mL
シェリー酒の樽熟成方法で、樽ごとの味わいを均一化させるために取られていた「ソレラシステム」を、シングルモルトウイスキーにも応用させた意欲作です。
バーボン樽、ホワイトオーク新樽、シェリー樽の3種の樽で最低15年間熟成したモルトウイスキーの原酒を、ソレラバット(大桶)で約6カ月間後熟しています。
ハチミツやレーズンの甘い香りとなめらかな口当たり、ほのかにスパイシーな味わいが特徴です。
グレンフィディック18年 スモールバッチリザーブ
アルコール度数:40%
容量:700mL
スパニッシュオロロソシェリー樽とアメリカンオーク樽で最低18年熟成された原酒をヴァッティングし、その後さらに3カ月以上の後熟を行って造られるのが、「グレンフィディック18年 スモールバッチリザーブ」です。
少ないロット(スモールバッチ)の生産により、品質が厳格に管理されています。
熟したフルーツとシナモンの香り、ドライフルーツとナッツ、樽の香りを感じられる1本です。
グレンフィディック 21年 グランレゼルヴァ
アルコール度数:40%
容量:700mL
最低21年間、長熟された「グレンフィディック」です。
ヨーロピアンシェリー樽とアメリカンオーク樽の原酒をヴァッティングし、カリビアンラム樽で4カ月の後熟を経て仕上げられています。
バニラ、バナナ、いちじくのような甘い香り、ジンジャーとほのかなスモーキーさを感じる味わいが特徴です。
グレンフィディック IPA エクスペリメント
アルコール度数:43%
容量:700mL
実験的な手法で造られる「エクスペリメンタル シリーズ」の1つで、ビールを寝かせた樽を使って熟成させた銘柄です。
「グレンフィディック」の熟成に使用したアメリカンホワイトオーク樽で、IPA(インディア・ペールエール)を1カ月熟成させ、その樽で「グレンフィディック」を3カ月後熟させています。
フレッシュな青リンゴとIPA由来のホップの香り、シトラス、バニラの味わいを感じます。
グレンフィディック プロジェクト XX
アルコール度数:47%
容量:700mL
「エクスペリメンタル シリーズ」の銘柄の1つ。
世界中から集められた20名のモルトマスターが、「グレンフィディック」の熟成庫から厳選した原酒をヴァッティングして造られました。
リンゴ、洋ナシとバニラを感じる香り、ローストしたアーモンドとシナモンのような味わい、なめらかな口当たりの、バランスの取れた1本です。
「グレンフィディック」の飲み方
クセのある銘柄も多いシングルモルトの中で、比較的飲みやすい「グレンフィディック」。こだわりの味わいを楽しめるおすすめの飲み方をご紹介します。
まずはストレートで
どんな飲み方でもおいしく飲める万能なウイスキーですが、まずはストレートで味わってみてください。
少しずつ口に含みながらゆっくり味わえば、フルーティーな香りや甘みをダイレクトに楽しめます。
ストレートで味わった後は、ロックやトワイスアップもぜひ試してみてください。
初心者にはハイボールもおすすめ
ウイスキー初心者の方や、アルコールに強くない方には、ハイボールもおすすめです。
ソーダで割ることで香りが開き、ライトな味わいで飲みやすくなります。
レモンやライムを数滴しぼっても、おいしいですよ。
「グレンフィディック」はうまい?まずい?
飲みやすいという評判がある一方、「グレンフィディック」を調べると「うまい」「まずい」というワードが出てくることがあります。
なぜ、意見が2つに割れているのか、Twitterの口コミを集めて検証してみました。
「グレンフィディック」をうまいとする意見
「グレンフィディック」がうまいと感じる意見を見ると、やはり飲みやすさに理由があるようです。
スモーキーさがなく、フルーティーな味わいは、クセのあるウイスキーが苦手な方にも好まれています。
「グレンフィディック」をまずいとする意見
うまいという評価の一方で、「まずい」とする意見もありました。
12年は好きだけど15年は苦手、ハイボールはうまいけどストレートはまずい、など、銘柄や飲み方によっても印象が変わるようです。
独特の甘みが苦手という感想もあったので、好みにより味の評価が分かれそうですね。
最後に
禁酒法時代を生き抜いた創業者一族のウイスキーに対するこだわりや、味わいを感じる「グレンフィディック」。
その歴史と、多くの人が親しめる味で、世界で大きなシェアを占めるシングルモルトです。
好みにより評価が割れることもありますが、やはり人気の銘柄は1度は飲んでみたいもの。
値段も比較的手頃なので、気軽に試してみてはいかがでしょうか。