ウイスキー愛好家の間で話題の「グランツ」は、“3つのM”の協力により生まれる味わいが特徴です。
3つのMとは、蒸留技師(The Maker)、樽職人(The Muscle)、マスターブレンダー(The Master)の頭文字を取ったもの。
本記事では「グランツ」の特徴や歴史、主なラインナップ、世間の評価を紹介します。
「グランツ」が気になっている方はこの機会にぜひご一読ください。
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ウイスキー「グランツ」とは?特徴とともに解説
「グランツ」は世界で毎秒55杯消費されるといわれており、販売量は2023年11月時点で世界第3位という人気のブレンデッドスコッチです。
キーモルトは「グレンフィディック」で伝統を守りながら製造されており、「私たちはこれまでと同じ方法でウイスキーを造り続けています」という言葉が、品質への誇りとこだわりを物語っています。
現在、日本では三陽物産株式会社が輸入元となっています。
「グランツ」を製造するウィリアム・グラント&サンズ社
「グランツ」を製造するウィリアム・グラント&サンズ社は、スコットランドの伝統ある家族経営のウイスキーメーカーで、現在は6代目にあたります。
この蒸留所は、キーモルトである「グレンフィディック」のほかにも、世界的に評価される以下のウイスキーブランドを所有しています。
ウィリアム・グラント&サンズ社の歴史と「グランツ」誕生までの歩み
グラント家はスコットランド最古の家族経営のブレンデッドウイスキーメーカーです。
グラント家は一致団結して苦難を共に乗り越えながらも、外部からの少しの助けを借りつつ、現在にその名を残しています。
この団結と外部の助けにより「グランツ」が誕生したといってもいいでしょう。
創始者ウィリアム・グラントと一族により創業
ウィリアム・グラント&サンズ社の創始者であるウィリアム・グラントは、貧しい仕立て屋の息子として生まれました。
ウィリアムはモートラック蒸留所で20年間勤務した後、1887年に、7人の息子と2人の娘の協力を得てスコットランドにグレンフィディック蒸留所を開設しました。
ウィリアムは一族をあげて経営を続けただけでなく、家族に役割を与えました。
たとえばジョージ・グラントは麦芽製造を、チャーリー・グラントは樽作りを、アレック・グラントは蒸留作業を担当し、末娘は7歳で兄弟たちの昼食を準備していたそうです。
またウィリアムの義理の息子であるチャールズ・ゴードンは、同社最初のセールスマンとなりました。
一族総出での努力が、ウィリアム・グラント&サンズ社の基盤を築き上げました。
「グランツ」の前身「グランツ・スタンド・ファスト」の誕生
グレンフィディック蒸留所を創業して5年後、ウィリアム・グラントは隣接するバルヴェニー城を買収し、バルヴェニー蒸留所を開設しました。
しかし1898年、最大顧客であったブレンド会社のパティソンズ社が倒産したことで、ウィリアム・グラントは新たな方向性を模索し、ブレンドウイスキー業界への参入を決意します。
ここから誕生したのが彼自身がブレンディングを手掛けた「グランツ・スタンド・ファスト」です。
後に「グランツ」として知られるウイスキーへと発展し、グラント家の事業をさらなる高みへと導くことになりました。
現在も家族経営の伝統を引き継ぐ
1887年の創業以降、グラント家は6世代にわたり伝統を守り続けています。
ウイスキーの製造過程において、熟練の樽職人や蒸留・熟成の専門家が、創業者ウィリアム・グラントのオリジナルレシピを忠実に守り続けています。
ウイスキー「グランツ」注目すべきポイント3つ
ウイスキー「グランツ」を手に取る前に、注目してほしいポイントが3つあります。
- “3M”が協業する唯一のスコッチ製造会社である
- 蒸留過程でも3という数字を意識している
- 三面ボトルデザインを採用している
「グランツ」を語るうえで「3」という数字は欠かせません。詳しく見てみましょう。
3つのMが協力して働く
大麦から「グランツ」となってグラスに注がれるまでに、おおよそ198人の手が加わっているそうですが、製造においては“3つのM”が協働することで成り立っています。
- 蒸留技師(The Maker)
- 樽職人(The Muscle)
- マスターブレンダー(The Master)
蒸留・熟成過程でも3を重視
「グランツ」は蒸留の過程においても「3」を重視しています。
スコットランドの水・空気・大麦の3つの素材はいずれも、ウイスキーの品質に大きく影響する大切な要素です。
また、「グランツ」は3つの異なる種類の木材を用いて熟成されます。
スタンダートボトルの「グランツ トリプルウッド」は3種の木樽を使用しており、それぞれの木材から引き出された独自の味わいは、私たちに複雑で豊かな味わいを提供してくれます。
熟成を見守る犬のロッコ
「グランツ」の熟成過程を見守るのは、特別な訓練を受けたコッカースパニエルのロッコです。
ロッコは樽貯蔵庫で品質を嗅ぎ分け、蒸留所全体が計画通りに進んでいるかを確認する重要な役割を担っています。
人間の40倍も強い嗅覚を持つロッコは、ウイスキーが熟成する過程で異なる香りを嗅ぎ分けるそうです。
ウィリアムの信念を具現化した三面ボトル
「グランツ」のボトルは、ウィリアム・グラントのウイスキー造りへの信念を具現化したデザインです。
象徴的な三面ボトルは1957年に考案されています。
このボトルデザインはウイスキー製造に不可欠な以下の3つの要素を表現しています。
- 火(石炭の直火焚き/ウイスキー製造の伝統的な方法)
- 水(良質な軟水/水がもたらす独特の風味)
- 土(大麦とピートという大地の恵み/原材料の質の高さと地元への敬意)
また、「グランツ」のラベルには、グラント家のモットー「スタンド・ファスト」という言葉が記載されています。
この言葉は「かたくなに伝統を守る、地歩を固める」という意味を持ち、グラント家が長年にわたって守り続けてきたウイスキー造りへの姿勢を表しているそうです。
ラベルにこの言葉を刻むことで、グラント家はウイスキー造りにおける自らの哲学と、伝統に対する深い敬意を示しているのでしょう。
「グランツ」の主なラインナップ
創業以来変わらぬ方法でウイスキーを製造し続けている「グランツ」。この伝統こそ、一貫して高品質のウイスキーを私たちに提供することを可能にしています。
ここでは「グランツ」の主なラインナップを確認しましょう。
グランツ トリプルウッド
- アルコール度数:40%
- 容量:700mL
- 受賞歴:2020 ISC 金賞
「グランツ トリプルウッド」は3種類の異なる樽で熟成されている点が特徴です。
まずヴァージンオーク樽での熟成がスパイシーなたくましさを加え、次にアメリカンオーク樽でかすかなバニラの口当たりのよさを付与します。
最後にリフィルバーボン樽で濃厚でスムースなブラウンシュガーの味わいを生み出します。
香りは熟した梨やサマーフルーツが感じられ、モルティさとバニラの甘い味わいが特徴です。
フィニッシュでは、かすかなスモークと甘い風味が感じられます。
飲み方はストレートのほか、ソーダ割りやロックなど、さまざまな飲み方で楽しめます。
公式サイトのレシピでは、コーラとのカクテルやロックにオレンジピールを加える提案もありますよ。
また加水して時間を置くとフルーティーな味わいが増すため、果物の味わいが好きな方はぜひ試してみてください。
グランツ トリプルウッド 8
- アルコール度数:40%
- 容量:700mL
「グランツ トリプルウッド 8」は、3種類の樽で最低8年熟成された原酒をブレンドして作られたウイスキーです。
複雑かつ豊かな風味は、長い熟成期間がもたらす独特の味わいを楽しめるでしょう。
フレッシュなフルーツ、ウッディなスパイスのかすかな香りが特徴です。
味わいは甘いバニラオークとピリッとした果実味のバランスで、大胆な印象を残します。
フィニッシュには、かすかなスモーク感を伴った甘みが長く続き、その後味は深く満足感があるでしょう。
どんな飲み方でも楽しめますが、まずはストレートで味わいの奥深さを感じてみてはいかがでしょうか。
グランツ トリプルウッド スモーキー
- アルコール度数:40%
- 容量:700mL
「グランツ トリプルウッド スモーキー」は「グランツ」のオリジナルブレンドにピーテッドウイスキーを追加した独特な風味のユニークなウイスキーです。
このブレンドにより、ピートの際立った香りとスムースでフルーティーな味わいが生まれます。
香りは、はっきりとした薫香とほのかなフルーツ香が広がり、溶け込んだオーツとローストアーモンドが感じられ、味わいの主体はピーティフレーバー、そこに塩味、フルーツの甘み、かすかなシトラスが加わります。
フィニッシュはビロードのような滑らかさで、かすかなタンニンがスモーキーさと調和。
「グランツ トリプルウッド スモーキー」は、伝統的な「グランツ」の伝統的製法と現代のブレンド技術が融合し、独特の風味と深みをもたらしています。
まずはぜひ、ストレートで味わってみてください。
グランツ 18年
- アルコール度数: 40%
- 容量:700mL
- 代表的な受賞歴
- 2013 IWSC 最高賞(トロフィー)
- 2013 ISC 金賞
- 2014 IWSC 金賞
- 2014&2015 スコッチウイスキーマスターズ 金賞
「グランツ 18年」は、18年以上熟成されたシングルモルトウイスキーとシングルグレーンウイスキーを厳選してブレンドした、濃厚でフルボディーのウイスキーです。
独特な仕上げとしてポートワイン樽で6カ月間追加熟成させることで、深い味わいと複雑な香りを生み出します。
ハチミツとスパイス、リッチで複雑な香りに加え、柔らかなナッツの香りと素晴らしいフルーティーさが感じられます。
テイストは、滑らかな口当たりの中にフレーバーパンチが詰まったフルボディーのウイスキーで、フルーツケーキ、マヌカハニーのようなダークハニー、そしてリッチなポートが特徴的です。
フィニッシュでは、長く続くエレガントな余韻を楽しめます。
時間をかけた熟成と独特なブレンドがもたらす複雑さと深みを、ぜひストレートから味わってみてください。
「グランツ」はうまい?まずい?世間の評価をチェック
「グランツ」に関する世間の評価は「X(旧Twitter)」などのソーシャルメディアを通じて、幅広い意見を確認できます。
個々の味覚やウイスキーに対する好みに基づいた多様な評価が見られますので、ここではその一部をご紹介します。
「うまい」という意見
「グランツ」はうまい、とする意見から見てみましょう。
多くのXユーザーが「クセがなく、スモーキーでピートの甘さも感じられるため飲みやすい」と評価しています。
また、価格面での満足度が高く「1,000円台でこの味わいは素晴らしい」などの声も見られます。
さらにハイボールとしての楽しみ方も人気があり、飲みやすさとおいしさが声として多くありました。
「X」ではストレートやロックだけでなく、ハイボールとしても楽しんでいる様子が多くのユーザーから伝えられており、その味わい方の多様性が「グランツ」の魅力のひとつであることがわかります。
「まずい」という意見
次に「グランツ」がまずいとする意見について見てみましょう。
好意的な意見が多く見られる「グランツ」ですが、口に合わないという意見も少数ですが存在しました。
「グランツ」が苦手という人の中には、特にグレーンウイスキーの甘さが目立つことを理由に挙げていました。
また「グレーンの甘さが苦手」という意見だけでなく「香りが好みでない」という感想もあります。
例えば、「グランツの香りが苦手な部類だが、ハイボールとしてはスッキリおいしく飲める」という評価や「青リンゴ系の香りがするウイスキーは苦手」という特定の風味については、個人的な好みが反映されていることがわかります。
最後に
本記事ではウイスキー「グランツ」の歴史や製造過程、そして主なラインナップについて詳しくご紹介しました。
「グランツ」はウィリアム・グラント&サンズ社の伝統ある熟成方法を基礎として、伝統を守る三面ボトルやロゴシールなどで、現代に自社の大切にしているウイスキーの思いと味わいを伝えています。
まだ「グランツ」を飲まれていない方は、この記事を参考に、ぜひ一度チャレンジしてはいかがでしょうか。