アイリッシュ

復興を遂げたアイリッシュウイスキーの秘密に迫る

ウイスキーの名産地で、世界5大ウイスキーのひとつとして数えられるアイルランド。
一時、衰退していたアイリッシュウイスキーが再び人気になったことから、気になっているウイスキー好きもいるでしょう。

本記事では、アイリッシュウイスキーが再燃した理由や、ユニークな特徴のあるアイルランドの蒸留所についてご紹介します。

再び注目を集めているアイリッシュウイスキーについて、一緒に知っていきましょう。

この記事の監修者

大中 ヨシ

大中 ヨシ

「都内勤務のバーテンダー兼ウイスキー専門のwebライター。ウイスキープロフェッショナル資格所有。休日には蒸留所や温泉を巡っています。普段はジャパニーズやスコッチを愛飲。推し蒸留所はキルホーマンです。」

アイリッシュウイスキーとは

ウイスキーをグラスに注ぐ画像

アイリッシュウイスキーは、その名の通りアイルランドで製造されたウイスキーのことです。

アイリッシュウイスキー独自の製法を守りながらも、新しい味わいの銘柄を生み出す蒸留所が出てくるなど、近年人気を盛り返しています。

アイリッシュウイスキーの定義と味わいや香りの特徴

アイルランドでは、アイリッシュウイスキーを下記のように定義しています。

  1. 穀物を原料とする
  2. アイルランド、北アイルランドで糖化、発酵、蒸留、熟成をする
  3. 容量700L以下の木製樽で3年以上熟成する
  4. アルコール度数94.8%以下で蒸留
  5. 瓶詰時のアルコール度数は40%以上
  6. 酵母によって発酵を行う
  7. ボトリングの際には、水と着色のためのプレーンカラメル以外は加えてはならない

アイリッシュウイスキーは、シャープですっきりした味わいが特徴です。
雑味が少なく飲みやすいため、ウイスキー初心者でもチャレンジしやすい銘柄が多くあります。

その理由は、蒸留の回数の多さとノンピートの銘柄の多さ。

蒸留を2〜3回行う蒸留所が多く、軽くて雑味のない、クリーンな味わいに仕上がっています。
さらにピート(泥炭)を使わないことで、スモーキーな香りよりも穀物由来の香りを感じられる点もアイリッシュウイスキーの特徴です。

アイリッシュウイスキーの分類

アイリッシュウイスキーは、製法や原料により、大きく4つに分類されます。

画像:監修者の指導をもとに筆者作成

モルトウイスキーは大麦麦芽を100%使用したウイスキーのことで、単式蒸留器で2〜3回蒸留を行っています。

このうち、単一の蒸留所で造られた原酒のみを使ったものが、シングルモルトウイスキーです。

ブレンデッドウイスキーは、モルトウイスキーやグレーンウイスキー、ポットスチルウイスキーなど、複数の原酒をブレンドしたウイスキーです。
さまざまな特徴をもった原酒を混ぜ合わせることで、クセがなく飲みやすいのが特徴です。

グレーンウイスキーはトウモロコシやライ⻨、⼩⻨などの穀物を主原料に、大麦麦芽を加えて造ったウイスキーを指します。
連続式蒸溜器で精製しているため、クリアな味わいが特徴です。

さらに、単一の蒸留所で造られたものを、シングルグレーンウイスキーと呼びます。

最後のポットスチルウイスキーは、アイリッシュウイスキー独自の分類です。
大麦麦芽の他に、未発芽の大麦やオート麦などを混ぜて造られます。
単式蒸留機(ポットスチル)を使い、通常よりも多い3回の蒸留を行うのも特徴です。

ちなみに、ポットスチルウイスキーは、19世紀初頭に導入された「麦芽税」がきっかけで誕生しました。
高い「麦芽税」を逃れるために、麦芽の代わりに未発芽の大麦や小麦、ライ麦、オート麦を使ってウイスキーを製造することで、
雑味をなくすために3回蒸留を行う製造方法が確立されたという背景があります。

「whiskey」と「whisky」の違いとは

ウイスキーの英語表記には、2種類あるのをご存じでしょうか。

日本でよく見るのは「whisky」ですが、アイリッシュウイスキーは「e」が入った「whiskey」と書かれます。

「whiskey」と「whisky」という2つの書き方は産地によって使い分けられており、スコッチウイスキーなどスコットランドの流れをくむものは「whisky」、アイルランドの流れをくむものは「whiskey」と表記されます。

スコットランドとアイルランドは、どちらも自らがウイスキー発祥の地だと主張しています。
諸説ありますが、表記の違いはこのライバル関係からきているのではないかといわれているようです。
スコッチウイスキーと区別をするために、アイリッシュウイスキーは「whiskey」と表記するようになったのだとか。

ちなみに、日本のウイスキーはスコットランドの影響を受けているため「whisky」と書かれることが多いようです。

一方、アメリカのウイスキーは製造者にアイルランド出身者が多かったため、「whiskey」と表記されています。

アイリッシュウイスキーの歴史

現在は人気のアイリッシュウイスキーですが、長い歴史の中で一度表舞台から消えてしまいました。

衰退していたアイリッシュウイスキーがどのように復活を遂げたのか、その歴史を見ていきましょう。

表舞台から消えたアイリッシュウイスキー

アイリッシュウイスキーの発祥は修道院で製造された薬酒といわれており、13〜15世紀に民間に広まったとされています。

19世紀には世界のウイスキーの4割近くを占める生産量を誇っていました。

世界中に広まっていたアイリッシュウイスキーが衰退してしまった理由は、主に2つあります。

  • スコッチのブレンデッドウイスキーの誕生
  • 1900年代に発生した世界情勢の影響

詳しく見てみましょう。

理由1.スコッチのブレンデッドウイスキーの誕生

まずは、19世紀後半にスコッチのブレンデッドウイスキーが登場したことが挙げられます。

スコットランドでは、モルト原酒とグレーン原酒を使ったブレンデッドウイスキーが大量生産されるようになりました。

ブレンデッドウイスキーの分野で、アイリッシュウイスキーは乗り遅れてしまいます。

理由2.1900年代の世界情勢の影響を受けた

2つ目は、1900年代初頭の歴史的背景によるさまざまな影響を受けたことです。

具体的には、1919年に始まったアイルランドの独立戦争が原因として挙げられます。

1921年にアイルランドの一部の州が、アイルランド自由国としてイギリスから独立します。
イギリスは報復措置として、アイリッシュウイスキーを自国の市場から締め出してしまいました。

また、当時のアイリッシュウイスキーのメインの消費国は、アイルランドからの移民が多いアメリカでした。
しかし、アメリカで1920年に禁酒法が施行され、アメリカでの販売も難しくなります。

さらに、第二次世界大戦が勃発。
ウイスキーの生産が減少する中、輸出に力を入れたスコッチウイスキーとは異なり、アイリッシュウイスキーは国内での販売を優先し、輸出を禁止。
世界のウイスキー市場から消えてしまいます。

以上のような条件が重なり、アイルランドの蒸留所は2カ所にまで減少してしまったのです。

アイリッシュウイスキーの復活

アイリッシュウイスキーの復活の立役者になったのは、ジョン・ティーリング氏です。

ハーバード・ビジネス・スクールで、ウイスキーについて研究したジョン・ティーリング氏は、アイリッシュウイスキーの復興を目指します。

1987年に、北アイルランドとの国境近くにあった工業用アルコール工場を買収。
アイリッシュウイスキーの蒸留所に転換し、クーリー蒸溜所を設立しました。

ジョン・ティーリング氏は、アイリッシュウイスキーにしかないポットスチルウイスキーに目をつけます。
モルト、グレーン、ポットスチルの3種類の原酒を組み合わせ、スコッチに遅れをとっていたブレンデッドウイスキーの製造を開始しました。

その後、アイリッシュウイスキーを製造する蒸留所は増え続け、世界的なブームにも乗り人気を集めます。

多彩な銘柄の製造と新進気鋭の蒸留所の誕生により、アイリッシュウイスキーは復活を果たしたのです。

アイリッシュウイスキー蒸留所9選【代表銘柄も紹介】

グラスに入ったウイスキーに氷を落としている画像

一時は蒸留所の数が2つまでに減ってしまったアイルランド。
人気の高まりとともに、再び蒸留所の数が増えています。

  1. 新ミドルトン蒸留所
  2. ジ・オールド・ブッシュミルズ蒸留所
  3. クーリー蒸溜所
  4. キルベガン蒸留所
  5. ティーリング蒸留所
  6. クロナキルティ蒸留所
  7. スリーブ・リーグ蒸留所
  8. ロー&コー蒸留所
  9. ロイヤルオーク蒸留所

歴史ある銘柄を復活させた蒸留所や斬新な銘柄を生み出す蒸留所など、魅力ある9カ所をご紹介します。

新ミドルトン蒸留所

新ミドルトン蒸留所は、アイルランド南部の町コークにある蒸留所です。

1825年にジェームス・マーフィー兄弟が紡績工場だった建物を買取り、蒸留所に改装したのが「旧ミドルトン蒸留所」です。
アイリッシュウイスキーが低迷し始めた頃、コーク社は1966年にジェームソン社、パワーズ社と合併。
アイリッシュ・ディスティラーズ社が誕生します。

そんな広大な敷地と、豊富で良質の水に恵まれているミドルトンに新しく建てられたのが、新ミドルトン蒸留所です。
モルト原酒とグレーン原酒など、多様な原酒を組み合わせたブレンデッドウイスキーを中心に生産しています。

代表的な銘柄は、ボウ・ストリート蒸留所から引き継いだ「ジェムソン」と「レッドブレスト」です。
ポットスチルウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドした「ジェムソン」は、アイリッシュウイスキーらしくスッキリとした味わいがします。

一方、ポットスチルウイスキー100%の「レッドブレスト」は、濃厚なバニラの甘みとスパイシーさが特徴の銘柄です。

また、1959年に閉鎖したタラモア蒸留所から、「タラモアデュー」も引き継いで生産をしていました。
「タラモアデュー」は、アイリッシュウイスキーの中でも特に軽くまろやかな味わいが特徴です。
現在は、復活したタラモア蒸留所で生産されています。

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ジ・オールド・ブッシュミルズ蒸留所

ジ・オールド・ブッシュミルズ蒸留所は、アイルランドの北部イギリス領北アイルランド・アントリム州にあります。
アイルランドの人々から愛されている蒸溜所で、ジ・オールド・ブッシュミルズ蒸留所を描いた紙幣があるほどです。

ブッシュミルズ」という名前は「林の中の水車小屋」という意味で、北アイルランドのアントリム州にある村の名前に由来しています。
1885年に一度火災で焼失しており、再建にあたってスコットランドの設計技師を招いたことから、アイルランドでは唯一のスコットランド式の外観をもつ蒸留所となりました。

ウイスキー「ブッシュミルズ(通称ホワイトブッシュ)」は伝統的な3回の蒸留で製造されたモルト原酒、軽やかなグレーン原酒のブレンデッドウイスキー。
スムースな口当たりと、フルーティな味わいが特徴です。
「ブッシュミルズ」については、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。

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クーリー蒸溜所

前述でご紹介したアイリッシュウイスキー復活の立役者、ジョン・ティーリング氏が設立した蒸留所です。
アイルランドの首都ダブリンから北へ車で1時間半ほどの街ダンドーク近郊に位置します。

1989年からウイスキー製造を始めた新しい蒸留所ですが、すでに世界から注目を浴びています。

ジョン・ティーリング氏は、アイリッシュウイスキーがスコッチに遅れをとった理由がブレンデッドウイスキーにあると考えていました。
そんな彼は、クーリー蒸溜所でモルト原酒、ピート原酒を使ったブレンデッドウイスキーを製造し、成功を納めました。
現在は日本のサントリー傘下になっています。

クーリー蒸溜所の代表的な銘柄は「カネマラ」。
一般的なアイリッシュウイスキーと異なり、ピート(泥炭)を焚いた麦芽を使用し、2回の蒸留で仕上げています。
独自の製法により、スモーキーな味わいを楽しめる銘柄になっています。

クーリー蒸溜所カネマラについては、こちらの関連記事もご覧ください。

キルベガン蒸留所

クーリー蒸溜所と関連の深いキルベガン蒸留所。
1953年に操業を停止していたロックス蒸留所を、ジョン・ティーリング氏が買収したのが始まりです。
ウイスキー博物館と貯蔵庫として再建され、クーリー蒸溜所で製造されたウイスキーが保管されました。

2007年には小規模ながらウイスキーの製造も再開し、「キルベガン」を復活させます。
「キルベガン」はフレッシュな柑橘系の味わいとハチミツの甘み、おだやかなモルトの香りが特徴で、ウイスキー初心者にも楽しめる銘柄です。

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ティーリング蒸留所

アイルランドの首都、ダブリンの観光地としても有名な「聖パトリック大聖堂」の近くにある蒸留所。
ティーリング蒸留所の創業者はジャック・ティーリング氏とスティーブン・ティーリング氏で、クーリー蒸溜所の創設者、ジョン・ティーリング氏の息子です。
経営に行き詰まっていたクーリー蒸溜所とキルベガン蒸留所を売却した後、しばらくクーリー蒸溜所で製造した原酒をもとにブレンデッドウイスキーを販売していましたが、原酒の不足により自らの蒸留所の設立を決意。

ポットスチルウイスキーとモルトウイスキーの2種類を使ったブレンデッドウイスキーや、シングルモルトを製造しています。
代表銘柄は「アイリッシュウイスキー ティーリング シングルモルト」です。

クロナキルティ蒸留所

2018年に、アイルランド・コーク州南部の町クロナキルティに建てられた新しい蒸留所。
8世代に渡って農場を営んでいたスカリー家によって設立され、自社の大麦を使用したウイスキーを製造しています。

単式蒸留器を使ったシングルポットスチルウイスキーは、「ワールド・ウイスキー・アワード2020」でベスト・ニューメイクウイスキーを受賞しています。
ポート樽やボルドー樽で熟成させた代表銘柄「クロナキルティ」は、フルーツの甘みやスパイシーさが特徴のウイスキーです。

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スリーブ・リーグ蒸留所

アイルランドの北西、大西洋に面したヨーロッパで最も高い断崖絶壁に、2017年にオープンしたのがスリーブ・リーグ蒸留所です。

代表的な銘柄は、2021年サンフランシスコでワールド・ウイスキー・アワードを獲得した「ザ レジェンダリー・シルキー」。
2回蒸留と3回蒸留のモルト原酒、グレーン原酒を組み合わせたブレンデッドウイスキーで、ピート麦芽の原酒も2%使用しているのが特徴です。
焼きリンゴやレーズンのような甘みと、スモーキーな香りを楽しめます。

ロー&コー蒸留所

アイルランドの首都、ダブリンにある蒸留所。
アメリカの禁酒法などで打撃を受け閉鎖されていたトーマスストリート蒸留所の経営者ジョージ・ロー氏にインスパイアされたブランドです。

自社で製造するモルトウイスキーと、外部から購入したグレーンウイスキーのブレンデッドウイスキー「ロー&コー」を製造しています。
まろやかでクリーミーな風味、フルーティな味わいが特徴です。

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ロイヤルオーク蒸留所

2016年にアイルランド・カーロウで操業を開始したロイヤルオーク蒸留所。
新しい蒸留所ながら、モルト、グレーン、ポットスチルの3種を製造しています。
これらの原酒をバーボン樽、シェリー樽、マルサラワイン樽の3種の樽で熟成、ブレンドしています。

代表的な銘柄「バスカー アイリッシュウイスキー」は、トロピカルフルーツの甘みと、ワイン樽由来の華やかな風味が特徴の1本です。

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アイリッシュウイスキーの選び方

歴史ある蒸留所と設立まもない蒸留所から生み出される、さまざまな製法やブレンドが魅力のアイリッシュウイスキー。

自身にピッタリの1本を選ぶためのポイントを解説します。

味わいで選ぶ

アイリッシュウイスキーは、原酒ごとに味わいの違いがあります。

ポットスチルウイスキーは大麦やオート麦、ライ麦を原料にしており、穀物の甘みや香りが豊か。
アイリッシュにしかない味わいを楽しめます。

マイルドな味わいが好みなら、モルトウイスキー。
3回蒸留しているので雑味がなく、ブランドごとの特徴が出るウイスキーです。

あっさりした味わいなら、グレーンウイスキー。
クセのある香りが苦手な方でも飲みやすくなっています。

ブレンデッドウイスキーに使われることが多いですが、「ティーリング」などシングルグレーンウイスキーの銘柄もあります。

熟成の度合いで選ぶ

濃厚な味や香りを楽しみたい、銘柄ごとの違いをしっかり味わいたいという方は、熟成期間の長いものを選びましょう。
シャープさが特徴のアイリッシュウイスキーですが、熟成が進むごとに、なめらかな味わいが深まります。

ライトな味わいが好みの場合は、樽の種類で選ぶのもオススメです。
シェリーやワイン樽で熟成されたウイスキーは、まろやかな味わいになります。

同じ蒸留所の銘柄の飲み比べも

蒸留の回数や原料など、独自のこだわりをもった蒸留所が多いアイリッシュウイスキー。

伝統的な製法を守り続けるジ・オールド・ブッシュミルズ蒸留所や新ミドルトン蒸留所、革新的なウイスキーを造るクーリー蒸溜所など、お気に入りの蒸留所を見つけてみましょう。

まとめ

窓辺に置かれたウイスキーグラスの画像

再び注目を集めているアイリッシュウイスキー。
それぞれの蒸留所の工夫や取り組みで、世界的な人気を取り戻しました。

ぜひ歴史や生産者のこだわりを感じながら、アイリッシュウイスキーを楽しんでみてくださいね。

  • この記事を書いた人

けい

Webライター/オンラインコーチングで活動中のノマドワーカー。海外旅行好きで旅行先のバーやレストラン巡りが趣味。ウイスキーは勉強中!ワイン、日本酒、ビールが好き。

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