スコッチの代表的な銘柄の1つである「ラガヴーリン」は、独特な香りと深みのある味わいでウイスキーファンを魅了し続けています。
本記事では「ラガヴーリン」の特徴について、製法や歴史、SNSでの評価も交えながらご紹介します。
本記事が「ラガヴーリン」を味わうための一助となれば幸いです。
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「ラガヴーリン」とは

「ラガヴーリン」は、スコットランド・アイラ島で誕生した200年以上の歴史を持つシングルモルトウイスキーです。
スモーキーでクセのある味わいで、長期熟成銘柄がメインラインナップという希少性があります。
「ホワイトホース」のキーモルトとしても知られており、現在はいずれの銘柄もディアジオ社が所有しています。
アイラ島生まれのシングルモルト

「ラガヴーリン」は、スコットランドのアイラ島に位置する蒸留所で生産しています。
アイラ島といえば、ウイスキーファンにとって「スコッチウイスキーのビッグネームが連ねる有名な場所」というイメージがあるのではないでしょうか。
ラガヴーリン蒸留所は、アイラ島南側の玄関口であるポートエレン港から東、約4キロメートルに位置する戦艦を連想させる独特の建物です。
予約すれば蒸留所内の見学ができます。
アイラ島は美しい自然で知られており、特に蒸留所のあるラガヴーリン湾には数万羽の渡り鳥が毎年やってくることから、バードウォッチャーにとって聖地と称されていたようです。
名前の由来は「水車小屋のある窪地、湿地」
「ラガヴーリン」という名前は、ゲール語の「水車小屋のある窪地、湿地」という意味で、ピートが溶け込むソラン湖周辺の湿地帯に由来しています。
アイラ島の西部に広がる泥炭湿原は腰まで埋まるほどの深さで、場所によっては身動きが取れないこともあるようです。
ウイスキーの名前には、地域の風景や特徴を反映させることが多くありますが、「ラガヴーリン」という名前の由来も、代表例だといえます。
「ラガヴーリン」の特徴
「ラガヴーリン」の主な特徴は、「スモーキーな味わい」と「長期熟成ゆえの生産量の少なさ」です。
本項目では、理由について詳しくご紹介します。
スモーキーな味わい

「ラガヴーリン」の特徴の1つに、アイラ生まれならではのスモーキーな味わいが挙げられます。
「ラガヴーリン」がもつピート由来の強烈でスモーキーな味はアイラモルトの個性として知られており、同時に深みのある風味も楽しめます。
ウイスキー初心者にとってはパンチが効いている特徴的な味わいかもしれませんが、多くのアイラモルトファンがそのスモーキーな味わいに魅了されています。
長期熟成ゆえの生産量の少なさ

長期熟成による生産量の少なさも、「ラガヴーリン」の特徴の1つです。
「ラガヴーリン」のスタンダードボトルは16年で、公式サイトでは「伝説には時間がかかる(原文:LEGENDS TAKE TIME)」と称しています。
また、「ラガヴーリン」の原酒は「ホワイトホース」にもキーモルトとして使われているため、需要に対して生産量は少ないといえます。
生産量が少なく手に入りにくい銘柄だと思われがちですが、2023年7月現在、「やまや」などの酒屋でコンスタントに販売されており、インターネット通販でも入手可能です。
「ラガヴーリン」の製法

「ラガヴーリン」の製法の特徴は、「蒸留器」と「熟成を行う貯蔵庫」にあります。
蒸留には4基の蒸留器が使われ、初留釜での蒸留は5時間、再留釜での蒸留は10時間かけて丁寧に行われます。
1969年には、ラガヴーリン特有のくびれのないストレートヘッド型(通称・タマネギ型)のスチルが導入され、加熱方式も変更されました。

また、ラガヴーリン蒸留所の貯蔵能力は数千樽のみです。
蒸留後のスピリッツは、ほぼ全量、スコットランド本土やアロア近郊の貯蔵庫に運ばれて長期熟成されます。
現地ツアーでは、ラガヴーリン蒸留所の倉庫見学も可能です。
「ラガヴーリン」の歴史

アイラ島で最も古い蒸留所の1つであるラガヴーリン蒸留所の歴史は、200年以上前にさかのぼります。
かつては「ホワイトホース」の看板が蒸留所に掲げられるなど、「ホワイトホース」との結びつきも強い「ラガヴーリン」の歴史について、詳しく見てみましょう。
蒸留所の創業は200年以上前
ラガヴーリン蒸留所は、今から200年以上前に創業しました。
歴史上の正式な稼働年は、1816年。
農業のかたわらで蒸留も手掛けていたジョン・ジョンストンがライセンスを取得後、蒸留所を設置した年となっています。
しかし、1700年代、蒸留所の周辺地域には、すでに複数の密造酒造所が存在していたという記録があるようです。
以降、ラガヴーリン蒸留所は多くの酒造家やオーナーによって運営されてきました。
ジェームズ・ローガン・マッキーが蒸留所を買収
1836年のジョンストンの死後、ラガヴーリン蒸留所はアレキサンダー・グラハムというグラスゴーのスピリッツ商によって所有されていました。
1862年、ジェームズ・ローガン・マッキーが買収。
ジェームズ・ローガン・マッキーという人物は、「ホワイトホース」の生みの親であるピーター・マッキーの叔父に当たります。
ピーターは、1887年以降ラガヴーリン蒸留所で働くようになり、ウイスキー造りを学びました。
「ホワイトホース」創業者、ピーター・マッキーが継承
1889年、ピーターが正式にラガヴーリン蒸留所を継承し、長い年月をかけて蒸留所の経営に取り組みます。
ピーターは「レストレス(休みを知らない)・ピーター」としてウイスキー業界では有名人。
常に動き回り、口癖は「Nothing is impossible(不可能なことはない)」という、巨漢でエネルギッシュな人物だったそうです。
そんなピーターですが、1924年に69歳で亡くなります。
ピーターの死から3年後の1927年には、ディスティラーズ・カンパニー・リミテッド(DCL社)によって買収され、DCL社が「ラガヴーリン」の経営を引き継ぎました。
UD社の「クラシックモルト・シリーズ」に選出
1980年代後半に入ると「ラガヴーリン」はDCL社の経営難から、ギネスグループに買収され、UD社(現在のディアジオ社)の傘下に入りました。
これを期に、ギネスグループのUD社はこれまで力を入れてこなかったシングルモルトに注目し、1988年に「クラシックモルト・シリーズ」を発表。
「クラシックモルト・シリーズ」は世界的な注目を集め、現在のシングルモルトブームの火付け役となりました。
ちなみに、「クラシックモルト・シリーズ」に選出されたのは「ラガヴーリン」の他、以下の5銘柄です。
- クラガンモア
- ダルウィニー
- オーバン
- グレンキンチー
- タリスカー
「クラシックモルト・シリーズ」のラインナップは、32年たった今でも変化がなく、世界中で愛されています。
(唯一変化があったのは「グレンキンチー」の熟成年数のみ)
現在はディアジオの傘下
ラガヴーリン蒸留所は、1997年の合併により誕生したディアジオ社の傘下となりました。現在も、ディアジオ社が所有しています。
「ラガヴーリン」が現在もなおウイスキーファンに愛されているのは、個性的な味わいや、200年以上に渡る長い歴史によるのでしょう。
「ラガヴーリン」のラインナップ

「ラガヴーリン」のラインナップは、限定品や過去の特別リリース分も含め、世界的にも希少かつ人気を博す銘柄の1つです。
個性豊かなスモーキーな味わいを楽しむために、さまざまなバリエーションが展開されています。
ラガヴーリン 8年

- アルコール度数:48%
- 受賞歴
- SFWSC 2018 ダブルゴールド
- アルティメットスピリッツチャレンジ 2018 97点/会長トロフィー
「ラガヴーリン 8年」は、ジョンストンが創立したラガヴーリン蒸留所の200周年を記念して発売された銘柄です。
ウイスキー界のバイブルと称される『英国のウイスキー蒸留所(The Whisky Distilleries of The United Kingdom)』の著者アルフレッド・バーナードが、1880年代に「ラガヴーリン」を試飲した際に「非常に優れている」とたたえた発言から着想を得たそうです。
オイリーな口当たりで、驚くほど芳醇な味わいが広がる「ラガヴーリン 8年」は、香り高い紅茶と海を彷彿とさせる風味が広がります。
「ラガヴーリン 8年」のレビュー
whiskeen編集部のバーテンダー・いのかずが、実際に「ラガヴーリン 8年」を飲んだときの感想をコメントします。
どんな味わいか紹介します!
▼香り
しっかりとしたピート香・潮気・ミントのような爽やかさがあります。
▼味わい
焦がした木のようなスモーキーさ、シトラスのようなスッキリとしたフルーティーさ、バニラのような甘さ、しっかりとしたスパイシーさを感じ、ボディは強めです。
▼総評
「ラガヴーリン 8年」は「ラガヴーリン 16年」と比べるとパンチが強いため、同じ「ラガヴーリン」でも別物と考えてもよいでしょう。
若い原酒特有のパワフルさやフレッシュな風味は、ロックやソーダ割りにしても崩れません。

ラガヴーリン 16年

- アルコール度数:43%
- 受賞歴
- ISC 2008 銀
- ISC 2009 - 2010、2013 - 2015、2018 金
- ISC 2013 金(クラス最高)
- IWSC 2007 - 2009 金(クラス最高)
- IWSC 2014 金
- SFWSC 2003 - 2008、2011、2013 - 2018 ダブルゴールド
- スコッチウイスキーマスターズ 2012 金
- スコッチウイスキーマスターズ 2009、2011、2014 マスター
- WWA 2000、2001、2003、2009 ベストシングルモルト(アイラ13年以上)
- アルティメットスピリッツチャレンジ 2018 97点
「ラガヴーリン」の代表的な銘柄であり、世界中で愛されるモルトウイスキーの1つ「ラガヴーリン 16年」。
スモーキーでピートの香りが特徴で、少なくとも16年間オーク樽で熟成された豊かさとドライさが、絶妙なバランスを生み出します。
テイスティンググラスでそのまま楽しむか、少量の水を加える飲み方で味わうのがおすすめです。
常温の水を加えることでウイスキーの香りや味わいを引き出し、よりまろやかで飲みやすくなります。
なお「ラガヴーリン 16年」は時折終売のウワサが流れますが、公式販売は継続されており、ディアジオ社の商品リストにも掲載されているため、終売というわけではありません。(2023年7月時点)

ラガヴーリン ダブルマチュード ディスティラリーズエディション

- アルコール度数:43%(シリーズ共通)
「ラガヴーリン ダブルマチュード ディスティラリーズエディション」シリーズは、1997年以来、数量限定で毎年リリースされている銘柄です。
PX樽による2段熟成で生まれる通常銘柄では味わえないような豊かな深み、複雑さ、風味のニュアンスが味わえる、まさに熟練の職人技が集結したコレクションだといえます。
国際コンクールでも高い評価を受けている点からも、特別感あるウイスキーだと分かります。
2023年7月時点で、公式サイトでは2022年と2021年の物が確認できましたが、オークションサイトやフリマサイトなどでは、それ以前の年代年にリリースされたものも存在します。
ラガヴーリン12年 リミテッドエディション

- アルコール度数:57.8%
「ラガヴーリン12年 リミテッドエディション」は、バッチごとに毎年ボトリングされている限定品です。
フィルター処理をせずに、カスクストレングスでボトリングされています。
「ラガヴーリン12年 リミテッドエディション」は2002年の初リリース以来継続して販売されており、特に2011年のボトリングは、カスクストレングスの中でも優れた年と評価されているそうです。
オフィシャルの16年物と比べても個性が際立ち、力強い味わいを楽しめます。
そのままストレートで楽しむか、お好みで少量の水を加えてお楽しみください。

ラガヴーリン12年 スペシャルリリース

「ラガヴーリン12年 スペシャルリリース」も、数量限定でボトリングされるシリーズです。
「ディアジオ スペシャルリリース2021-2022」ではケン・テイラー氏のイラストが使用され、2022年は蒸留所を取り巻く伝説上の生物をテーマに堂々としたフェニックスが描かれています。
公式サイトでは、「ラガヴーリン12年 スペシャルリリース」を60mLほどグラスに注ぎ、ストレートで飲むのがおすすめとしていますので、飲む機会がある方はぜひ同じ方法で試してみてください。


「ラガヴーリン」そのほかのラインナップ
「ラガヴーリン」のラインナップには、限定銘柄のほかラガヴーリン蒸留所で毎年行われるジャズフェスティバルにちなんだ限定ウイスキーも販売されています。
出合った際はぜひ試してみてください。
- ラガヴーリン 7年 アイラ ジャズ フェスティバル 2022 限定
- ラガヴーリン 9年 ゲーム・オブ・スローンズ ハウス ラニスター
- ラガヴーリン 12年 アイラフェス2022
- ラガヴーリン ジャズフェスティバル エクスクルーシブ
- ラガヴーリン ジャズ ディスティラリー エクスクルーシブ
「ラガヴーリン」と合う食事
王道のチョコレートとのマリアージュ以外にも、「ラガヴーリン」と合う食事は複数あります。
ラガヴーリン公式サイトで紹介されていたおすすめの食べ合わせも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ウイスキーとの食べ合わせに関する記事も併せてご参考ください。
「ラガヴーリン 16年」とブルーチーズ

「ラガヴーリン 16年」とブルーチーズは、相性抜群の組み合わせです。
世界三大ブルーチーズの1つ「スティルトン」や、「ロックフォール」などの風味豊かなブルーチーズと「ラガヴーリン 16年」は、まさに天にも昇るような組み合わせとなるでしょう。
「ラガヴーリン」の持つスモーキーで豊かな味わいが、ブルーチーズの持つクリーミーさや塩気と調和し、相互に引き立て合います。
舌の上で広がる芳醇な味わいと、チーズの濃厚な風味を堪能する、ぜいたくな時間を堪能できるでしょう。
ラガヴーリン&ステーキ

スモーキーなウイスキーとグリル料理のおいしさを堪能したい方は、「ラガヴーリン」とステーキの組み合わせをおすすめします。
「ラガヴーリン」の力強いスモーキーで豊かな味わいと、グリルで焼かれたステーキのスモーキーさが完全一致。
この組み合わせで一口食べれば、口の中に広がる至福の瞬間を味わえるでしょう。
ぜいたくな食事と、極上のウイスキーを同時に楽しみたい方に、ぴったりの組み合わせです。
「ラガヴーリン」世間の評価は?

「ラガヴーリン」は独特なスモーキーさと風味を持つ個性が魅力ですが、評価は賛否が分かれています。
特にSNSでの意見は、食べ合わせやアイラウイスキーのクセにハマる方もいますが味が合わないと感じる方もいるようです。
詳しく見てみましょう。
ポジティブな評価
SNSでは、 「ラガヴーリン」はポジティブな評価が多いことが分かります。
「ラガヴーリン」の持つ独特なクセにハマる方が多く、特にピートやヨードの味わいが好きな方からは絶賛されているようです。
ネガティブ評価
「ラガヴーリン」には、ネガティブな評価も存在します。
「ラガヴーリン」独特のピートやヨード香を薬の「正露丸」に例え、おいしくないと感じている意見がありました。
一部では、「ラガヴーリンをロックにすると味が落ちて、おいしくない」という意見がある点にも注目です。
ウイスキーによっては、氷や水を多く入れるとバランスが崩れる可能性があることを覚えておきましょう。
ネガティブな評価は、個人の好みや味の感じ方によるものです。
ウイスキーの好みは個人によって異なるため、ネガティブな評価はどうしても存在するといえます。
最後に

「ラガヴーリン」の特徴について、歴史やラインナップ、世間の評価も交えてご紹介しました。
2016年に生誕200周年を迎えた「ラガヴーリン」は、アイラモルトならではのスモーキーでクセのある味わいが特徴です。
クセが強いアイラモルトの1種であることから、個人の好みや感じ方によっては、口に合わない場合もあります。
それでも、一度は飲んでみたいと思われる銘酒として評価されている「ラガヴーリン」は、好みに合うか試してみる価値があるのではないでしょうか。
本記事を参考に「ラガヴーリン」に関する知識を深め、自身に合った飲み方や食事との相性を楽しんでみてください。