アメリカンシングルモルトの先駆けである「ウエストランド」。
スコットランドでウイスキー造りを学んだ創業者が「アメリカでのシングルモルト造り」にこだわって設立したウエストランド蒸留所で造られています。
「ウエストランド」の製法のこだわりや個性的な銘柄をご紹介します。
この記事の監修者
![浅野まむ](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/uploads/2022/07/asano-profile.png)
ウイスキー「ウエストランド」とは
![地図の上に置かれたウエストランドウイスキーのボトルとグラス](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/uploads/2023/09/image4-1.jpg)
「ウエストランド」はアメリカ・ワシントン州シアトルのウエストランド蒸留所で造られるウイスキーです。
ワシントン州は大麦栽培が盛んな土地で、ウエストランド蒸留所は現地の文化や風土を表現することにこだわっています。
アメリカのウイスキーといえばバーボンを思い浮かべる方も多いと思いますが「ウエストランド」はバーボンではなくシングルモルトウイスキーで、バーボンとシングルモルトは下表のような違いがあります。
種類 | 主な原料 | 蒸留方法 | 備考 |
バーボン | トウモロコシ (51%以上) | 連続式蒸留 | ‐ |
シングルモルト | 大麦麦芽のみ | 単式蒸留 | 単一の蒸留所で製造 |
「ウエストランド アメリカンシングルモルト」のレビュー
whiskeen編集部のバーテンダーのいのかずが、実際に「ウエストランド アメリカンシングルモルト」を飲んだときの感想をコメントします。
どんな味わいか紹介します!
▼香り
一般的なアメリカンウイスキーらしく、バニラのような甘さとバナナのようなフルーティーさ、シナモンのようなスパイシーな香りがします。
▼味わい
バニラ・モルト・バナナ・チョコレートの甘さ、シトラスのような爽やかさ、ナッツのような芳ばしい風味が楽しめます。
スコッチとアメリカンウイスキーの中間くらいの味わいで、少しドライめなバーボンのような感じでしょうか。
▼総評
前例のないアメリカンシングルモルトの名に恥じない質の高さを感じました。
風味が個性的かつ豊かで、価格分のおもしろさは十分に感じられるはずです。
アメリカンウイスキーからモルトのニュアンスが感じ取れるウイスキーは数少ないため、経験として一度飲んでみてはいかがでしょうか。
![](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/plugins/pochipp/assets/img/pochipp-logo-t1.png)
ウイスキー「ウエストランド」の歴史
![樽造りに使われる工具とウエストランドウイスキーのボトル](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/uploads/2023/09/image15-1.jpg)
ワシントン州シアトルに本拠を置くウエストランド蒸留所は、2010年にマット・ホフマンとエマーソン・ラムによって創設されました。
創業当時20代だった2人は最初はジンとウイスキーを製造しており、その後アメリカンシングルモルトウイスキーに絞って製造。
当時は「アメリカンシングルモルトウイスキー」というカテゴリーはまだありませんでした。
2010年開業時の蒸留所はすぐに手狭になり、2012年にシアトルの工業地帯であるソードー地区に移転します。
▼ウエストランド蒸留所
ウエストランド蒸留所は訪問可能で予約すれば蒸留所ツアーに参加でき、テイスティングバーでのウイスキーの試飲やショップでの購入が可能です。
参考:Visit — Westland Distillery
ウイスキー「ウエストランド」の受賞歴
「ウエストランド」の受賞歴を紹介します。
受賞年 | コンペティション・賞 | 受賞した銘柄・人など |
2015 | アメリカン・ディスティリング・インスティチュート 「ウイスキー・オブ・ザ・イヤー」 | ウエストランド蒸留所 |
2016 | ワールド・ウイスキー・アワード 「ワールド・クラフト・プロデューサー・オブ・ザ・イヤー」 | ウエストランド蒸留所 |
2018 | アイコンズ・オブ・ウイスキー 「マスター・ディスティラー・オブ・ザ・イヤー」 | マット・ホフマン (創業者) |
2019 | ワールド・ウイスキー・アワード 「アメリカン・シングルモルト・ウイスキー・オブ・ザ・イヤー」 | ウエストランド ギャリアナ3|1 |
2020 | 2020 アルティメット・スピリッツ・チャレンジ 「スコア96点」 「年間最高のスピリッツ100」 「チェアマンズ・トロフィー」 | ウエストランド ギャリアナ 2019 |
2020 | アイコンズ・オブ・ウイスキー 「ディスティラリー・マネージャー・オブ・ザ・イヤー」 | スコット・セル (蒸留所マネージャー) |
2020 | 東京ウイスキー&スピリッツコンペティション 2020 「金賞」 | ウエストランド アメリカンオーク |
2021 | 東京ウイスキー&スピリッツコンペティション 2021洋酒部門 「銀賞」「特別賞」 | ウエストランド ギャリアナ 2020 |
2022 | ワールド・ウイスキー・アワード 「ベスト・アメリカン・シングルモルト・ウイスキー」 | ウエストランド ギャリアナ6 |
ウイスキー「ウエストランド」の製法
![ローストしたモルト](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/uploads/2023/09/image8-1.jpg)
シングルモルト「ウエストランド」には、他の製造地のウイスキーにはない特徴があります。
アメリカならではのシングルモルト造りにこだわったその製法や原料について解説します。
複数の大麦モルト
創業者の一人であるマット・ホフマンは、スコットランドのヘリオットワット大学の醸造蒸留研究所でウイスキー造りを学んでおり、スコッチの製法に敬意を払いつつも、ワシントン州ならではのシングルモルト造りにこだわっています。
スコッチとの違いの一つが原料で、「ウエストランド」はワシントン州産を含むさまざまなタイプの大麦モルトを使用しています。
- ワシントン州産のペールモルト
- ミュンヘンモルト
- エクストラスペシャルモルト
- ブラウンモルト
- ペールチョコレートモルト
使用するのは主にこれらのモルトで、レシピによって使い分けさまざまな銘柄を生み出しています。
アメリカ産のピーテッドモルト
![ピートモルト](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/uploads/2023/09/image3-1.jpg)
「ウエストランド」には、ピーテッドモルトを使用している銘柄もあります。
2016年までピーテッドモルドはスコットランドから輸入していましたが、2017年から地元のピートで燻したワシントン州産のピーテッドモルトも使うようになりました。
ワシントン州産のピートはスコットランド産と風味が異なり、地元のピートを使用することで「ウエストランド」らしさが生まれます。
オーク樽のこだわり
![オークの新樽を作成](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/uploads/2023/09/image12-2.jpg)
ウエストランド蒸留所では、バーボン樽やシェリー樽といった古樽のほかにオークの新樽も使用しています。
また、生息地域のオーク全体の5%ほどしかない希少なギャリアナオークを使用していることも大きな特徴です。
ギャリアナは成長に時間がかかる上にタンニンとフェノールが強く、成分を和らげるために何年も自然乾燥させる必要があるため非常に希少です。
ギャリアナオークの樽で熟成したウイスキーは、インパクトのある個性的な味わいになり、他の樽で熟成した原酒とのブレンドにより、独特のフレーバーが生まれます。
また、アメリカンウイスキーは樽の内側を直火で焼くチャーという工程があり、ウエストランド蒸留所では熟成のスピードに合わせてチャーの具合を変えたものが用意されています。
「ウエストランド」のラインナップ
5種類もの大麦モルトと多様な熟成樽から生み出される「ウエストランド」には、多彩なラインナップがあります。
それぞれの味わいや製法、特徴を解説します。
ウエストランド アメリカン・シングルモルト
![ウエストランド アメリカン・シングルモルトの商品画像](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/uploads/2023/09/image5.jpg)
- アルコール度数:46%
- 容量:700mL
「ウエストランド」のフラッグシップボトルで、当時は確立されていなかったアメリカンシングルモルトを開拓してきた取り組みの、集大成となる銘柄です。
複数の大麦を原料とし、5種類の熟成樽で40カ月以上熟成された原酒をブレンド。
カスタード、ブラックベリージャム、ミックスメープルナッツ、焼きマシュマロの甘い香りと、アーモンドヌガー、クリームブリュレ、紅茶のような味わいが特徴です。
![](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/plugins/pochipp/assets/img/pochipp-logo-t1.png)
ウエストランド ギャリアナ 2019
![ウエストランド ギャリアナ 2019の商品画像](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/uploads/2023/09/image6-2.jpg)
- アルコール度数:50%
- 容量:700mL
希少なオーク材であるギャリアナ樽を使った「ギャリアナ」シリーズの4番目の銘柄で、「ウエストランド」シリーズで初めてシェリー樽熟成の原酒を使用しているのが特徴です。
限定で3,750本が生産されました。
カスタード、ブラックベリーシロップ、ドルチェ・デ・レチェ(南米のキャラメル菓子)の香り、ファッジ、フレッシュなオークを感じる味わいです。
2020年には、アメリカ最大級の蒸留酒コンペティションであるアルティメット・スピリッツ・チャレンジで96点のスコアを獲得したほか、「年間最高のスピリッツ100」「チェアマンズ・トロフィー」を受賞しています。
ウエストランド ギャリアナ 2020
![ウエストランド ギャリアナ 2020のパッケージとボトル](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/uploads/2023/09/image11-2-819x1024.png)
- アルコール度数:50%
- 容量:700mL
- ※画像パッケージの記載は750mLだが、公式サイト記載の容量は700mL
「ギャリアナ」シリーズの第5弾となる銘柄で、第5弾までのシリーズ中もっとも高い配合でギャリアナ樽の原酒がブレンドされています。
限定5,625本が生産されました。
ペールモルトとピーテッドモルトで製造されており、深みのある個性的な味わいが特徴です。
コットンウッドの爽やかな香りと、ワッフル、シリアル、スモーキーなチョコレートの甘い香り、スパイシーなクローブや焦げた木材、カカオバターの風味を楽しめます。
2021年に東京ウイスキー&スピリッツコンペティションの洋酒部門で銀賞および、特別賞を受賞しています。
![](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/plugins/pochipp/assets/img/pochipp-logo-t1.png)
ウエストランド ギャリアナ6
![ウエストランド ギャリアナ6のパッケージとボトル](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/uploads/2023/09/image16-2-812x1024.jpg)
- アルコール度数:50%
- 容量:700mL
「ギャリアナ」シリーズの第6弾で、ギャリアナ樽とブランデー樽、ペドロ・ヒメネスシェリー樽の3種類を使用しています。
5,922本限定の生産です。
ギャリアナ樽は香ばしいスパイスの風味、ブランデー樽は軽やかな味わい、ペドロ・ヒメネスシェリー樽は、甘さを抑えたダークフルーツの風味をプラスしています。
煮詰めたラズベリー、メープルキャンディ、ドルセ・デ・レチェ、クローブの香りとスギのウッディな風味、シナモン、ドライアプリコットの甘い味わいが特徴です。
2022年のワールド・ウイスキー・アワードにおいて「ベスト・アメリカン・シングルモルト・ウイスキー」を受賞しています。
ウエストランド ギャリアナ7
![ウエストランド ギャリアナ7のパッケージとボトル](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/uploads/2023/09/image14-1-812x1024.jpg)
- アルコール度数:50%
- 容量:700mL
「ギャリアナ」シリーズの7番目のこちらは、豊潤で香り高いギャリアナオーク樽原酒と力強いワシントン・ワイン樽原酒を中心にブレンドされています。
限定6,900本の生産で、スパイシーさとフルーティーさがバランスよく表現されています。
ブラックベリーのコンポート、クローブ、ピザ生地、アップルパイの香り、糖蜜、焦げた杉、クロスグリ、辛口のアップルサイダーの味わいが楽しめます。
![](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/plugins/pochipp/assets/img/pochipp-logo-t1.png)
ウエストランド コレレ エディション1
![ウエストランド コレレ エディション1のパッケージとボトル](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/uploads/2023/09/image2-1.jpg)
- アルコール度数:50%
- 容量:700mL
「コレレ(COLERE)」とは「成長する」を意味するラテン語で、地元で育った大麦を使用しその風味を探求するシリーズです。
第1弾の「エディション1」は限定2,893本の生産で、地元ワシントン州のスカジット・バレーで育った六条大麦のアルバ種を使用しています。
オークの影響を抑え大麦そのものの風味を表現するため、リフィル樽(古樽)で熟成されるのが特徴です。
ローストしたパイナップル、シリアル、グレープソーダ、クッキー生地、ローストアーモンドの香り、フルーティーさの中に、クラッカーとブラックペッパーを感じる味わい。
![](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/plugins/pochipp/assets/img/pochipp-logo-t1.png)
ウエストランド コレレ エディション2
![ウエストランド コレレ エディション2のパッケージとボトル](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/uploads/2023/09/image7-2.jpg)
- アルコール度数:50%
- 容量:700mL
「コレレ」シリーズ第2弾で使われている大麦は、タリスマンという品種です。
タリスマンは二条冬型品種で、イギリスのエール系のビールに使われるマリス・オッターというモルトを先祖にもつ大麦です。
「ウエストランド コレレ エディション2」は3,000本の限定生産で、ドライレモンピール、バニラ、フレッシュラズベリーの香り、黒糖、ダークチョコレートオレンジ、ミックスベリージャムの味わいが楽しめます。
ウエストランド ソラム1
![ウエストランド ソラム1のパッケージとボトル](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/uploads/2023/09/image10-1-683x1024.jpg)
- アルコール度数:50%
- 容量:700mL
「ソラム(SOLUM)」とは英語・ラテン語で土・土壌という意味で、アメリカ北西部のテロワール(土地の個性)を表現するシリーズです。
新鮮なリンゴ、シナモン、焦げた木材、ストロベリーやルバーブの香り、バニラ・カモミールティー、コーヒーケーキ、トーストしたプンパニッケル・ブレッド(ドイツのライ麦パン)を感じる味わいが特徴。
4,044本の限定生産です。
![](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/plugins/pochipp/assets/img/pochipp-logo-t1.png)
ウイスキー「ウエストランド」の評価は?口コミを紹介
![作業場に置かれたウエストランドウイスキーのボトル](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/uploads/2023/09/image1-2.jpg)
画像出典:Heritage Collection — Westland Distillery
「ウエストランド」のラインナップは非常に魅力的ですが、実際に飲んだ人の評価はどのようになっているのでしょうか。
「まずい」という意見と「うまい」という意見、どちらも調査し、理由や傾向を分析します。
「まずい」という口コミ
まずは、実際に飲んで「まずい」と感じた人の意見です。
「ウエストランド」のネガティブな口コミについては、数が少ない印象でした。
アメリカンウイスキーのウエストランド蒸溜所のREVERIE。ボトルデザインだけで選択。くだものと気の抜けたコーラ??っぽい味。
— かんば (@kanba0930) July 21, 2023
サインラリー全然貯まらなくて恥ずかしいですが、提出しました。 pic.twitter.com/jexvoRr2gi
「REVERIE」は蒸留所限定銘柄のようで、伝統的な製法にとらわれないシングルモルト造りを目指したシリーズです。
個性の強い銘柄もあるので好みによっては「おいしくない」と感じるかもしれませんが、ぜひ一度試してみたいウイスキーです。
「うまい」という口コミ
次に「うまい」と感じたポジティブな意見をみてみましょう。
個性的で特徴のある味わいや爽やかさを評価する声が多く見受けられました。
燻製など料理との相性も良さそうですね。
いろいろな飲み方や食事との組み合わせを楽しみたいウイスキーです。
最後に
![広大な大麦畑](https://whiskey-spirits.jp/wp-content/uploads/2023/09/image13-1.jpg)
アメリカンシングルモルトの草分けとなった「ウエストランド」は、スコッチの製法を真似るだけでなく、アメリカの土地ならではの味わいにこだわって造られています。
原料の大麦の種類や樽による違いを、ぜひ飲み比べてみてください。
アメリカンウイスキーについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。