サントリーのウイスキー「知多」は、日本を代表するシングルグレーンウイスキーのひとつです。
バニラのような甘い香りと、軽やかでクセのない味わいが、ファンを魅了してやみません。
軽やかでありながら複雑な奥深さが感じられるのは、こだわりの原酒を緻密にブレンドしているためです。
この記事では、知多ウイスキーの定価と市場価格、製法やこだわりなどの製品特徴、さらに知多ウイスキーの歴史や知多蒸溜所について紹介します。
後半ではオススメの飲み方も考察しているので、知多ウイスキーを深く知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
知多ウイスキーの歴史

知多ウイスキーが作られる知多蒸溜所は、愛知県知多市にある国内最大級のグレーンウイスキー蒸溜所です。
知多蒸溜所は、1972年にサントリーグループと全農グループが共同で出資した「サングレイン株式会社」によって設立され、翌年の1973年にウイスキーの蒸溜を始めました。
ウイスキーには、
- 大麦麦芽を原料とする「モルトウイスキー」
- トウモロコシ・ライ麦・小麦など、大麦以外の穀物を主原料とする「グレーンウイスキー」
- モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドして作られる「ブレンデッドウイスキー」
の3つに大別されます。
モルトウイスキーは個性的で主張が強いため「ラウド(loud)スピリッツ」と呼ばれるのに対し、穏やかな味わいでモルトウイスキーの個性を引き出す役割のあるグレーンウイスキーは、「サイレント(silent)スピリッツ」と呼ばれます。
縁の下の力持ちのような役割のグレーンウイスキーは、一般的にブレンデッドウイスキーの原酒として使用され、単体で飲まれることは多くありません。
知多蒸溜所で作られるグレーンウイスキーも、サントリーのブレンデッドウイスキーである角瓶、響、オールドなどの原酒に欠かせない存在です。
このように、ブレンデッドウイスキーの原酒として使用されることの多いグレーンウイスキーですが、2015年、知多蒸溜所で作られる原酒のみを使用したシングルグレーンウイスキー「知多」が発売されます。
シングルグレーンウイスキーの「シングル」は、単一蒸溜所という意味で、知多蒸溜所で作られるさまざまなグレーン原酒をブレンドして完成させたのが知多ウイスキーです。
知多ウイスキーは、発売されると同時に話題となり、その人気を今も保ち続けています。
2019年4月、サングレイン株式会社は「サントリー知多蒸溜所株式会社」へと社名が変更され、2020年には世界で最も権威のある酒類の品評会「International Spirits Challenge2020」において、知多ウイスキーが金賞を受賞します。
1980年代を過ぎた頃、ウイスキーブームは低迷期を迎えていました。その間、知多蒸溜所の技術者たちは、試行錯誤してグレーンウイスキーの原酒製造に取り組んでいました。
そのたゆまぬ努力の結晶が、知多ウイスキーなのです。
知多ウイスキーの定価・市場価格・特徴
知多ウイスキーは、知多蒸溜所の原酒のみを使用した「シングルグレーンウイスキー」です。
知多ウイスキーが評価される理由は、多様な方法で作られるグレーン原酒にあり、その原酒へのこだわりのひとつが、蒸溜方法による作り分けです。
単式蒸溜機で2回の蒸溜を行うモルトウイスキーに対し、グレーンウイスキーは連続式蒸溜機を使用します。知多ウイスキーの原酒は、独自に開発した連続式蒸溜機によって多彩な原酒が生み出されています。
2塔式から4塔式まで塔の組み合わせを変えられる蒸溜機を用い、原料である穀物の味を強く感じる「ヘビー」、穀物の旨みをマイルドに感じる「ミディアム」、ほのかな甘みですっきりとした味わいの「クリーン」の3タイプの原酒が作り分けられているのです。
さらに、原酒が詰められる樽にも、こだわりがあります。
バニラの甘い香りの元となるホワイトオーク樽をメインに、フルーティーなスパニッシュオーク樽やワイン樽も使用されるのが特徴です。
3タイプの原酒が、それぞれの樽に詰められ、熟成されます。熟成のピークはブレンダーたちによって見極められ、あるものは5年、あるものは15年と、多様な熟成年数のグレーンウイスキーがブレンドされて「知多」が完成するのです。
なお、一般的なグレーンウイスキーは、トウモロコシのでんぷんを糖に変える酵素として、麦芽(モルト)が使用されています。この場合、原材料にモルトと表示されますが、モルトウイスキーを使用しているわけではないため、ブレンデッドウイスキーではなくグレーンウイスキーに分類されます。
知多ウイスキーの市場価格

- 原材料:グレーン、モルト
- アルコール度数:43%
- 容量:700ml
- 希望小売価格:6,000円
■定価:6,000円 ■市場価格:5,500円~7,000円
主な特徴
- 【香り】1.バニラ 2.トフィー(バタークッキー、カスタードクリーム)3.フルーティー(シトラス、バナナ、メロン)4.ハーブ
- 【味わい】ストレートではアルコールを強めに感じます。ほのかな甘みがあり、ビター感が強く、余韻は短めです。ロックではアルコール感が弱まり、味わいに丸みが出ます。シトラス系のフルーティーさとともに、チョコレートのような甘苦さを感じます。ハイボールでは、炭酸の爽快感と同時にバニラの甘さやバターのようなコクがまったりと感じられ、バナナのような甘い味わいが余韻として残ります。
- 【オススメ飲み方】(1)ハイボール (2)ロック
知多蒸留所は見学できる?

出典:知多蒸留所ホームページ
知多蒸溜所では、一般の人の見学やウイスキーの販売は行っていません。
知多蒸溜所は、伊勢湾の内海に面する知多半島に位置し、製粉会社などの食品工場が立ち並ぶ工業地帯の一角にあります。
ここは、アメリカから原材料となる穀物を載せた船が入ってくる場所であり、ウイスキー原酒を貯蔵する滋賀県の近江エージングセラーと、山梨県の白州蒸溜所の中間地点でもあるなど、物流の面では最適な場所です。
サントリーが所有する3つの蒸溜所のうち、山崎と白州では蒸溜所見学ができますが、知多蒸溜所は見学ができません。
周囲は工業地帯であり、一般の人が立ち入ると迷惑になるため、敷地内には入らないようにしましょう。
知多ウイスキーの製造工程などは以下のサイトから閲覧できます。参考にしてください。
知多ウイスキーのオススメ飲み方をご紹介!

ここからは、知多ウイスキーのオススメの飲み方を紹介します。
なんといっても王道はハイボール。
公式ホームページでも「風香るハイボール」として紹介されています。
知多ウイスキーは和食とも相性抜群で、すだちや生姜、山椒の葉など、「和のハーブ」を加えるのもオススメです。
ウイスキーの繊細な味を損なわないためには、これらの食材をスライスしてそっと加えるのがポイント。微かに香りをつけ、味の調和を楽しみましょう。他にも、知多ウイスキーの甘く軽やかな飲み心地をいかした多彩な飲み方が楽しめます。
SNSで紹介されている知多ウイスキーの飲み方をいくつかピックアップしてみました。
寒い夜には知多のバニラビーンズ🫘漬けのホットウイスキー🥃が最高に合うッス👍
— Jero (@jeroglass44) December 18, 2024
理科室風🧪で‼️😆 pic.twitter.com/9FCuH9gMw1
Teapickのサバラガムワに
— Keï (@kei_roid) December 22, 2024
知多を混ぜてウイスキーティーに
こんな変なオーダーも応えてくれるの
とても嬉しい☺️#サバラガムワ #知多 #kissshot pic.twitter.com/NhmOjzu8Rd
ホップデュベル売れ筋No.1のサントリー知多を使ったハイボールです!
— 焼鳥&ベルギービール専門店『ホップデュベル』 (@HopduvelYaki) January 31, 2024
軽い口当たりでアルコールの強さを感じず、バニラのようなほんのり甘味、香りと優しくとても飲みやすくウイスキー初めての方にもおすすめです。色々種類も御座いますのでお気軽にお声掛けください。#ホップデュベル #焼き鳥 pic.twitter.com/89f8jMucoP
すだちやレモンなどのかんきつ類との組み合わせから、お湯割りやカクテルベース、またアイスクリームにかけたり紅茶に加えたりして楽しんでいる人もいます。
さまざまな飲み方が楽しめるのも、知多ウイスキーの特長のひとつです。
まとめ

サントリーの「知多」は、軽やかな甘さと複雑な奥行きを楽しめるシングルグレーンウイスキーです。
2015年のデビュー以来、変わらない人気を維持しており、その秘密は知多蒸溜所で作られる多彩な原酒にあります。
連続式蒸溜機の高さを変えて、ヘビー、ミディアム、クリーンの3タイプの原酒を作り分け、ホワイトオーク樽をメインにスパニッシュオーク樽やワイン樽も使用するなど、熟成樽にもこだわっているのが特徴です。
クセがなく口当たりのよい知多ウイスキーは、さまざまな飲み方が楽しめます。
定番のハイボールはもちろん、ロックやお湯割りもオススメです。
ハイボールでは、すだちや生姜のスライスを加えるといったアレンジが楽しめるほか、アイスクリームにかけたり紅茶に加えたりする楽しみ方もできます。これらを参考に、自分好みの飲み方を探してみてはいかがでしょうか。
よりいっそう、知多ウイスキーの世界が広がります。