良心的な価格と本格的な味わいの”富士山麓”は、ウイスキーファンの評価も高い傾向にあるブレンデッドウイスキーです。
「澄んだ味わいの中に広がる甘い樽熟香」を目指して作られた「富士山麓」ですが、その製造工程には強いこだわりがありました。
「マチュレーションピーク」の見極めや、豊かな自然環境。
それらのこだわりを感じながら、「富士山麓」を味わってみてください。
銘柄ごとの特徴も紹介しますので、是非参考にしてみてください。
「富士山麓」とは
「富士山麓」は飲料水メーカーのキリングループが販売するウイスキーの基幹ブランドです。
蒸留所・・・富士御殿場蒸留所
地域・・・静岡県御殿場市
熟成樽・・・北米産のホワイトオーク製バレル樽(約180リットル)
アルコール度数・・・43%〜50%
キリン社と言えばビールや清涼飲料水のイメージが強いという方もいるでしょう。
しかし、キリン社が生み出すウイスキーの中でも富士山麓の品質は高いと定評があり、ウイスキーファンからも評価の高い日本産ウイスキーのひとつに君臨しています。
「富士山麓」の歴史
「富士山麓」が作られている富士御殿場蒸留所は、キリンシーグラム株式会社によって1973年に設立され、2018年に45周年を迎えました。
ちなみにキリンシーグラム株式会社は、2002年にキリンディスティラリー株式会社(キリンビール株式会社の100%出資会社)へと名称を変更しています。
2005年以前は「ロバートブラウン」や「ボストンクラブ」等の人気銘柄をリリースしてきましたが、2005年に「富士山麓」が誕生。
発売から現在に至るまで、キリン社の定番ウイスキーとして売れ続けています。
「富士山麓」美味しさの秘訣
キリン社は「澄んだ味わいの中に広がる甘い樽熟香」という理想のウイスキー像を掲げています。
では、理想の味わいに近づけるための秘訣はどこに隠されているのでしょうか。
以下の3つが挙げられます。
・自然環境
・グレーン原酒を3種類作るこだわり
・熟成を見極める「マチュレーションピーク」
それぞれについて深堀りしてみましょう。
「富士山麓」を生み出す自然環境

キリン社によれば、「澄んだ味わいの中に広がる甘い樽熟香」を作るためには、以下3点を目指すことが必要とのことです。
・水の質が良く量が豊富なこと
・温度と湿度のバランスが良いこと
・きれいな空気があること
実は上記で示した3つのポイントは、富士御殿場蒸留所の環境とマッチしています。
『静岡県公式ホームページ』にも明記の通り、富士御殿場蒸溜所に近い富士山の伏流水の水質は大変良く、水量も豊富です。
そして、富士御殿場近辺の年間平均気温は13度と、日本の中でも比較的冷涼な気候です。
・東京の平均気温は16.6度です。
参考:気象庁 平均気温
また、周辺の山にかかる霧の影響で高く保たれる湿度と豊富な自然から生まれる澄み切った空気も、上質なウイスキー作りには欠かせません。
以上の雄大な富士山からの恩恵を受けた環境が、「富士山麓」の味わいを生み出しているのです。
グレーン原酒を3種類作るこだわり
蒸留所では一般的に、モルト原酒とグレーン原酒のどちらかを蒸留します。
しかし富士御殿場蒸留所では、モルト原酒とグレーン原酒両方を蒸留しているそうです。
特にグレーン原酒に関しては、研究を重ねた上での自社生産にこだわりを持っているのだとか。
キリン社ではグレーン原酒の蒸留に当たって、ライトタイプ、ミディアムタイプ、ヘビータイプの3種類を製造しています。
種類 | 蒸留器 | 味わいの特徴 |
ライトタイプ | マルチカラム | ソフトで癖の少ない味わい |
ミディアムタイプ | ケトル | フルーティーで香ばしい風味 |
ヘビータイプ | ダブラー | ライ麦原料由来の重厚感ある味わい |
このように、モルト原酒だけではなくグレーン原酒にも工夫を重ねることで、「澄んだ味わいの中に広がる甘い樽熟香」を実現しているのです。
熟成を見極める「マチュレーションピーク」
「富士山麓」を作る上で大切にされているのが、「マチュレーションピーク」です。
「マチュレーションピーク」状態の原酒のみを扱うのが、「富士山麓」の最大の美味しさの秘訣だと言えます。
「マチュレーションピーク」とは、原酒の特徴や個性が最もよく表れている円熟期の状態のこと。
基本的に年代物のウイスキーは、熟成年数が長ければ長いほど高価になります。
しかし、熟成年数が長ければ長いほど美味しい、良いウイスキーというわけではありません。
100種類の原酒があれば100種類の「マチュレーションピーク」があり、熟成環境によってもその期間が変動しますので、熟成状態を見極めるのはそれだけ難しい作業なのです。
「富士山麓」の製造では熟練のブレンダーが毎日原酒の状態を観察することで、上質な味わいの「富士山麓」が完成します。
「マチュレーションピーク」を見極めることが、はっきりした味わいを生み出す秘訣です。
「富士山麓」の味わいや香り
「富士山麓」が人気商品であり続けるのは、やはりこだわりの製造工程から生じる味わいや香りの品質が高水準だからでしょう。
味わいと香りに関して、それぞれどんな特徴があるのかご紹介いたします。
「富士山麓」は深みある味わい
「富士山麓」は重厚感もありながらフルーティーな甘さも感じられる、深みある円熟した味わいです。
複雑でありながら、3種のグレーン原酒それぞれの特徴が生かされています。
また、50%と高いアルコール度数でもストレートで楽しめるまろやかさも特徴です。
「富士山麓」の上質な香り
「富士山麓」は、洋梨やパイナップルのようなフルーティーな香りが特徴的です。
その中に甘さや香ばしいピート臭も感じられます。
原酒それぞれの特徴を生かして仕上げられた、バランスの良いブレンデッドウイスキーです。
「富士山麓」銘柄ごとの特徴紹介
この項目では、「富士山麓」の銘柄ごとの特徴や味わいなどについてをご紹介します。
富士山麓シリーズは、主に以下の商品が販売されています。
・「富士山麓 シグニチャーブランド」
・「富士山麓 ブレンデッド18年」
一方、2022年2月時点で終売になっているメインシリーズは以下の通りです。
・「富士山麓 樽熟原酒50%」
・「富士山麓 シングルモルト18年」
上記のように、「富士山麓」シリーズには手軽に購入できるシングルモルトウイスキーや終売になっている銘柄などがあります。
市場価格相場もあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「富士山麓 シグニチャーブレンド」

・700ml
・メーカー販売価格:5,500円(税込)
・市場価格相場…5,000円前後
・アルコール度数…50%
後述する「富士山麓 樽熟原酒50%」の終売以後、「富士山麓」のレギュラーボトルとして飲まれているのが「富士山麓 シグニチャーブレンド」です。
富士山麓で手に入りやすい銘柄とはいえ、価格だけ見ると決して安いとは言えません。
しかし、本格的な味わいのおかげで一度飲めば「安くて上質なウイスキー」だと感じるかもしれません。
50%と高めのアルコール度数ですが、口当たりはとてもまろやか。
フルーティーで甘めの風味も感じられながらも重厚感もしっかりしており、辛みとのバランス抜群!
「さすがマチュレーションピークのウイスキー」と感じる、まとまりの良さが特徴です。
「富士山麓 ブレンデッド18年」

・700ml
・市場価格相場…3万6,000円~5万5,000円前後
・アルコール度数…43%
「富士山麓 ブレンデッド18年」の深みやコク・芳醇な味わいは、さすが年代物と感じられるほど高品質。
「富士山麓 シグニチャーブランド」と比べると、価格差は歴然です。
ベースは「富士山麓 シグニチャーブランド」と大きく変わりませんが、「富士山麓 ブレンデッド18年」のほうが完成度の高さを感じます。
残念ながら2022年2月現在キリン公式通販サイトでは販売されておらず、購入する際はオークションサイトや店舗購入などでないと手に入らない代物。
そのため、購入する場合は市場価格相場として記載した価格を目安にすると安心です。人によっては日常的に飲めるような銘柄だと感じられないかもしれませんが、記念日やお店で見つけた際には是非飲んでみてください。
富士山麓 樽熟原酒50%(終売)

・700ml
・市場価格相場…4,000円前後
・アルコール度数…50%
2005年の発売から「富士山麓」の代名詞として人気を博してきたのが、「富士山麓 樽熟原酒50%」です。
深みのある味わいと50%という高いアルコール度数のボトルがなんと、かつては1,300円前後で購入可能でした。
現在は終売になってしまった関係で、現在は4,000円前後まで高騰しています。
終売となってしまった背景には、原酒不足問題があるようです。
これだけ安くて美味しい銘柄はとても貴重ですので、販売が再開されると良いですね。
「富士山麓 シングルモルト18年」(終売)

・700ml
・市場価格相場…55,000円前後
・アルコール度数…50%
主にグレーンウイスキーに力を入れている富士御殿場蒸留所ですが、「富士山麓 シングルモルト18年」という、18年以上熟成したモルト原酒のみで作られたシングルモルトウイスキーも製造されていました。
芳醇な味わいやフルーティーな香り、ウッディで香ばしい風味。
他の「富士山麓」銘柄と比べると、甘さよりもビターさが強い印象です。
また、終売となっているためか、手に入れた方の口コミを見ていくと2020年以前の投稿が目立ちます。
まとめ
以上、「富士山麓」について特徴をご紹介しました。
いかがでしたでしょうか。
こだわりの製法や環境の中で製造される「富士山麓」。
「澄んだ味わいの中に広がる甘い樽熟香」に虜になったウイスキーファンも少なくありません。
シリーズの中でも「富士山麓 樽熟原酒50%」が圧倒的人気を誇っていましたが、2022年2月現在も原酒不足で再販の目処がたっていないようです。
今購入可能な銘柄も、いつ終売になってしまうか分かりません。
もし、お店やバー等で「富士山麓」を見かけた際は、この記事を思い出して是非手に取って飲んでみてください。