歴史が浅いながら日本のウイスキー業界で際立つ存在となった厚岸蒸溜所。
アイラモルトのようなウイスキー造りを目指しており、製造するウイスキーは「ジャパニーズアイラ」との呼び声も高まっているそうです。
シングルモルトとブレンデッドが混在する「二十四節気シリーズ」はストレートはもちろん、少量の加水、トワイスアップ、オンザロックなど、さまざまな飲み方で楽しめます。
厚岸ウイスキーは販売形式が限定販売であることから、入手困難になることが多く、店頭でも数万円程度の価格になります。オンラインでも販売されておりますが、需給バランスによって値段が高騰・変動している状況です。
本章では、そんな「厚岸」の二十四節気シリーズの小暑・立夏・霜降・冬至とカムイウイスキーを紹介します。
ウイスキー「厚岸」について

北海道の地名が名前についた「厚岸」はスコッチウイスキーの伝統製法によって造られています。
厚岸の豊かな自然環境が育む厳選された原料を使用することで、地域の特色を映し出しています。
ウイスキー「厚岸」の製造地

ウイスキー「厚岸」は北海道の南東部に位置する厚岸町にある厚岸蒸溜所で製造されています。
厚岸蒸溜所を営む堅展実業株式会社は、異業種からウイスキー造りに参入。スコットランドの伝統的な製法に倣ってアイラモルトのようなウイスキーを造ることを目指しています。
「厚岸」はアイヌ語で「牡蠣のあるところ(アッケシシ)」という意味です。
厚岸の地は深い霧と豊富な泥炭が特徴で、ウイスキー造りに適した土地です。
厚岸蒸溜所の歩み

アイラへの憧れと敬意からスタートし、一歩ずつ手探りで製造工程を築き上げてきた厚岸蒸溜所の歩みを追ってみましょう。
完全ゼロからのウイスキー製造を開始する
厚岸蒸溜所は製造経験者のいない「完全ゼロ」の状態からウイスキー製造をスタートさせました。彼らはスコットランドの文献や技術者の知識を学ぶだけでなく、トップレベルの企業が行う品質管理を取り入れます。
2013年にはウイスキーの試験熟成を開始し、2016年に蒸留を開始。
厚岸蒸溜所は、徹底した学習と努力でウイスキー製造のすべてをゼロからスタートし、自らの道を切り開いてきたことが分かります。
「多層レイヤー」によるブレンド法にたどり着く
厚岸蒸溜所は、ウイスキー造りにおいて独自のブレンド法「多層レイヤー」を確立しました。
多層レイヤーとは、季節ごとに異なる原酒や樽を組み合わせ、ウイスキーの味や香りに多様な層を重ねる手法です。
この手法により、独自の個性を引き出すことに成功しました。
多層レイヤーによる「厚岸」独自の味わいは、男性だけでなく特に若い女性にも喜ばれるそうです。フルーティーな風味を持ちながらも、豊かなコクと余韻を楽しめるウイスキーとして、高い評価を受けるようになりました。
国内外から高く評価される「厚岸」
厚岸蒸溜所は多彩な種類のウイスキーを世に送り出し、国内外から高い評価を受けています。
2018年には「NEW BORN FOUNDATIONS」のリリースをスタート。
その後も「SARORUNKAMUY」や「二十四節気シリーズ」など独自のウイスキーを発売し、多くは国際的なコンペティションで受賞を果たし、いずれも高品質だと認められました。
二十四節気シリーズ「寒露」のWWA2021最優秀賞、「厚岸ウイスキー SARORUNKAMUY」のSFWSC2020最優秀金賞は、厚岸蒸溜所のクオリティーを証明した一例といってもよいでしょう。
「厚岸」成功の背景には、ウイスキー造りの情熱と試行錯誤を重ねてきた蒸留所の姿勢があります。
「厚岸」のこれから

ウイスキー造りのプロでない者たちが、スコットランドの知識と技術を学びながら、独自のブレンド法を確立した厚岸蒸溜所の挑戦。
彼らは現在も心地よいピートの世界を広める使命感を胸に、独自のウイスキー造りを続けています。
彼らの思いは、「心地よいピートの世界を1人でも多くの人に届けること」。
今後も地域との深いつながりを大切にし、世界でも認められるオリジナルなウイスキーを創造していくことでしょう。
ウイスキー「厚岸」の製造のこだわり

本章では、厚岸蒸溜所のこだわりや技術に迫ります。
厚岸町だからこそ可能な「テロワール」

ウイスキー造りに深く関わる厚岸町の特有の環境と「テロワール」。
「テロワール」とは、特定の地域の気候・土壌・環境などが作物や飲料に与える影響を指しており、その地域ならではの風味や特性を生み出す要因です。
「厚岸」の場合、北海道の大自然から得た大麦、ミズナラ、ピートなどが、独自の風味を生み出しています。使用する二条大麦は涼風品種を栽培しており、収穫からウイスキー造りがスタートしています。
フォーサイス社のポットスチル
厚岸蒸溜所では、本場スコットランドの蒸留機器を採用しています。
採用しているポットスチルはスコットランドのフォーサイス社製。
蒸留機器だけでなく施設の設計すべてをフォーサイス社の職人が手掛けており、スコットランドの本格的なウイスキー製造が再現されています。
ミズナラ樽を採用
ウイスキー「厚岸」はバーボンやシェリー樽などに加え、希少なミズナラ樽も使用しています。ミズナラは希少な木材で、他の樽とは異なる香りや風味をつけるために欠かせません。ミズナラの特有の香りが原酒に調和し、個性的なウイスキーが誕生しています。
また、熟成庫は厚岸湾の近くに位置し、海洋性気候の影響を受けながら熟成が行われます。
清流「ホマカイ川」からの恵み
「ホマカイ川」は蒸留所のそばを流れる清らかな川で、ウイスキーの製造に必要な水を供給します。
ホマカイ川の水は美しい自然環境に育まれたもので、川には貴重な動植物も生息しているそうです。蒸留所のある厚岸町近辺は「厚岸霧多布昆布森国定公園」に指定されており、この土地の豊かな水と自然が大切にされています。
自然からの恩恵を大切にし調和することが、ウイスキー造りへと結びついているのでしょう。
厚岸シングルモルトジャパニーズウイスキー 小暑

- タイプ:シングルモルト
- アルコール度数:55%
- 容量:700mL
- 定価:23,100円(税込)
- 〈香り〉バナナジュース、クリームあんみつ、ソルティレモン
- 〈味わい〉砂糖をかけた柑橘、エディブルフラワー
- 〈余韻〉ミョウガ、出汁醤油、レモン飴、薄煙(うすけむり)
小暑(しょうしょ)は、現在の暦では7月7日~7月22日で、七夕の頃からの約15日間を指します。梅雨明け後、徐々に暑さが増してくる時期を指し、この時期に出すのが「暑中見舞い」。小暑から立秋までの一年でもっとも暑いとされる季節に、お互いをいたわって手紙や物を贈ります。
口に含んだときの柑橘感、独特のどこか懐かしい甘さが魅力の一品です。

厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 立夏

- タイプ:シングルモルトジャパニーズウイスキー
- アルコール度数:55%
- 容量:700mL
- 定価:23,100円(税込)
- 〈香り〉旬の桃、杏子、みかん、黒蜜をかけたきなこ餅
- 〈味わい〉チョコレート、オレンジコンフィ
- 〈余韻〉黒胡椒、日向夏、浜辺の散歩道
立夏(りっか)は暦上では夏の始まりです。 春分と夏至のちょうど中間にあたり、この日から立秋の前日までが夏季となります。
ロピカルフルーツみたいなフルーティー甘味の後にしっかりとピート感、コクも感じられる一品。北海道産の麦芽やミズナラ樽を使用したオール北海道モルトとなっています。

厚岸ブレンデッドウイスキー 霜降

- タイプ:ブレンデッドウイスキー
- アルコール度数:48%
- 容量:700mL
- 定価:16,500円(税込)
- 〈香り〉カサブランカ(ユリ)、みかん畑、柑橘ミックスのシャーベット、ココア、黒糖
- 〈味わい〉様々な色の柑橘、まろやかな塩味
- 〈余韻〉生姜、山椒、はちみつバター、隠れた醤油
霜降(そうこう)とは、 朝晩の冷え込みがさらに増し、風が一層冷たく感じられ、 北国や山里では霜が降りる頃で、暦の上では、秋の最後の節気を指します。
全体的にドライでビター、やや柑橘と黒糖の香りと円やかなスモーキーさを感じる印象がある一品となっております。
厚岸ブレンデッドウイスキー 冬至

- タイプ:ブレンデッドウイスキー
- アルコール度数:48%
- 容量:700mL
- 定価:29,700円(税込)
- 〈香り〉柿のジュレ、砂糖をかけた夏みかん、橙色の柑橘、はちみつ、メロン、ほのかなラベンダー
- 〈味わい〉ピール感の強いマーマレード、ヌガー
- 〈余韻〉おろした生姜、塩飴、よわいピート
「冬至(とうじ)」とは、一年で最も昼の時間が短い日。冬至日は太陽が最も低い位置にあり、夏至とは反対に一年で最も昼が短く、夜が長くなる日。
モルトの優しい味わい。控えめなピートスモークと余韻が心地良い一品です。
厚岸ウイスキー SARORUNKAMUY(サロルンカムイ)

- アルコール度数:55%
- 容量:200mL
- 「サロルンカムイ」の受賞歴
- ISC2021 銀賞
- SFWSC2020 最優秀金賞
- 「サロルンカムイ 海外版」の受賞歴
- WWA2022 シングルモルトウイスキー部門 銅賞
- ISC2021 金賞
- SFWSC2021 最優秀金賞
- 「サロルンカムイ 2021」の受賞歴
- ISC2022 金賞
- SFWSC2022 最優秀金賞
2020年2月に発売された厚岸蒸溜所初のシングルモルト「SARORUNKAMUY」は、3年間の熟成を経て造られています。
「サロルンカムイ」はアイヌ語で「鶴、タンチョウ」を意味しており、道東に生息するタンチョウをモチーフにしているそうです。
バーボン樽、シェリー樽、ミズナラ樽、ワイン樽で熟成したピーテッド原酒とノンピーテッド原酒をヴァッティングし、ライトリーピーテッドな風味に仕上げられています。
「SARORUNKAMUY」は国際的にも高評価を受けており、SFWSC2020で国内版が最優秀金賞に輝くなど、品質の高さが認められています。
シングルモルト カムイウイスキー ® カムイチェップ

- 商品名: 厚岸 シングルモルト カムイウイスキー®カムイチェップ
- 内容量: 700ml
- アルコール度数:53%
- 販売価格: 45,000円(税抜)
- カムイチェップの「受賞歴」
- インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)2025 :【ジャパニーズウイスキー部門】 金賞
- 東京ウイスキー&スピリッツコンペティション2025 :銅賞
「カムイチェップ」とは、アイヌ語で「神の魚」という意味で、鮭のことを表しています。
バーボン樽、シェリー樽、ワイ ン樽、北海道産ミズナラ樽をバッティング後、樽で追加熟成を行ったピーテッドタイプのウイスキーです。
- 〈香り〉オレンジのカスタードタルト,柿のカステラ
- 〈味わい〉柑橘ミックスのサイダー
- 〈余韻〉スパイスチョコレート
厚岸蒸溜所のベストの原酒を用い、ブレンダーが理想とするブレンドを実現した「ブレンダーの情熱」と「魂が詰まった逸品」となっています。

ウイスキー「厚岸」の種類【24節気シリーズ】
厚岸蒸溜所では、日本の二十四節気をテーマにしたウイスキーを中心に製造しています。
日本の四季(春夏秋冬)を6つに分けた「二十四節気」をモチーフとし、約3カ月ごとにリリースされている「二十四節気シリーズ」は、2025年10月時点で20種類が販売済みです。
シリーズ名 | リリース年月 |
---|---|
【第1弾】厚岸 シングルモルトウイスキー 寒露 | 2020年10月 |
【第2弾】厚岸 ブレンデッドウイスキー 雨水 | 2021年2月 |
【第3弾】厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 芒種 | 2021年5月 |
【第4弾】厚岸 ブレンデッドウイスキー 処暑 | 2021年8月 |
【第5弾】厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 立冬 | 2021年11月 |
【第6弾】厚岸 ブレンデッドウイスキー 大寒 | 2022年2月 |
【第7弾】厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 清明 | 2022年5月 |
【第8弾】厚岸 ブレンデッドウイスキー 大暑 | 2022年8月 |
【第9弾】厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 大雪 | 2022年12月 |
【第10弾】厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 啓蟄 | 2023年2月 |
【第11弾】厚岸 ブレンデッドウイスキー 小満 | 2023年5月 |
【第12弾】厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 白露 | 2023年8月 |
【第13弾】厚岸 ブレンデッドウイスキー 小雪 | 2023年11月 |
【第14弾】厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 立春 | 2024年2月 |
【第15弾】厚岸 ブレンデッドウイスキー 穀雨 | 2024年5月 |
【第16弾】厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 小暑 | 2024年8月 |
【第17弾】厚岸 ブレンデッドウイスキー 霜降 | 2024年11月 |
【第18弾】厚岸 ブレンデッドウイスキー 冬至 | 2025年2月 |
【第19弾】厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 立夏 | 2025年5月 |
【第20弾】厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 立秋 | 2025年8月 |
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ウイスキー「厚岸」の主な種類や定価・値段・特徴を解説【二十四節気シリーズ・カムイウイスキー】
2025/10/13 厚岸
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