軽やかな味わいが特徴の「知多」。
ブレンデッドウイスキーの原酒としてのみ製造されていましたが、2015年からシングルグレーンウイスキーとして発売されました。
銘柄としては新しいウイスキーですが、蒸留所は日本のウイスキーの歴史の重要な一翼を担っています。
こだわりの製法や歴史など、魅力がたくさんある「知多」について、わかりやすく解説します。
この記事の監修者
大中 ヨシ
都内勤務のバーテンダー兼ウイスキー専門のwebライター。ウイスキープロフェッショナル資格所有。休日には蒸留所や温泉を巡っています。普段はジャパニーズやスコッチを愛飲。推し蒸留所はキルホーマンです。
「知多」とは
元はブレンデッドの原酒として造られていたウイスキーが、シングルグレーンとして世に出たのが「知多」です。
まずは、「知多」の基本情報を見ていきましょう。
「知多」の発祥の地
愛知県知多市の伊勢湾のすぐそばのサントリー知多蒸溜所で、「知多」は造られます。
知多蒸溜所がある場所は、食品関連の工場が立ち並ぶ、埋立地にある工業地帯です。
ウイスキーの蒸留所というと、豊かな水源や穀物を育てる農場の近くにあるイメージが強いですが、知多蒸溜所は大きく様子が違います。
この場所に建てられている理由は、アメリカから輸入する原料のトウモロコシの輸送船が近くまで来るからです。
また、知多蒸溜所には熟成を行う貯蔵庫がなく、滋賀県にある近江エージングセラーと山梨県の白州蒸溜所に原酒を運んでいます。
知多蒸溜所は、物流面での効率が考えられた、2カ所の貯蔵庫のちょうど中間に位置しているのです。
「知多」名前の由来
「知多」は、名前の通り蒸留所が建つ愛知県知多市の地名に由来があります。
ラベルの文字は、書道家・荻野丹雪(おぎのたんせつ)氏によるもの。
和紙でできた白いラベルは、日本らしさや味わいの軽やかさが表現されています。
知多蒸溜所のグレーン原酒は、サントリーのブレンデッドウイスキー「響」「角」「オールド」に不可欠であり、世界でも評価される銘柄を支えてきました。
「知多」として、グレーン単体でも楽しめるクオリティーのウイスキーが手に入るようになったのは、嬉しいですね。
「知多」の味の特徴
グレーンウイスキーはモルトウイスキーに比べてクセが少なく、「サイレント(寡黙な)スピリッツ」とも呼ばれます。
「知多」も軽くてほのかな甘みが特徴の飲みやすいウイスキーですが、複数のグレーン原酒の組み合わせにより、豊かな味わいを持っています。
そのため、素材を生かした日本食とも合うシングルグレーンウイスキーです。
他の飲みやすいウイスキーについては、以下の記事もぜひお読みください。
「知多」の歴史
「知多」は銘柄としては新しくても、蒸留所には40年の歴史があるだけでなく、日本のウイスキーの歴史とも深い関わりがあります。
「知多」の歴史について、もう少し深堀りしてみましょう。
サントリーの3番目の蒸溜所
知多蒸溜所は、サントリーのブレンデッドウイスキー用のグレーン原酒を製造するために1972年に建てられ、1973年から稼働を開始しました。
サントリーとしては、日本で最初の蒸溜所といわれる山崎蒸溜所、山梨県の白州蒸溜所に続く3番目の蒸溜所です。
工場の設備の増築もあり、1985年からはウイスキー以外のスピリッツの製造も行っています。
蒸溜所内での限定販売だったグレーンウイスキーですが、2015年にはシングルグレーンウイスキーとして「知多」の販売を開始しました。
世界的なコンペティションでの入賞
その後、ドラマ『マッサン』によるウイスキーブームの高まりだけでなく、世界的コンペティションでの入賞も影響して、日本や世界から注目されるウイスキーとなったことも「知多」を語るうえで外せない話題です。
実は、「知多」の全国発売に先駆けて、2014年にシングルグレーンウイスキー「知多蒸溜所(愛知県限定)」が発売されていました。
シングルグレーンウイスキー「知多蒸溜所(愛知県限定)」は、2017年に世界的な品評会「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)」で金賞を受賞を経験。
「知多蒸溜所(愛知県限定)」の受賞に引き続き、2020年の同コンテストにおいて、「知多」も金賞を受賞しました。
「知多」の製法
クセのない味わいが特徴のグレーンウイスキーですが、「知多」の製法には豊かな味わいや香りを生み出すためのこだわりが詰まっています。
「知多」ならではの技術や製法について解説します。
3種類のグレーン原酒の造り分け
知多蒸溜所のグレーンウイスキーの主な原料はトウモロコシです。
トウモロコシと二条大麦で作ったもろみを連続式蒸溜機を使って蒸溜することで、世界でも珍しいクリーン、ミディアム、ヘビータイプの3種類のグレーン原酒を造り分けています。
クリーンタイプは穀物感が薄くクリーンでほのかな甘み、ミディアムタイプは穀物由来の旨味があるマイルドな口当たり、ヘビータイプは強い穀物の香りと豊かな味わいと、それぞれ特徴的です。
この原酒をさらに、ホワイトオーク樽、スパニッシュオーク樽、ワイン樽で熟成させています。
ブレンダーの匠の技
製法の工夫や樽の使い分けでできる多様な原酒は、サントリーのウイスキーを支えてきたブレンダーにより組み合わされます。
グレーン原酒は、樽の個性を反映しやすいといわれており、熟成が進むにつれ、樽の特徴が生きた原酒となっていきます。
繊細なブレンダーの技により、樽ごとの熟成のピークが見極められ、「知多」の軽やかで甘い味わいが生み出されるのです。
原酒の造り分けと多様な樽での熟成、ブレンダーの技術により、世界も注目するシングルグレーンウイスキーが造られています。
「知多」のラインナップ
銘柄「知多」としての歴史は浅く、ラインナップは少なめですが、入手困難な限定商品などもあります。
それぞれの特徴や販売情報を見てみましょう。
「知多」
・アルコール度数:43%
・容量:700mL
・希望小売価格:4,000円(税別)
2015年に販売が始まった、「知多」のスタンダードボトルです。
3種の原酒の造り分けにより、「サイレントスピリッツ」と呼ばれるほど個性が少ないグレーンウイスキーに、豊かな風味を持たせています。
梨や青リンゴのような香り、穀物のほのかな甘み、わずかに感じるウッディーな余韻が特徴。
ハイボールがおすすめの飲み方とされていますが、ロックや水割りでもおいしく飲める銘柄です。
700mLの他に、350mL、180mLボトルでの販売もあります。
小さいボトルは、少し試してみたいときや、プレゼント用にもぴったりですね。
ふるさと納税でも入手可能
「知多」は、ふるさと納税でも入手できます。
愛知県知多市への2万円の寄附で、700mLボトル1本とプラスアルファのオマケがセットになった返礼品がもらえます。
確定申告やワンストップ特例制度で手続きをすれば、実質2,000円で入手できるので大変お得です。
※寄附申込みのタイミングによって内容に変更があるようです。ご注意ください
「知多」以外に、ふるさと納税で入手できるウイスキーは、以下の記事でも紹介しています。
「知多蒸溜所 シングルグレーンウイスキー」※入手困難
・アルコール度数:43%
・容量:700mL
「知多」が発売される前に、2014年に愛知県限定で発売されたシングルグレーンウイスキーです。
スタンダードボトルの「知多」と比較すると、濃厚な味わい。
穀物の甘みに加えて、レーズンなどのドライフルーツの甘みや、バニラやココアの風味を感じられます。
限定販売であったため、現在では入手が難しくなっているようです。
「エッセンス・オブ・サントリーウイスキー シングルグレーンウイスキー知多蒸溜所 ワイン樽4年後熟」※入手困難
・アルコール度数:49%
・容量:500mL
サントリーの「エッセンス・オブ・サントリーウイスキー」シリーズのひとつで、2018年にリリースされました。
ミディアムタイプのグレーン原酒をホワイトオーク樽で12年以上熟成させた後、ボルドーの赤ワインに使用された樽で4年間、後熟させたウイスキーです。
クセのないグレーン原酒により、ワイン樽の特徴がよく反映された銘柄といえます。
杏や干し柿のような甘い香り、とろみのあるプラムのような味わい、カカオのほろ苦い余韻が特徴です。
数量限定販売のため、本銘柄も入手が難しくなっています。
バーなどでもし見かけたら、ぜひ試してみてください。
「知多」の飲み方
クセがなく飲みやすい「知多」。
3種類の原酒から生み出される味わいを楽しむ、おすすめの飲み方を紹介します。
おすすめはハイボール
一番のおすすめはやはりハイボール。
サントリーの公式ホームページでも、ハイボールをすすめています。
ハイボールにすることで、熟成感を残しつつより軽やかな飲み口に。
食事にも合うので、食中酒としてもおすすめです。
他にも、現役バーテンダーがすすめるジャパニーズウイスキーがあります。
詳しくは、以下の記事に掲載していますので参考にしてみてください。
香りを添えたアレンジもおすすめ
ハイボールにするとより爽やかになる「知多」ですが、樽の香りが意外と強く感じられるかもしれません。
そんなときは、香りのよいフルーツやハーブを添えたアレンジを試してみてください。
ミントやライムとも合いますし、すだちや生姜、山椒をプラスするのもおすすめです。
より和食に合うハイボールになりそうですね。
参考:https://www.suntory.co.jp/whisky/chita/enjoy/
毎日飲むには高価格の場合も
ストレートやロック・ハイボールなど「知多」はさまざまな飲み方ができますが、気になるのは価格という方もいるのではないでしょうか。
「知多」は、700mLあたり4,000円と、他のジャパニーズウイスキーと比べてもやや高額です。
人によって、毎日飲むには少しためらう金額かもしれません。
公式サイトではハイボールにすることが推奨されているものの『「知多」の減り具合が気になって高価に感じるかも』、という方は、ストレートやロックで味わうことで、ゆっくり長い時間をかけて「知多」が楽しめます。
毎日気軽に飲めるウイスキーについては、以下のコスパの良いウイスキーの記事も参考にしてみてください。
ウイスキー「知多」はなくなる?終了?ウワサは本当か
ドラマのヒットや、世界的なコンペティションでの受賞など、注目が高まっているジャパニーズウイスキー。
原酒不足などから、入手困難な銘柄も出ています。
そんな中、「知多」も生産終了になるのでは、というウワサがあるため、Whiskeen編集部で販売状況などを独自に調べてみました。
終売・休売ではないが過去に値上げあり
現在、「知多」が生産終了や休売になるという話はないようです。
しかし、一部筋によれば、2022年11月から「知多」にも出荷の調整がかかるようになったのだとか。
供給量が追いつかず品薄になっていることや、2021年、増産に向けサントリーが「知多」の希望小売価格を上げると発表したこともあるため、今後「知多」と出合う確率が減るのは間違いないでしょう。
Whiskeen編集部でも引き続き「知多」の動向をチェックして行く予定です。
なお、希望小売価格の値上げにより、700mLボトルは3,800円から4,000円となり、5%値上げされています。
現在の販売状況と今後の予想
前述の通り、出荷調整の影響で入手しにくい状態は続くと考えられます。
ただし、コンビニでは180mLのミニボトルを購入できる場合もありますし、Amazonでは「白州」と「碧」との3本飲み比べセットもあります。
気軽に買うには少し高いウイスキーですが、スタンダードボトルは2023年1月時点で入手困難というわけではありません。
コンビニで買えるミニボトルを発見した方は、まず試してみてはいかがでしょうか。
空港免税店など海外で見つかる場合も
「知多」は、空港免税店や海外のスーパーで見つかることもあるようです。
実際に海外在住の編集部員が「知多」を発見しています。
海外でも人気のジャパニーズウイスキーは、お土産にも喜ばれるのかもしれません。
海外に行く機会があれば、免税店でウイスキーコーナーを覗いてみるのもよいですね。
最後に
長くサントリーのブレンデッドウイスキーを支えてきた知多蒸溜所のグレーンウイスキー。
「知多」としての歴史は浅いですが、3種の原酒を組み合わせた豊かな味わいは、長年培われた知識と技術の賜物だといえます。
2023年1月時点では「知多」のミニボトルや「知多」を含む飲み比べセットなどでも販売されているため、容量も必要に応じて選択できるのが嬉しいですね。
本記事を参考に、いろいろな楽しみ方ができる日本のシングルグレーン「知多」を、ぜひ試してみてください。