ウイスキーの聖地と呼ばれるアイラ島。
ここで造られるウイスキーは「アイラウイスキー」と呼ばれ、スコッチのひとつとしてウイスキー愛好家の関心を集めています。
今回ご紹介する「ブナハーブン」は、アイラウイスキーの中でもクセのない銘柄です。
アイラウイスキー初心者にもオススメの銘柄についてご紹介します。
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「ブナハーブン」とは
インパクトのあるピート香、スモーキーな香りが特徴のアイラウイスキー。
クセの強さから好き嫌いの別れるウイスキーですが、その中でも飲みやすさに定評があるのが、今回ご紹介する「ブナハーブン」です。
最初に「ブナハーブン」の特徴や、多様な銘柄について解説していきます。
「ブナハーブン」製造場所
「ブナハーブン」は、スコッチの聖地といわれるアイラ島の「ブナハーブン蒸溜所」で製造されています。
「ブナハーブン」は、ゲール語で「河口」という意味。
その名のとおり、ブナハーブン蒸溜所はアイラ島の海岸の河口近くに位置しています。
ビジターセンターもあり、蒸溜所が見学できるほか、限定銘柄も購入可能です。
「ブナハーブン」の歴史
1881年にウィリアム・ロバートソンによって「ブナハーブン蒸溜所」は創設され、1883年に最初の蒸溜が行われました。
創設から140年の歴史がありますが、アイラ島に昔からあるアードベッグ蒸溜所(1798年)やラガブーリン蒸溜所(1816年)、ラフロイグ蒸溜所(1815年)のほうが歴史が古いため、アイラ島の蒸溜所としては若い部類に入ります。
創設から度重なるオーナーの変更を経て、現在は南アフリカのディスティル社が所有、日本ではアサヒビール社が販売しています。
ブナハーブン蒸溜所は、かつてはブレンデッド用の原酒のみを製造していました。
やがて1960年代のウイスキーブームを受け、原酒の製造のみでは生き残りは難しいと考えてシングルモルトの製造に力を入れるように。
ノンピートのウイスキーという、アイラでは異色のウイスキーの製造を始めます。
1979年にはノンピートのシングルモルトの販売を開始し、他のアイラウイスキーとは異なる飲みやすさで注目されました。
需要過多による一時的な休業に追い込まれた時期もありましたが、1980年代後半にはシングルモルトのブランドとしての地位を確立。
1997年にはピート仕様のウイスキーも製造し、現在はピートとノンピートの2つのウイスキーを造っています。
参考:Bunnahabhain
飲みやすいアイラウイスキー「ブナハーブン」の特徴3つ
他のアイラウイスキーに比べると歴史が浅いにもかかわらず、「ブナハーブン」が注目される理由はこだわりの製法にあります。
製法や味わいなど「ブナハーブン」の特徴3つを解説します。
1.アイラ島のピートの影響を受けない仕込み水
アイラ島の4分の1は、ピートと呼ばれる泥炭(でいたん)に覆われています。
通常のアイラウイスキーは、この地層を通ってピートの影響を受けた水を使っているため、ピートを焚いていなくてもピート香があるのが特徴です。
しかし「ブナハーブン」のノンピートのウイスキーは、ピートの影響を受けないよう、アイラ島北西の川の上流部の水をパイプで引いています。
地下のパイプで河川上流部の水を直接蒸溜所に運ぶことで、他のアイラウイスキーにはない柔らかな味わいを出しているのです。
2.大麦の長時間発酵を行うこだわりの製法
「ブナハーブン」は品質の高いオプティック種の大麦を使用していますが、特徴は60〜80時間におよぶ長時間の発酵。
これは、同じく長時間の発酵で知られる「ボウモア」の48〜62時間を超えます。
スコットランド最大規模のウォッシュスチル(初溜釜)で蒸溜され、その後スピリッツスチル(再溜釜)で再蒸溜。
蒸溜後のアルコール度数は70%前後で、アイラウイスキーの中でも高い度数です。
この原酒に、前述したピートの影響が少ない仕込み水を加えてアルコール度数を63.5%まで落とし、シェリー樽やバーボン樽で熟成すれば「ブナハーブン」が完成します。
3.アイラウイスキー初心者にもオススメの飲みやすさ
「ブナハーブン」の味わいの大きな特徴は、飲みやすさです。
通常のアイラウイスキーが持つ薬品のような香りやピート香がなく、ほのかな潮の香りとレモンのような味わい、かすかなスモーキー感があります。
クセの強さからアイラウイスキーにチャレンジできなかった初心者の方にも、挑戦しやすい銘柄といえます。
代表的な「ブナハーブン」のラインナップ
多数の銘柄や、ピートとノンピート2種類のスタイルが魅力の「ブナハーブン」。
まずは、日本で購入可能な7銘柄をご紹介します。
ブナハーブン12年
アルコール度数:46.3%
1979年最初にリリースされたのが、この「ブナハーブン12年」。
スモーキーさはほとんどないクセのない味わいで、ドライレーズン、カカオのような香りが特徴です。
冷却して不純物を取り除くチルフィルターを行わないため、樽熟成本来の味わいを楽しめます。
ブナハーブン18年
アルコール度数:46.3%
熟成年数18年以上の原酒を、シェリー樽熟成約40%・バーボン樽熟成約60%の割合でヴァッティングして造られます。
他の銘柄よりもシェリー樽熟成原酒の割合が多いことから、フルーティで甘い香りが特徴です。
ドライフルーツとタフィーの香り、ハチミツとほのかな塩気を感じる味わい。
ブナハーブン25年
アルコール度数:46.3%
25年もの熟成期間を経て造られたシングルモルト。
なめらかでキャラメル、クリーム、ベリーのような甘みのある味わい、シェリーの香りが特徴的です。
ブナハーブン30年
アルコール度数:46.3%
シェリー樽熟成の30年もののシングルモルトです。
ノンチルフィルターで、自然な色合いと原酒本来の味わいが魅力。
ノンピートながら、凝縮された甘みのある柔らかさが特徴です。
ブナハーブン40年
アルコール度数:41.9%
「ブナハーブン」では熟成期間が最も長いシングルモルトです。
トロピカルフルーツ、ベリー、タフィーから、バニラ、ローストされたナッツへと味わいが変化します。
ブナハーブン トチェック ア ガー
アルコール度数:46.3%
こちらはピート香を感じるアイラウイスキーらしい1本です。
トチェックはゲール語で「煙(スモーキー)」、ア ガーは「2」を意味します。
レーズンとスパイシーなピートの香りが特徴。
ドライフルーツとイチジクの甘みと、スモーキーな余韻が感じられます。
ブナハーブン ステュウラーダー
アルコール度数:46.3%
「操舵手」の意味を持つ「ステュウラーダー」。
シェリー熟成直後の樽であるファーストフィルと、2回目の熟成樽セカンドフィルで12年間熟成されています。
ドライでスパイシー、潮を感じる味わいです。
ちなみに「ブナハーブン ステュウラーダー」は、2018年に「The Scotch Whisky Masters」で金賞を受賞しています。
参考:https://bunnahabhain.com/collections/core-range
レア・入手困難な「ブナハーブン」
限定ボトル各種
「ブナハーブン」にはアイラ島のビジターセンター、もしくは公式サイトのみの限定銘柄もあります。
2022年のアイラ島のウイスキーのお祭り「アイラフェスティバル」では、祭典を記念して以下の4銘柄を発表しています。
- 「アバイン アライグ」
- 「カルヴァドス カスク フィニッシュ1998」
- 「モイン(モアンヌ) トカイ フィニッシュ2004」
- 「ブナハーブン オロロソ カスク フィニッシュ1989」
通常の「ブナハーブン」のラインナップを楽しんだら、限定銘柄を楽しむのもいいですね。
- ブナハーブン アバリン アライグ ※2022年限定ボトル
- ブナハーブン カルヴァドス カスク フィニッシュ1998 ※2022年限定ボトル
- ブナハーブン モイン(モアンヌ) トカイ フィニッシュ2004 ※2022年限定ボトル
- ブナハーブン オロロソ カスク フィニッシュ1989 ※2022年限定ボトル
- ブナハーブン モイン(モアンヌ) ペドロ ヒメネス カスク フィニッシュ
- ブナハーブン マチュレーション ウェアハウス カスク
- ブナハーブン ニュー アクインタンス 34年
- ブナハーブン モイン(モアンヌ) ソーテルヌ フィニッシュ 16年
- ブナハーブン ウェアハウス9 Px Noe カスク559 17年
- ブナハーブン ウェアハウス9 オロロソ ホグズヘッド カスク100761
- ブナハーブン マチュレーション ウェアハウス オロロソ ホグズヘッド2015
- ブナハーブン マチュレーション ウェアハウス アモンティリャード1999 21年
- ブナハーブン カスク ストレングス 12年 2021エディション
- ブナハーブン モイン(モアンヌ) ボルドー フィニッシュ 8年
- ブナハーブン アオナド シングルモルト 10年
- ブナハーブン モイン(モアンヌ) ブランデー カスク フィニッシュ2004
- ブナハーブン スパニッシュオーク フィニッシュ
- ブナハーブン カナスタ1980
参考:Distillery Exclusive Whisky | Bunnahabhain
参考:Limited Edition Whisky | Bunnahabhain
免税店限定ボトル
飛行機の国際線の機内販売や、免税店の限定ボトルもご紹介します。
海外に行かれる際は、ショップをチェックしてみるのも楽しそうですね。
- ブナハーブン クラック モナ
- ブナハーブン エリー ナ グレーネ
- ブナハーブン アン クラダック
参考:Travel Retail Whisky | Bunnahabhain
ブナハーブン モイン(モアンヌ)※入手困難
アルコール度数:46.3%
ピート香の少ない飲みやすさで有名な「ブナハーブン」ですが、ピートの香りがしっかり感じられるのが「モイン(モアンヌ)」です。
「モイン(モアンヌ)」はゲール語で「泥炭」の意味。
その名のとおり、スモーキーなピートの香りと、バニラの甘みのある後味が特徴です。
創業当時のピーティなブナハーブンを再現するために制作された、ノンエイジの銘柄です。
現在は入手困難な銘柄となっています。
ブレンデッドウイスキー「ブラックボトル」
アルコール度数:40%
「ブナハーブン」が手掛けるブレンデッドウイスキーです。
キーモルトはもちろん「ブナハーブン」。
他に、「トバモリー」「レダイグ」「ディーンストン」など、アイラモルトやアイランズモルトがブレンドされています。
フレッシュな切り立てのオーク、スモーキーな香り、甘くフルーティでピートを感じる味わいの1本。
参考:Black Bottle
「ブナハーブン」おすすめの飲み方
飲みやすい「ブナハーブン」はぜひストレートで
アイラウイスキーの中でもピート香が少ない「ブナハーブン」は、ぜひストレートで味わってみてください。
もし、渋さを感じる場合は水割りにすると、気にならなくなります。
また、20年以上熟成された銘柄は、樽の影響からえぐみを感じることもあります。
その場合は、開栓後少し時間を置いてから飲むのも、おすすめです。
「ブナハーブン12年」はロックでも
「ブナハーブン12年」は、氷でしっかり冷やすと違った魅力が味わえます。
ロックで飲むとライトな口当たり、フルーティな味わいを感じやすくなるので、ぜひ試してみてください。
まとめ
アイラウイスキーの中では珍しい、ノンピートの銘柄を多く持つ「ブナハーブン」。
飲み比べやコレクションをしても楽しめそうな、多数の限定銘柄も特徴的です。
創業当時の「ブナハーブン」を感じられる銘柄も魅力ですね。
あなたも「ブナハーブン」から、アイラウイスキーの扉を開いてみてはいかがでしょうか。