アイリッシュウイスキーの中で長きにわたり売上No.1をキープしている銘柄といえば「ジェムソン・アイリッシュ・ウイスキー」、通称「ジェムソン」です。
日本でもメジャーな存在ですね。
この記事では「ジェムソン」の特徴、種類、価格、そして各アーティストとの限定ボトルについてご紹介します。
また、「ジェムソン」を飲んだことがない方の参考になればと、筆者の試飲レビューを載せています。
ウイスキー愛好家の筆者だからこそ書ける、忖度なしの評価です。
ぜひ最後までお付き合いください。
この記事の監修者

人気No.1アイリッシュウイスキー「ジェムソン」とは
「ジェムソン」は、200年以上の歴史を誇る伝統的なアイリッシュウイスキーブランドです。
名前の似た「アイラモルト」や「アイランズモルト」と混同してしまうという方は、まず5大ウイスキーについての記事を読むと情報が整理しやすいので、おすすめです。
「ジェムソン」は、地元アイルランドで人気なだけではありません。
イギリスのブランドコンサルティング企業『Brand Finance』社の最新の調査によると、全蒸留酒売上ランキングで堂々の第20位にランクインしています。
参考:https://brandirectory.com/download-report/brand-finance-alcoholic-drinks-2022-preview.pdf
もちろんアイリッシュウイスキーの中では売上第1位。
そんな、世界中で愛飲されている「ジェムソン」の基本データは以下の通りです。
種類 | アイリッシュ/ブレンデッドウイスキー |
原料 | モルト、未発芽の大麦、グレーン |
ピートの有無 | なし |
販売元 | アイリッシュ・ディスティラーズ(親会社:ペルノ・リカール) |
ここからは、歴史や製造方法をご紹介します。
時代とともに歩んだ「ジェムソン」の歴史

「ジェムソン」の歴史は、1780年創業のボウ・ストリート蒸留所から始まります。
ボウ・ストリート蒸留所はダブリンの中心地にあり、当時ダブリンは100を超える醸造所や蒸留所が存在するほど活気のある街でした。
1786年、スコットランド出身のジョン・ジェムソン氏が蒸留所のゼネラルマネージャーに就任。
やがてジョン・ジェムソン氏は蒸留所の所有権を取得し、事業を拡大していきました。
豆知識
ジョン・ジェムソン氏はスコットランドで弁護士として活動していました。
ウイスキーには縁がなかったのですが、ウイスキー界のレジェンドであるジョン・ヘイグ氏(世界初のグレーンウイスキーを製造したキャメロンブリッジ蒸留所の創設者)の娘と結婚したことにより人生が変わります。
ヘイグ家の親戚がボウ・ストリート蒸留所を所有しており、ジョン・ジェムソン氏は新たなビジネスにチャレンジするためにアイルランドへ移住。
そこで蒸留所の経営に携わりました。
1810年、John Jameson & Son社を設立(1891年に法人化)。
ウイスキー事業は3代目ジョン・ジェムソンの時代に大躍進を遂げ、1880年代には年間約450万Lを生産するまでに成長します。
これは世界でもトップクラスの生産量。
アイルランド最大、かつ世界最大のウイスキー蒸留所の1 つとなりました。
しかし1920年代以降、アイリッシュウイスキー全体が衰退していきます。
その理由として考えられるのが、以下の3つです。
- アイルランド国内での禁酒運動
- アイルランド独立戦争
- アメリカでの禁酒法
これらが原因でアイルランドの蒸留所は次々と閉鎖。
試練の時代を生き抜いた蒸留所は「ジェムソン」を含むごく少数の蒸留所だけでした。
1966年、当社はコーク・ディスティラリーズとジョンパワーズとの合併を決定。
現在のアイリッシュ・ディスティラーズが設立されました。
ボウ・ストリート蒸留所は1970年に最後の蒸留を終え、1972年に閉鎖。
現在、「ジェムソン」はコーク市のミドルトン蒸留所で生産されています。
ボウ・ストリート蒸留所は現在、博物館として多くの観光客が訪れる人気スポットとなっています。
「ジェムソン」の伝統的な製造方法

「ジェムソン」はポットスチルウイスキーと、グレーンウイスキーをブレンドして造られているブレンデッドウイスキーです。
ポットスチルウイスキーの原料は大麦麦芽と未発芽の大麦で、アイルランドの伝統的製法である3回蒸留によって製造されています。
昔ながらの大きなポットスチルを使った3回蒸留にこだわりを持っているのです。
さらに、グレーンウイスキーも連続式蒸留器によって3回蒸留されています。
「ジェムソン」の製造に使われている大麦は、全てアイルランド産でミドルトンから100マイル以内で育ったもの。
水は蒸留所の敷地を流れるダンガーニ川から供給するなど、地元の原料を使用しているのも特徴です。
「ジェムソン」の特徴

「ジェムソン」は、数あるウイスキーの中でもトップクラスで飲みやすい銘柄です。
その秘密は蒸留方法と樽熟成にありました。
こだわりの3回蒸溜
「ジェムソン」は、ブレンドしているポットスチルウイルキーのみならず、グレーンウイスキーも3回蒸留しているのが大きな特徴です。
これによって生まれるライトな酒質とオイリーでなめらかな質感は、誰もが好きになってしまうような飲み心地です。
また、ジンジャーエールやライム、レモンやオレンジなどを加えて、さまざまなアレンジができるのも魅力の一つです。
世界中で売れている理由は、クセがなくスムースな味わいにあるかもしれません。
3年以上の熟成
ウイスキー「ジェムソン」は3年以上の樽熟成を行います。
ボトリングまで同じ蒸留所内で行うことも、「ジェムソン」のこだわりです。
【忖度なし】ジェムソンを実際に飲んでみた評価・感想
今回筆者は、一番スタンダードなタイプを飲んでみました。
購入場所
近所のイオンモールのリカーコーナーで購入。
購入当時は、グラス付きで1,750円とお買い得でした。
まずはストレートで

青リンゴのような香りがしておいしそうです。
口に含むとナッツのような香ばしさと、舌にねっとりと絡みつくオイリーさを感じます。
なのに余韻はほぼなし。すっと消えていきます。
ストレートでは少々物足りなさを感じます。
筆者の評価
星1.5個(5点満点中)
公式サイトおすすめのソーダ割り

公式サイトに載っている「ジェムソン・ソーダ」を試してみました。
ストレートと比べてより香りが爽やかに。
甘さが消え、よりすっきりとした味わいになりました。
なめらかさは相変わらず残っているので、天ぷらや、アサリのバター炒めなどと相性がよさそうです。
筆者の評価
星2.5個(5点満点中)
裏技フリージングウイスキー
「ジェムソン」を冷凍庫で保存し、トロトロになった状態でハイボールにするとおいしかったです。
香りはさっぱりとしたフルーツ感。味はスパイシーさが目立ちます。
評価
星3個(5点満点中)
筆者はウイスキーのほか、ビールも好きです。
休日は昼から飲みたいのですが、ビールの飲みすぎによる糖質過多が気になります。
そんなときは、フリージングウイスキーでつくるハイボールをビール代わりに飲むようにしています。
氷点下レベルまで冷やすことで、アルコールの強さと甘さが軽減されるのです。
それでいて、「ジェムソン」の個性であるなめらかさが増します。
「ジェムソン」は冷凍保存向きだと思います。
「糖質制限してるけど、昼から飲みたいなあ」という方は、ぜひ試してみてください。
冷凍保存は自己責任で行ってください
結論
「ジェムソン」スタンダードボトルはハイボール向け。
炭酸で割ると爽やかな香り、甘み、渋み、オイリー感のバランスが整って、スイスイ飲めます。
優しい味わいで、デイリーウイスキーとして活躍します。
また、カクテルベースにしてライムを絞ったり、コーラやジンジャーエールで割ってもおいしいでしょう。
ジェムソンウイスキーの種類
現在公式サイトで取り扱いがある種類をご紹介します。
ジェムソン スタンダード

アルコール度数 | 40% |
容量 | 700mL (※他、350mL、1000mL) |
参考小売価格(税込) | 2,278円 |
一番流通しているスタンダードなボトルです。
こだわりの3回蒸留のなめらかさを体感するには、まずはこのスタンダードから試してみてください。
おすすめの飲み方はハイボールです。
食中酒として天ぷら、コロッケなど揚げ物との相性が抜群です。

ジェムソン スタウトエディション

アルコール度数 | 40% |
容量 | 700mL |
参考小売価格(税込) | 2,750円 |
地元のエイト・D・ブリュワリーというクラフトビールの醸造所とのコラボレーションで生まれたウイスキーです。
「スタウト」とはローストした大麦を使用して造る黒ビールの一種で、香ばしい香り、チョコレート、コーヒーのような風味が特徴です。
「ジェムソン スタウトエディション」は、まず「ジェムソン」ウイスキーの熟成に使用した樽を醸造所に貸し、その樽でスタウトを熟成。
その後、樽を返却してもらい、「ジェムソン」のフィニッシュ(後熟)に使用。
ビール熟成樽由来の風味を付ける、ユニークな製法です。
香りは、干し草、青リンゴ、香ばしさ、ほんのりチョコレート。
味わいは、ナッツやスタウト樽由来のかすかなホップの風味を感じます。
飲みごたえがあり、長く続く余韻が特徴です。
おすすめの飲み方はロックです。
チョコレートやナッツと合わせてみてください。

ジェムソン ブラック・バレル

アルコール度数 | 40% |
容量 | 700mL |
参考小売価格(税込) | 3,567円 |
ピュアポットスチルウイスキーと、年に一度しか蒸留されないスモールバッチ(少量生産)のグレーンウイスキーを使用し、バーボン樽とシェリー樽で熟成させたウイスキー。
使用するバーボン樽は、内側を強く焦がすチャーリングを2回行った黒こげの樽。
通称ブラックバレルで熟成させています。
樽の内側を焦がすことで木材の香りが抑えられ、代わりにアーモンドやバニラの香りが強くなるのです。
熟練の技術を持った樽職人(マスタークーパー)が、熟練の技でチャーリングを施しています。
香りは、樽由来のバニラや洋菓子、その奥から洋ナシのようなフルーティ感。
味わいは、スパイシーさとバニラの甘さをしっかりと感じられます。
その甘さも、最後はすっきりとしています。
おすすめの飲み方はストレート。
ケーキなどのスイーツとも好相性です。

ジェムソン ボウ・ストリート18年
アルコール度数 | 55.3% |
容量 | 700mL |
参考小売価格(税込) | 18,225円 |
「ジェムソンの歴史」でご紹介したボウ・ストリート旧蒸留所のオマージュとして造られた限定品です。
まず、現在のミドルトン蒸留所で3回蒸留、その後厳選したヨーロピアンオーク樽とアメリカンオーク樽で18年以上熟成した3種の希少なウイスキーをブレンド。
それを「ジェムソン」の故郷である、ボウ・ストリート旧蒸留所のファーストフィル(初めてウイスキーを熟成させる樽のこと)バーボン樽でフィニッシュ。
ボウ・ストリート旧蒸留所で仕上げた、カスクストレングスです。
カスクストレングスとは、加水などの調整をせずに樽から直接瓶詰めすることで、こだわり抜いた1本です。
香りは、木を強く感じます。
深いバターや砂糖のような甘み、スパイス。
味わいは、甘み、樽由来のスパイシーさ、ナッツ、プルーンと、熟成期間が長いため複雑に絡み合います。
余韻も長く、ずっしりとした飲みごたえです。
おすすめの飲み方はストレートです。
じっくりと味わいながら、「ジェムソン」の長い歴史に思いをはせてみてはいかがでしょうか。

「ジェムソン」限定ボトルではアーティストとのコラボも
「ジェムソン」は2018年から日本限定ラベルでのデザインボトルを販売しています。
1つの国のためだけにラベルデザインを開発しているのは、なんと日本市場のみ。
最新のデザインからご紹介します。
ジェムソン ジャパン リミテッドシリーズ
ジェムソン ジャパン リミテッド 2022
第4弾日本限定デザインラベルはシンガーソングライターSIRUPとのコラボレーションで、限定デザインボトルが数量限定で発売されました。
SIRUPがデザイン監修、SIRUPと親交があるアーティストKentaro Okawaraがデザインしたこのボトルのテーマは「Journey – 旅 –」。
人と人とのつながりが表現されています。
大切な人たちと、乾杯したくなるデザインです。

ジェムソン ジャパン リミテッド 2021
第3弾はアイルランド出身のデザイナー、デビッド・マクミラン氏による限定ボトルです。
「つながり」をテーマに「日本の居酒屋」が描かれており、日本の文化にオマージュを込めてデザインされたそうです。
ジェムソン 東京 リミテッド
第2弾は大人気ブランド「PUNK DRUNKERS」のデザイナー、「親方」による限定ボトルです。
「東京」と漢字表記されていたり、カタカナで「ジェムソン」とデザインされていたりと、遊び心が満載です。
ジェムソン ジャパン リミテッド 2018
日本限定ラベルの記念すべき第1弾は、アーティスト「YU SUDA」とのコラボレーションボトルです。
「家族、兄弟、友人との絆」「受け継がれる伝統」といった「ジェムソン」が重んじるブランドの精神が、日本的なデザインで表現されています。

セント・パトリックス・デー リミテッドシリーズ
アイルランドにキリスト教を広めた聖人、セント・パトリック氏の命日である3月17日には、テーマカラーである緑色の服を身につけて、緑色のビールを飲み、町中でパレードをします。
そんな「セント・パトリックス・デー」を祝う限定デザインボトルが、「セント・パトリックス・デー リミテッドシリーズ」です。
日本でも取り扱いが確認できたボトルをご紹介します。
ジェムソン セント・パトリックス・デー リミテッド 2020
シリーズ第8弾となる2020年版をデザインしたのは、アイルランド出身のステファン・ヘファナン氏。
セント・パトリックス・デーを気の合う仲間と一緒に祝おう、というメッセージが込められています

ジェムソン セント・パトリックス・デー リミテッド 2018
シリーズ第7弾となる2018年版は、初の試みとして3人のアイルランド人アーティストによる共同プロジェクトで誕生しました。
イラストレーターのクロディーヌ・オサリヴァン氏をリーダーに、フォトグラファーのレオン・ウォード氏とデザイナーのアレックス・メロン氏が参加しています。
最後に
不動の人気No.1アイリッシュウイスキー「ジェムソン」についてまとめました。
「ジェムソン」のラベルを見ると、ジェムソン家の紋章の下に「SINEMETU」という文言があります。
これはラテン語で「我に恐れるものなし」という勇者の言葉であり、ジェムソン家の家訓。
巨大ブランド「ジェムソン」にふさわしい家訓ですね。
「ジェムソン」は創業200年以上の老舗のブランドでありながら、若手アーティストとコラボレーションするなど、常に挑戦を続けています。
飲みやすいだけでなく、このような企業戦略も、世界中の人から愛される理由かもしれませんね。
ぜひ皆さんも「ジェムソン」を試してみてください。