アメリカの対岸で誕生したカナディアンウイスキー「カナディアンクラブ」。
アメリカの禁酒法を乗り越えた、先見の明を持つハイラム・ウォーカーによって生み出され、ジェントルメン(=紳士)を始め、世界中を魅了したウイスキーです。
誕生の歴史も把握すると、「カナディアンクラブ」がより味わい深くなります。
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ウイスキー「カナディアンクラブ」とは?
世界5大ウイスキーのひとつに、カナディアンウイスキーがあります。
カナディアンウイスキーの代表的な銘柄のひとつが、「カナディアンクラブ」です。
アメリカを中心に人気があり、150以上の国でも親しまれているウイスキー「カナディアンクラブ」。名前の由来や、バーボンやスコッチとは異なる味わいについて解説します。
名前の由来
「カナディアンクラブ」は、「Canadian Club」のつづりから「C.C.」の愛称で親しまれています。
名前は、1858年当時のアメリカ東部の紳士の社交場に由来しています。
創業者のハイラム・ウォーカーが当時製造していたウイスキーは、スコッチやバーボン・ライウイスキー・アイリッシュにはない爽やかな味わいでした。
彼の造ったウイスキーは、次第に洗練された品格のあるウイスキーとして社交場「ジェントルメンズクラブ」で人気を博しました。
このことから、ハイラム・ウォーカーは銘柄を「クラブ・ウイスキー」と命名します。
1890年、アメリカ産とカナダ産のウイスキーを明確に区別する法律がアメリカで制定されたことに伴い、「クラブ・ウイスキー」は「カナディアンクラブ」に名称変更されました。
詳細については後述します。
「カナディアンクラブ」の味わい
「カナディアンクラブ」はライ麦が原料の原酒と、その他の穀物のグレーンウイスキーがブレンドされており、シャープな味わいと、ほのかな甘みのあるウイスキーです。
ウイスキー初心者にもおすすめの飲みやすさで、熟成期間が長くなると、甘みやスパイシーさが増し、より複雑な味わいになります。
ロックやハイボールなど、さまざまな飲み方ができるウイスキーです。
「カナディアンクラブ」の歴史
「カナディアンクラブ」には、カナディアンウイスキーの代表的な銘柄と呼ばれるにふさわしい、長い歴史があります。
確かな品質により、世界での人気を確立してきたその歴史を解説します。
創業者はハイラム・ウォーカー
「カナディアンクラブ」を生み出したのは、「カナディアンテイストの創始者」といわれた、ハイラム・ウォーカーです。
1856年、ウォーカーはカナダ・オンタリオ州ウィンザーの地に蒸留所を建設しました。
蒸留所のあるオンタリオ州ウィンザーは清らかで豊富な水脈と自然、材料となる穀倉地帯にも恵まれており、ウイスキー造りには最適な環境です。
デトロイト川を挟んだ対岸には大消費地のアメリカがあり、商圏的にも有利な環境にあります。
「カナディアンクラブ」の前身「クラブ・ウイスキー」
前項の名前の由来でも触れた通り、ハイラム・ウォーカーが造ったウイスキーは、他国のウイスキーと一線を画した品格のある味わいで、紳士の社交場「ジェントルメンズクラブ」で人気となりました。
そこでウォーカーは、ウイスキーを「クラブ・ウイスキー」と名付けます。
カナディアンウイスキーとしては、初めてブランドの名を冠した銘柄となりました。
「クラブ・ウイスキー」は高い評価を受け、カナダのウイスキー事業者へ大きな影響を与えることに。
現在に続くカナディアンウイスキーの香味や爽快なテイストの原点といえるでしょう。
これは、「プレ・ブレンディング」と呼び、樽熟成前に原酒をブレンドする製法に由来しています。
ハイラム・ウォーカーの名付けた「クラブ・ウイスキー」の人気があまりにも高かったことから、アメリカの蒸留業界が脅威と判断し、アメリカ政府に対してアメリカ産とカナダ産を明確に区別するよう求めました。
区別がきっかけで名称変更に
「クラブ・ウイスキー」が現在の「カナディアンクラブ」に名称変更された経緯には、諸説あります。
一説には、アメリカでの「クラブ・ウイスキー」の人気の高まりに対する、アメリカのバーボン業者の反発が要因のようです。
1890年には法律が制定され「クラブ・ウイスキー」から「カナディアンクラブ」(C.C.)へと名称を変更するに至りました。
明治時代後半に日本へやってくる
世界への輸出にも力を入れ、1909年(明治42年)には日本に初輸出されました。
2014年、サントリーがビーム社を購入したため、現在はサントリービーム社がオーナーとなり、製造販売を行っています。
そのため日本でも比較的手に入りやすく、カナディアンクラブの価格、味ともに高い評価を受けています。
禁酒法により「カナディアンクラブ」の評価は一層高まる
ハイラム・ウォーカーの逝去後、 「カナディアンクラブ」 の人気は高まり続け、1900年には40以上の偽物が出回りました。
そこで「カナディアンクラブ」はブランド戦略として、新聞広告やポスターで品質の高さを訴え続けた結果、世の中の信頼を得たのです。
そして1920年、アメリカの禁酒法が施行され、密造酒の横行や粗悪なスピリッツが出回ります。
そんな状況下でも 「カナディアンクラブ」 は高い品質で販売を続けていたので、さらなる信頼を獲得しました。
1933年の禁酒法撤廃後、不足する酒市場に貢献したのも 「カナディアンクラブ」 を中心としたカナディアンウイスキーでした。
このように、ハイラム・ウォーカーの先見の明は、世界のウイスキー史においても注目されています。
162年の歴史が生み出す「カナディアンクラブ」の製法
「カナディアンクラブ」は現在も、162年前のレシピを守って造られています。
すっきりとした味わいを生み出す蒸留から樽での熟成、ブレンドまでの各過程での工夫やこだわりをご紹介します。
ブレンドされている原酒は3種類
カナディアンウイスキーのほとんどは、トウモロコシを原料としたベースウイスキーと、風味に変化を与えるフレーバリングウイスキーがブレンドされてできています。
カナディアンウイスキーの定義や特徴については、下記の記事でも解説しています。
併せてお読みください。
「カナディアンクラブ」は1種のベースウイスキーに、2種のフレーバリングウイスキーをブレンドして造られています。
一般的なグレーンウイスキーと、「カナディアンクラブ」の味わいや香りの違いは、フレーバリングウイスキーの造り分けによるものです。
ベースウイスキー(連続式蒸留機使用)
トウモロコシを原料に連続式蒸留機でアルコール度数60~70%にしたベースウイスキー。
ライトでマイルドな味わいが特徴です。
フレーバリングウイスキー(連続式蒸留機・単式蒸留器使用)
ライ麦、トウモロコシ、ライ麦麦芽、大麦麦芽を原料に連続式蒸留機・単式蒸留機を併用して造るフレーバリングウイスキー。
「スタースペシャル」と呼ばれ、複雑で濃厚な香味が特徴です。
フレーバリングウイスキー(1塔式連続式蒸留機・精留器使用)
ライ麦、ライ麦麦芽、大麦麦芽を原料に1塔式連続式蒸留機でアルコール度数を95%ほどまで高めたもうひとつのフレーバリングウイスキー。
精留器とは、蒸留機のアームの中ほどに取り付けられる銅製の円筒型の装置で、アームの中に低温環境を作り出します。
いったん冷やされた原酒は精留器内にとどまり、銅に触れる機会が増えることにより、軽やかな甘さを持つ原酒になるのです。
フレーバーリングウイスキーは「スター」と呼ばれ、リッチで果実のような香味を持っています。
樽詰めの前の「プレ・ブレンディング」
一般的なウイスキーのブレンドは、熟成された原酒同士を組み合わせます。
しかし「カナディアンクラブ」は、樽詰めされる前の原酒をブレンドする「プレ・ブレンディング」という製法を採用。
ブレンド後に樽で熟成することで、組み合わせた原酒がよくなじみ、マイルドな口当たりに仕上がります。
ユニークな樽と貯蔵庫の暖房設備での熟成
ブレンドされた原酒は樽詰めの後、暖房設備で温度管理された貯蔵庫で熟成されます。
使用する樽は、バーボンの熟成に使われたホワイトオークの樽です。
オーク材の強い香りはバーボン熟成を経て穏やかになっており、「カナディアンクラブ」に独特のリッチな香りをもたらします。
熟成年数の違う銘柄も、それぞれ異なるレシピで造っているため、単に熟成年数が長いだけではない、銘柄ごとの違いが楽しめます。
「カナディアンクラブ」の定番ウイスキー【定価や飲み方も】
銘柄ごとにレシピを変え、複数のグレーン原酒を組み合わせることにより、多彩な銘柄を揃えている「カナディアンクラブ」。
それぞれの特徴や、おすすめの飲み方をご紹介します。
「カナディアンクラブ」
・アルコール度数:40% 700mL 1,390円
・アルコール度数:40% 1000mL 2,200円
・アルコール度数:40% 1750mL 3,200円
※2023年1月現在・メーカー小売希望価格・税別
「カナディアンクラブ」のフラッグシップボトルです。
カナダの公式サイトでは、「1858」の名称で紹介されていますが、1858年はハイラム・ウォーカーが最初にウイスキーを販売した年でもありす。
オーク樽で最低3年間熟成され、アーモンドの香り、リッチなオークとバニラの味わい、ほのかなスパイシーさが感じられます。
700mLボトルが1,000円台で購入できるので、カナディアンウイスキーの入門として気軽に試しやすい銘柄です。
おすすめの飲み方
公式サイトでも紹介されている、「C.C.ジンジャーエール」がおすすめです。
材料はウイスキー「カナディアンクラブ」とジンジャーエール。
1:3の割合から試し、お好みに応じて割合を変えてみてください。
作り方
- グラス一杯に氷を入れる
- ウイスキー「カナディアンクラブ」とジンジャーエールを順に注ぐ
- お好みで、カットしたレモンやライム・オレンジなどの柑橘系で、味わいに彩りを添えて、完成
「カナディアンクラブ ブラックラベル」
アルコール度数:40% 700mL 4,000円
※2023年1月現在・メーカー小売希望価格・税別
「カナディアンクラブ ブラックラベル」は、日本向けに販売された限定銘柄です。
バーボン樽で8年以上熟成されており、「カナディアンクラブ」より厚みのある味わいが特徴。
オレンジピール、カラメルの香りと、オーク材のウッディーな味わいがあります。
甘みは強めですが、「カナディアンクラブ」らしいライトな飲みやすさも持っている1本です。
おすすめの飲み方
おすすめの飲み方はハイボールです。
8年熟成による甘みや香りがありつつも、柔らかな口当たりになり、料理にも合います。
作り方
- グラスに氷を一杯入れる
- マドラーで氷を回してグラスを冷やす。
- 「カナディアンクラブ」を適量注ぐ
- 減った分の氷を足して冷えたソーダを注ぎ(ウイスキー1:ソーダ3)、マドラーで軽く縦に1回混ぜて完成
「カナディアンクラブ クラシック12年」
アルコール度数:40% 700mL 2,000円
※2023年1月現在・メーカー小売希望価格・税別
「カナディアンクラブ クラシック12年」は、内側を焦がしたバーボン樽で12年熟成した銘柄です。
フラッグシップボトル「カナディアンクラブ」より、複雑で個性的な味わいに仕上がっています。
柔らかく丸みのあるバニラの香り、リッチなオーク材とハチミツ、バニラのバランスの取れた味わいが特徴です。
おすすめの飲み方
「クラシック12年」は、ロックで飲むと焦がした樽のニュアンスが感じられ、おすすめです。
時間が経つにつれて水割りに近い味わいとなり、スッキリとした味と、優しいライ麦の香りが楽しめます。
「カナディアンクラブ 20年」
アルコール度数:40% 750mL 1万5,000円
※2023年1月現在・メーカー小売希望価格・税別
「カナディアンクラブ 20年」は、口に含んだ瞬間に甘いバニラを感じます。
マイルドさを味わった後は、ライ麦を楽しめますよ。
良質のオーク樽で20年以上熟成させたウイスキーだけが醸し出せる、円熟した味わいが特徴です。
おすすめの飲み方
20年という熟成感を楽しめるストレート、ロックがおすすめです。
ふくよかな甘みと、長い余韻が楽しめます。
その他の「カナディアンクラブ」
「カナディアンクラブ」にはスタンダードなボトルの他に、過去に限定販売された銘柄や、カナダのみで販売されている銘柄もあります。
熟成樽や原料を変えているもの、リキュールをブレンドしたもの、長期熟成の限定銘柄まで、味わいも香りも異なるラインナップです。
機会があったら、ぜひ試してみてください。
- 「カナディアンクラブ シェリーカスク」
- 「カナディアンクラブ 30年」
- 「カナディアンクラブ 100%RYE」
- 「カナディアンクラブ APPLE」
また、缶入りで手軽に「カナディアンクラブ」が楽しめる、「カナディアンクラブ MIXED&READY(CANADIAN CLUB AND GINGER ALE)」もあります。
「カナディアンクラブ」にジンジャーエールを合わせた飲料で、生姜のスパイシーさ、ライ麦・グレーンの甘みが感じられます。
アルコール度数は5%なので、ビールの代わりにゴクゴク飲めそうですね。
「カナディアンクラブ」はうまい?まずい?気になる味の評価を独自調査
スッキリとした味わいで飲みやすいのが特徴の「カナディアンクラブ」ですが、実際に飲んだ人はどう評価しているのでしょうか。
SNSなどで「うまい」「まずい」という口コミをそれぞれ調べ、感想や理由を分析します。
うまいという意見
まずは、「うまい」と感じた人の感想を見ていきましょう。
クセのある香りやアルコールの刺激が少ないため、飲みやすさから「うまい」とする意見が多いようです。
炭酸水で割る飲み方が人気で、食事に合わせている人もいるので、さまざまな楽しみ方ができるウイスキーであることが分かります。
甘くて軽い味わいで、ウイスキー初心者が試しやすい銘柄ですね。
まずいという意見
それでは、「カナディアンクラブ」を「まずい」とする意見はあるのでしょうか。
おいしくないと感じた人の意見を見てみましょう。
ウイスキー特有の香りやアルコールの刺激が少ないため、ウイスキーを飲み慣れている人には「物足りない」「まずい」と感じられるようです。
ハイボールにしたり、柑橘系の果汁を加えたりすることでおいしく飲めるという意見もあるので、飲み方を工夫することで楽しめそうですね。
おわりに
銘柄や飲み方によって味わいが変わる奥深いウイスキー「カナディアンクラブ」。
「カナディアンクラブ」は気軽に飲めるウイスキーですが、その飲みやすさの裏には創業者やメーカーの努力、工夫があることが分かります。
日本でも手に入りやすいので、いろいろな飲み方を楽しんでください。