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ウィスキーの種類

誰でもわかる世界5大ウイスキーの基礎知識【専門家監修】

世界中で愛されているウイスキーには、製造される国ごとに定義と特徴があります。
特に有名なのが、スコッチ、ジャパニーズ、アメリカン、アイリッシュ、カナディアンの世界5大ウイスキー。

その世界5大ウイスキーの歴史や味の特徴をご紹介するので、ウイスキーの違いを知りたい方はぜひ参考にしてください。

近年注目を集めている、5大国以外のウイスキーも解説しますので、地域ごとの特色を知り、飲み比べてみてくださいね。

この記事の監修者

浅野まむ

浅野まむ

お酒とBarを愛しています。バーテンダー歴8年、現在ライター。ウィスキーエキスパート資格持ち。 1人で飲むのも、大勢で飲むのも、2人で飲むのも、なんでも好きです。

世界5大ウイスキーとは【分類表で紹介】

テーブルの上に散らばった麦芽と少量のウイスキーが入ったテイスティンググラス

世界5大ウイスキーとは、下記の5つの種類を指します。

  • スコッチウイスキー
  • ジャパニーズウイスキー
  • アメリカンウイスキー
  • アイリッシュウイスキー
  • カナディアンウイスキー

各ウイスキーは、原料や製造方法により、さらに細かく分類されます。

まずは、どんな種類があるのか、表で見ていきましょう。

スコッチウイスキー

種類主な原料/原酒備考
シングルモルトウイスキーモルト地域によって以下に分類スペイサイド、アイラ、ハイランド、アイランズ、キャンベルタウン、ローランド
ヴァッテッドモルトウイスキーモルト
ブレンデッドウイスキーモルトグレーン
グレーンウイスキーグレーン

ジャパニーズウイスキー

種類主な原料/原酒備考
シングルモルトウイスキーモルト
グレーンウイスキーグレーン
ブレンデッドウイスキーモルトグレーン
ピュアモルトウイスキー(ブレンデッドモルトウイスキー)モルト

アメリカンウイスキー

種類主な原料/原酒備考
バーボンウイスキートウモロコシ(51%以上)テネシーウイスキーも含む
ライウイスキーライ麦(51%以上)
ホイートウイスキー小麦(51%以上)
モルトウイスキーモルト(51%以上)
ライモルトウイスキーライモルト(51%以上)
コーンウイスキートウモロコシ(80%以上)

アイリッシュウイスキー

種類主な原料/原酒備考
モルトウイスキーモルト
グレーンウイスキーグレーン
ブレンデッドウイスキーモルトグレーン
ポットスチルウイスキーモルトグレーン(主に未発芽の大麦)モルトはノンピートに限る

カナディアンウイスキー

種類主な原料/原酒備考
カナディアンブレンデッドウイスキーグレーンフレーバリングウイスキーとベースウイスキーをブレンド
フレーバリングウイスキーグレーン
ベースウイスキーグレーン(主にトウモロコシ)

原料や製法に違いがあるので、同じ国のウイスキーでも種類によって味は異なります。
それぞれの国独自の分類があるのも興味深いですね。

この分類には、各国のウイスキーの定義や歴史が深く関係しています。
5大ウイスキーの特色を決定づけている要因を、詳しく見ていきましょう。

5大ウイスキーの定義まとめ

テーブルの上には飲みかけのウイスキーと背景に青いギターが置かれている

世界5大ウイスキーには、それぞれ厳密な定義があります。

たとえスコットランドで製造されていても、定義を満たさなければスコッチウイスキーと名乗ることはできないのです。

ウイスキーそのものの定義、各国のウイスキーの定義を解説します。

ウイスキーとは

一般的には、下記の3つの条件を満たすことで、ウイスキーと名乗れます。

  • 穀物を原料とすること
  • 糖化、発酵の後に蒸溜を行った蒸溜酒であること
  • 木製の樽で貯蔵熟成されていること

蒸溜酒は、原料を酵母の働きで発酵させた後、加熱してエタノールを蒸発させ、その蒸気を再度冷やして液体に戻して造られる酒です。

ウイスキーの他に、ブランデー、焼酎、ウォッカなども蒸溜酒に分類されます。

他の蒸溜酒との大きな違いは、木樽で熟成を行う点です。
樽の木材の違いや前に熟成に使われていた酒の種類の違い、熟成年数によって、多彩な味わいと香りが生まれます。

さらに、各国の原料や水、土壌の違いによって、5大ウイスキーの特徴が生み出されているのです。

それでは、5大ウイスキーの定義を見ていきましょう。

スコッチウイスキーの定義

伝統的なウイスキーの生産地であるスコットランド。

世界中にファンがいるスコッチウイスキーは、英国の法律により、定義が厳密に決められています。

具体的な条件は、以下の7つです。

  • 水、酵母、大麦麦芽(モルト)およびその他の穀物を原料とすること
  • スコットランドの蒸溜所で糖化と発酵、蒸溜を行う
  • アルコール度数94.8%以下で蒸溜
  • 容量700リットル以下のオーク樽に詰める
  • スコットランド国内の保税倉庫で3年以上熟成させる
  • 水と、色調整のためのスピリットカラメル以外の添加は不可
  • アルコール度数40%以上で瓶詰めする

ジャパニーズウイスキーの定義

スコッチウイスキーを手本として造られてきた日本のウイスキー。

日本の酒税法にはウイスキーの定義はありますが、2022年現在ジャパニーズウイスキーの定義はありません。

日本の酒税法では、ウイスキーは下記のように定められています。

  • 発芽させた穀類、水を原料として糖化、発酵させたアルコール含有物を蒸溜したもの(留出時のアルコール分が95%未満のものに限る)
  • 発芽させた穀類、水によって穀類を糖化、発酵させたアルコール含有物を蒸溜したもの(留出時のアルコール分が95%未満のものに限る)
  • 1または2の酒類にアルコール、スピリッツ、香味料、色素または水を加えたもの

5大ウイスキーの他の国と比較すると、産地や熟成についての記載がありません。
そのため、外国産の原酒や熟成期間が短いものでも、ジャパニーズウイスキーとして販売できるのが現状です。

近年、国際的にも注目されるようになったジャパニーズウイスキー。
日本のウイスキーの品質を保ち、消費者の混乱を避けるため、日本洋酒酒造組合は2021年にジャパニーズウイスキーの定義を決めました。

  • 原材料は麦芽を必ず使用し、日本国内で採取された水を使用すること
  • 国内の蒸留所で糖化・発酵・蒸留し、蒸留のアルコール分は95度未満とすること
  • 原酒を700リットル以下の木樽に詰め、日本国内で3年以上貯蔵すること
  • 日本国内で瓶詰めし、アルコール度数は40度以上とすること

サントリーの「」「山崎」「知多」「ローヤル」「スペシャルリザーブ」「オールド」や、ニッカウヰスキーの「竹鶴」「余市」「宮城峡」など、ウイスキー大手のブランドはこの定義に当てはまっています。

今後、この定義が海外にも広まっていくのか、日本の小規模な蒸溜所もこの定義を守っていくのかが、注目されます。

アメリカンウイスキーの定義

アメリカンウイスキーは、連邦アルコール法という法律によって、下記のように定められています。

  • 穀物を原料に190プルーフ(アルコール度数95%)以下で蒸溜
  • オーク樽で熟成(コーンウイスキーは必要なし)
  • 80プルーフ以上(アルコール度数40%)でボトリングしたもの

「プルーフ」は、アメリカやイギリスで使われるアルコール度数を表す単位で、プルーフの数値の半分の値が、アルコールの割合(%)です。

さらに、種類ごとに原料の割合が下記のように決められています。

種類規定
バーボンウイスキー・原料の51%がトウモロコシ
・160プルーフ(アルコール度数80%)以下で蒸溜
・内側を焦がしたオークの新樽に125プルーフ(アルコール度数62.5%)以下で樽詰めし熟成
※熟成期間が2年以上のものは「ストレートバーボンウイスキー」と呼ばれる
※テネシー州で製造され、チャコールメローイング(蒸溜直後にサトウカエデの炭で、ろ過)を行ったものをテネシーウイスキーと定義
ライウイスキー・原料の51%がライ麦他は同上
ホイートウイスキー・原料の51%がホイート(小麦)他は同上
モルトウイスキー・原料の51%がモルト(大麦麦芽)他は同上
ライモルトウイスキー・原料の51%がライモルト(ライ麦芽)他は同上
コーンウイスキー・原料の80%がトウモロコシ
・160プルーフ(アルコール度数80%)以下で蒸溜
※古い樽もしくは内側を焦がしていないオークの新樽に125プルーフ(アルコール度数62.5%)以下で樽詰めして2年以上熟成
したものは「ストレートコーンウイスキー」と呼ばれる

アイリッシュウイスキーの定義

スコットランドと同様、伝統的なウイスキーの産地として知られるアイルランド。
こちらも、熟成期間や熟成場所などが法律で決まっています。

Irish Whiskey Act,1980」には、下記のように規定されています。

  • 穀物類を原料とすること
  • 麦芽に含まれる酵素により糖化し、酵母の働きによって発酵させること
  • 蒸溜時のアルコール度数は94.8%以下であること
  • 木製樽に詰めること
  • アイルランド島(アイルランド共和国、または英国領北アイルランド)の倉庫で3年以上熟成させること

カナディアンウイスキーの定義

カナダで製造されるウイスキーにも、法律による定義があります。

  • 穀物を原料に、麦芽などで糖化、酵母などで発酵し、蒸溜したもの
  • 700リットル以下の木樽で3年以上熟成させること
  • アルコール度数40%以上で瓶詰めすること
  • 糖化・蒸溜・熟成はカナダ国内で行うこと
  • カラメルまたはフレーバリングを添加してもよい
  • ライ麦の使用比率が51%以上(カナディアンライウイスキーの場合)

特徴的なのは、フレーバリングの添加を許可している点。
フレーバリングは、スピリッツやワインを加えることにより香味を付加することで、カナディアンウイスキー特有の条件です。
使用量には制限があるものの、フレーバリングが許可されていることにより、カナディアンウイスキーの多様な銘柄が造られているのです。

世界5大ウイスキーそれぞれの生産地域と共通点

倉庫に寝かせられている多数の樽

世界5大ウイスキーの産地である各国には、ウイスキー造りに必要な条件を備えているという共通点があります。

ウイスキー造りには、大麦などの原料、豊富な水、良質な熟成樽、熟成に適した環境が欠かせません。

それぞれの生産地の特徴とともに、共通点といえるウイスキー造りの環境を詳しく見ていきましょう。

スコットランドの生産地域

最も歴史の古いウイスキーの生産地のひとつ、スコットランド。
全土でウイスキーの製造が行われており、地域ごとに6つの種類に分類されます。

産地場所・特徴
アイラ西側のヘブリディーズ諸島最南端の島
アイランズアイラ島以外の島々
キャンベルタウンスコットランド本島西部の海沿いの港町
スペイサイドハイランドの東側の一部スコッチの60%がここで生産される
ハイランドスコットランド本島の北部の大部分
ローランドスコットランド本島の南部

各地の蒸溜所は、豊かな水源の近くや、原料を入手しやすい地域に建てられており、ウイスキー造りに最適な環境にあるといえます。

また、海辺に近い場所で造られるウイスキーは潮の風味を感じられるなど、地域ごとの特色が強く出るのも特徴です。

アイルランドの生産地域

アイルランド共和国と、イギリスの一部である北アイルランド、この2つの地域で製造されるのがアイリッシュウイスキーです。

有名な蒸留所は、アイルランド北部の海沿いにあるクーリー蒸溜所や、新ミドルトン蒸溜所。

一度は閉鎖してしまった蒸溜所を復活させたキルベガン蒸溜所など、伝統あるアイリッシュの復活を象徴するような蒸溜所もあります。

いずれの蒸溜所もしっかりと水源が確保されており、特に新ミドルトン蒸溜所は、広大な敷地と豊富な水に恵まれた場所にあります。

日本の生産地域

他の4カ国と比べても歴史が浅いジャパニーズウイスキーですが、その品質は世界で高く評価されています。

蒸溜所の数こそ少ないものの、大手メーカーが手がけているところが多く、製造を自社で一貫して行うため、品質の安定したウイスキー造りが可能です。

日本の蒸溜所がある地域は、ウイスキー造りに適した涼しくて湿潤な環境であることが多く、ウイスキー造りの手本にしてきたスコットランドの気候と似ています。

また、世界では珍しいミズナラ樽を熟成に使用するなど、日本独自の原酒造りが進んでいるのも特徴です。

アメリカの生産地域

アメリカンウイスキーの生産地域は、その歴史と関連があります。

17世紀にヨーロッパから渡ってきた移民が上陸した場所のひとつであるバージニア州で、最初のアメリカンウイスキーの製造が始まりました。

バージニア州の隣、ケンタッキー州はバーボンの生産地、そのすぐ南のテネシー州は「ジャックダニエル」の生産地として有名です。

原料は、アメリカで入手しやすいトウモロコシが主流。
アメリカンの代名詞であるバーボンも、トウモロコシを51%以上使用したウイスキーです。

カナダの生産地域

カナディアンウイスキーの主な生産地域は、東部のオンタリオ州やケベック州です。
広大で肥沃な土地は農業に適しており、余剰な穀物を有効活用する方法として、ウイスキー製造が始まったといわれています。

アメリカから移り住んだイギリス系移民がウイスキーを発展させてきたのが、前述のオンタリオ州やケベック州。

アメリカのマフィア、アル・カポネが通ったことでも知られるハイラム・ウォーカー蒸溜所は、穀倉地帯に近く原料が手に入りやすい立地です。

その他の蒸溜所も、良質な水を仕入れやすい湾沿いなど、ウイスキー造りに適した環境に建てられています。

世界5大ウイスキーそれぞれにおける歴史の概要

世界5大ウイスキーそれぞれの歴史の概要世界5大ウイスキーが歩んできた歴史には、特徴的な味わいの理由や、世界から支持される理由が隠れています。

中には、法規制や人気の陰りなど、逆境を生き抜いてきたウイスキーも。

お気に入りの銘柄を楽しみながら、歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

各国のウイスキーの歴史を見ていきましょう。

スコッチウイスキーの歴史

最も古い歴史を持つウイスキーのひとつが、スコッチです。

スコットランドにおけるウイスキーの誕生から、高品質のスコッチが世界に流通するまでを紹介します。

15世紀に誕生したウイスキー

1494年のスコットランド王室の出納記録が、確認できる最古のウイスキー文献であり、15世紀には王室で飲まれていたことがわかります。

当時は修道院で薬として造られていましたが、やがて酒として広く飲まれるようになりました。

1644年にウイスキーへの課税が始まり、1707年にスコットランドがイングランドに併合されると、税金はさらに厳しく課されるようになります。

密造酒時代

課税を嫌った人々は、山奥でウイスキーを密造するようになったのです。

この時代に、大量にあるピートを使った麦芽乾燥や、ウイスキーを隠すためのシェリー樽の使用などが始まり、近代のスコッチの製法が確立していきました。

その後、酒税法の改正で税率が引き下げられたことにより、密造酒時代は終幕。

政府公認の蒸溜所が次々と建てられました。

ブレンデッドウイスキーによりスコッチは世界へ

スコッチの歴史で重要な出来事のひとつは、ブレンデッドウイスキーの誕生です。
1831年に発明された連続式蒸溜機を使い、原価の安いトウモロコシで造ったグレーンウイスキーの製造が始まります。

グレーンウイスキー単体では風味が弱かったため、モルトウイスキーと混ぜられるようになりました。

このブレンドにより穏やかで柔らかい風味のウイスキーが生まれ、一定の品質のウイスキー製造ができるようになったことで、スコッチウイスキーは世界に広まります。

1963年に「グレンフィディック」が世界で初めてのシングルモルトとして販売されると、たちまち人気に。

ブレンデッドウイスキーの広まりと、その後の蒸溜所ごとの個性が色濃く出たシングルモルトの市場拡大により、スコッチは世界中で親しまれるウイスキーになりました。

ジャパニーズウイスキーの歴史

他の4カ国に比べて、まだ歴史の浅い日本のウイスキーですが、スコッチを参考に技術を高めてきたジャパニーズウイスキーの評価は高く、世界5大ウイスキーに仲間入りしました。

ウイスキーが日本に伝わったところから、歴史をご紹介します。

ウイスキー輸入の始まり

日本に最初にウイスキーが伝わったのは、1853年のアメリカのペリー総督来航時といわれています。

1871年にはウイスキーの輸入が始まりますが、洋酒は高価であったために、広く浸透するまでには至りませんでした。

日本では長い歴史を持つ日本酒や焼酎の蔵元が数多くあり、ここを基盤としてアルコール製造が産業として発展していきました。

日清戦争後の1895年頃からアルコール製造のための蒸溜機が輸入され始め、ウイスキー製造も行われていたようです。

国産ウイスキーの生産を開始

本格的な国産ウイスキーの製造を確立したのは、現サントリーホールディングス創業者の鳥井信治郎。

1923年、ウイスキー製造を学ぶために、スコットランドに派遣されていた竹鶴政孝を会社に迎えます。

日本で最初の本格的な蒸溜所(現山崎蒸溜所)を、京都と大阪をまたぐ山崎という地方に建設、「サントリーウヰスキー」を発売しました。

サントリーを退職した竹鶴政孝は、北海道余市に蒸溜所を建設。

1940年には「ニッカウヰスキー」の販売を開始します。

日本におけるウイスキーブーム

本格的に日本でウイスキーが広まったのは、第二次世界大戦後です。

敗戦直後は、アルコールに香料で味をつけただけの模造酒や、原酒が3%だけ混ざっているものがウイスキーとして販売されていましたが、それでも国民から人気を博し、ウイスキーブームの下地ができました。

高度経済成長期には、サントリーやニッカの名を冠したバーが急増し、ウイスキーは大ブームになります。

1971年にはウイスキーの輸入が自由化され、さらにウイスキーの消費量は増加しました。

1983年頃をピークに一時消費は低迷したものの、2001年のウイスキーの世界的な品評会ベスト・オブ・ザ・ベスト(現ワールド・ウイスキー・アワード)において、ニッカウヰスキーの「シングルカスク余市10年」が総合1位、サントリーの「響21年」が2位を獲得したことで再び脚光を浴びます。

2008年頃のハイボールブーム、2014年のNHKのドラマ「マッサン」の放送を機に、ジャパニーズウイスキーは復活を遂げました。

5大ウイスキーの仲間入り

ジャパニーズウイスキーが世界的に知られるようになったのは、前述のベスト・オブ・ザ・ベスト(現ワールド・ウイスキー・アワード)がきっかけ。
わずか20年ほど前のことです。
他の4カ国に対して歴史が浅いにもかかわらず、日本が世界5大ウイスキーに数えられているのはなぜでしょうか。

1960年代には、サントリーやニッカが海外へウイスキーの輸出をしていましたが、この当時はスコッチやアイリッシュに並ぶものではなかったでしょう。

「5大ウイスキー」という表現は、最初は日本の”自称”だったかもしれません。
しかし2009年以降、国内消費だけでなく輸出量も増え続けており、国際的な品評会の常連にもなっています。

山崎」のように、オークションでは高額で取引される人気銘柄も。

現在は、ジャパニーズウイスキーが5大ウイスキーのひとつであることに異論はないでしょう。

アメリカンウイスキーの歴史

アメリカンウイスキーの歴史は、イギリス人による植民地化が始まった頃にさかのぼります。

ウイスキーの誕生や苦難の禁酒法時代などを紹介します。

アメリカンウイスキーの始まり

1622年に、ジョージ・ソープがアメリカで多く採れるトウモロコシを使ってウイスキーを製造したのが始まりです。
当時のウイスキーは樽で熟成されておらず、ハーブや香料で味を誤魔化していたという説も。

ウイスキー造りが本格化したのは、18世紀頃です。
スコットランド系アイルランド人の移民が蒸溜技術を持ち込み、盛んに製造されるようになります。

アメリカが独立した1776年以降、ウイスキーの銘柄名にもなっている著名な事業家、エヴァン・ウィリアムズやエライジャ・クレイグにより、製造方法が確立されました。

特にエライジャ・クレイグは、トウモロコシを主原料にウイスキーを造り、これが後のバーボンになったといわれているため、「バーボンの祖」とも呼ばれています。

禁酒法による苦難の時代

移民による製造技術の確立や、南北戦争をきっかけとするウイスキーの定義「ボトルド・イン・ボンド法」の制定など、質のよいウイスキーを造る土台を着実に固めてきたアメリカ。

しかし次第に、禁酒の風潮が出てきます。
飲酒による治安の悪化を防ごうと、1920年に0.5%以上のアルコールを含む飲料の製造・販売・輸送を全面的に禁止する「禁酒法」を施行。

これによりウイスキー蒸溜所も次々と閉鎖に追い込まれます。

しかし、薬としての酒は禁止されていなかったり、ウイスキーの密造や隣国カナダからの密輸が止まらなかったりしたため、実際にはアルコールの消費量は減らなかったようです。

密造や密輸で暗躍したアル・カポネなどのマフィアにより、治安は禁酒法以前より悪化しました。

法整備による復活

1933年に禁酒法が廃止された後、一時は粗悪なウイスキーが流通しましたが、1948年にはウイスキーの品質を守るための連邦アルコール法が制定されます。

小規模なクラフト蒸溜所も誕生し、世界で親しまれるウイスキーとなりました。

アイリッシュウイスキーの歴史

アイリッシュウイスキーの誕生や苦難の時代、復活の歴史を紹介します。

アイリッシュウイスキーの起源と蒸溜所の誕生

スコッチ同様長い歴史があるアイリッシュですが、その起源には諸説あります。
起源説の中では、修道院で製造された薬酒が、13〜15世紀に民間に広まったとされる説が有力です。

1608年にはイギリス国王ジェームズ1世が、現在の「ブッシュミルズ」を含む地域にウイスキー蒸溜の許可を出したことにより、世界で最初の認可ウイスキー蒸溜所が誕生します。

1850年代には大麦麦芽への課税により、ウイスキーの原料の見直しの風潮があったものの、「ブッシュミルズ」では品質にこだわった大麦100%のウイスキーを造り続けました。

アメリカを中心としたアイリッシュウイスキーの需要の高まりに伴い、1800年代後半にかけて生産量、消費量が伸び、世界のウイスキーの60%を占めたともいわれています。

表舞台から消えたアイリッシュウイスキー

世界の半分以上のウイスキーを生産していたアイルランドですが、1900年代には苦難の時代を迎えます。

1921年にアイルランドの一部がイギリスから独立。
イギリスの報復措置により、アイリッシュウイスキーは市場から締め出されてしまったのです。

続いてアメリカで禁酒法が制定されると、主なアイリッシュウイスキーの消費国であったアメリカにウイスキーが輸出できなくなり、生産量が一気に低下します。

第二次世界大戦では、輸出を強化したスコッチに対し、アイリッシュウイスキーは国内での販売を優先するために輸出を規制。

世界でのスコッチの台頭を許しただけでなく、国内の蒸溜所は2カ所まで減少し、表舞台から消えてしまったのです。

アイリッシュウイスキーの復活

1987年にハーバード・ビジネス・スクールで、ウイスキーについて研究したジョン・ティーリング氏がクーリー蒸溜所を設立しました。

アイリッシュウイスキーの復活を目指し、ポットスチルウイスキーを使ったブレンデッドウイスキーを製造。
徐々に世界から注目を集めるようになります。
伝統的な製法を守る蒸溜所や新進気鋭の蒸溜所も誕生し、アイリッシュウイスキーは完全復活を果たしました。

カナディアンウイスキーの歴史

カナディアンウイスキーは、禁酒法を機に躍進を遂げました。

アメリカンウイスキーやアイリッシュとは対照的な、カナディアンウイスキーの歴史をご紹介します。

カナディアンウイスキーの始まりは17世紀

カナディアンウイスキーの歴史は17世紀に始まります。

ビール造りが盛んなカナダはビール醸造所に蒸溜機を置き、ウイスキーの生産を行っていました。

アメリカ独立戦争の頃から、ウイスキー造りは本格化します。

アメリカの独立に反対したイギリスからの移民がカナダに移り、オンタリオ州やケベック州で、ライ麦・小麦などの穀物を生産を始めました。

肥沃で広大な土地があるカナダで農業や製粉業が発展し穀物が余り始めると、余剰な穀物の有効利用のひとつとして、ウイスキー製造が行われたのです。

苦難のアメリカと対照的だった禁酒法時代のカナディアン

1920年に制定されたアメリカの禁酒法は、アメリカンウイスキーやアイリッシュウイスキーに打撃を与えました。

反対に、禁酒法時代に発展したのがカナディアンウイスキーです。

国内で生産ができなくなったアメリカのウイスキー業者が隣国のカナダに渡り、ウイスキーの製造や密輸を始めたのです。
カナダでのウイスキー生産は一気に拡大し、オンタリオ州だけで200もの蒸溜所があったほどの盛況でした。

禁酒法が廃止された後も粗悪なウイスキーが出回っていたアメリカでは、カナディアンウイスキーが好んで飲まれました。

品質も向上し、カナディアンウイスキーを代表するメーカー、ハイラム・ウォーカー社とシーグラム社が世界に進出します。

1980年代に始まったカナダの厳しいアルコール規制により一時衰退しましたが、アメリカを筆頭に輸出に力を入れ、小規模の蒸溜所が増えてくるなど、回復してきています。

世界5大ウイスキーの味や特徴【代表する銘柄も紹介】

細い持ち手のついたグラスに注がれたウイスキーがテーブルの上に置かれている

世界中にファンがいる5大ウイスキー。
それぞれ味わいや香りに特徴があり、お気に入りの国がある愛好家の方もいるでしょう。

独自の分類や味の特徴、「この国のウイスキーといえばこれ」という代表的な銘柄もご紹介します。

スコッチウイスキー

スコッチウイスキーの歴史で紹介した通り、スコッチの世界的人気はブレンデッドとシングルモルトによって築かれました。
スコッチウイスキーの特徴のひとつに、ピート香と呼ばれるスモーキーな香りがあります。
野草や水生植物が炭化した泥炭であるピートを燃料として使い、大麦麦芽を乾燥させることで独特な香りが生まれます。
特に、アイラ島で製造されるアイラモルトウイスキーは、このピート香が強いのが特徴です。

ピート香のしないノンピートで製造されているスコッチも多数あり、地域や蒸溜所によって味わいは大きく異なります。

シングルモルトウイスキー「ザ・マッカラン12年」

単一の蒸溜所で、モルト(大麦麦芽)のみを使って造られるシングルモルトウイスキーは、蒸溜所ごとの特徴が色濃く表出。

フルーティーでスッキリした甘み、蜂蜜の濃厚な甘み、海沿いの潮を感じる香りなど、個性のあるウイスキーが多く、好みも分かれます。

シングルモルトの代表的な銘柄といえば、やはり「ザ・マッカラン」でしょう。

スペイサイド地方で造られる「ザ・マッカラン」は、王道のシングルモルトであり、上品で華やかな香りと味が特徴です。

ブレンデッドウイスキー「バランタイン17年」

対して、モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドして造られるのが、ブレンデッドウイスキー。
個性の強いモルト原酒のクセをグレーン原酒がやわらげることにより、バランスがよく飲みやすいのが特徴です。

ブレンデッドウイスキーの製造により品質が安定したウイスキーを大量生産できるようになり、スコッチは世界中に広がりました。

ブレンデッドウイスキーの代表的な銘柄は「バランタイン17年」です。

「バランタイン17年」には、味や香りが異なる複数のキーモルトが存在します。

このキーモルトの組み合わせにより生み出されるウイスキーは、甘みや苦味などのバランスがよく、初心者にも飲みやすいのが特徴です。

スコッチウイスキーのおすすめの銘柄を知りたい方は、こちらの記事も読んでみてください。

ジャパニーズウイスキー

スコッチをお手本にしてきたジャパニーズウイスキーは、味や香りがスコッチに似ている傾向があります。

近年では日本人の味覚に合わせた銘柄の開発が進み、独自の繊細な香りやスッキリとした甘みが特徴のウイスキーが増えています。

世界では珍しい、ミズナラを熟成樽に使用しているのも特徴のひとつ。
ミズナラ樽は、伽羅や白檀などの香木のような香りをウイスキーに与えます。

シングルモルトウイスキー「サントリー山崎」

ジャパニーズシングルモルトの代表的な銘柄は、近年人気が高騰しているサントリーの「山崎」です。

ミズナラ樽、シェリー樽、ホワイトオーク樽などの原酒をヴァッティングさせることにより、果実やバニラの甘み、ドライフルーツのような味わいを生み出しています。

特に「山崎12年」は世界のさまざまなコンテストで受賞をするなど、評価も高い銘柄です。

ピュアモルトウイスキー「竹鶴」

ピュアモルトとは、モルト100%のウイスキーのこと。

シングルモルトと異なるのは、複数の蒸溜所のモルト原酒をヴァッティングしている点です。

ピュアモルトで有名な銘柄は「ピュアモルト竹鶴」で、その名前はニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝から取っています。

ニッカの余市蒸溜所と、宮城峡蒸溜所のモルト原酒を組み合わせている「ピュアモルト竹鶴」は、華やかでフルーティーな香りが特徴です。

ブレンデッドウイスキー「ブラックニッカ クリア」

日本のブレンデッドウイスキーの代表的な銘柄は「ブラックニッカ クリア」で、幅広いラインナップを揃えている銘柄です。

「ブラックニッカ クリア」はモルト原酒とグレーン原酒をブレンドしており、バランスがよく飲みやすいのが特徴。

「ブラックニッカ」のラインナップを見てもリーズナブルなものが多いため、広く親しまれているウイスキーといえるでしょう。

ジャパニーズウイスキーのおすすめの銘柄を知りたい方は、こちらの記事も読んでみてくださいね。

アメリカンウイスキー

独特な風味、まろやかさと甘さが特徴のアメリカンウイスキー。
ライウイスキーやモルトウイスキーもありますが、アメリカンウイスキーといえばやはりバーボンでしょう。

バーボンの主な産地はケンタッキー州です。
代表的な銘柄には、「アーリータイムズ」と「フォアローゼズ」が挙げられます。

バーボンウイスキー「アーリータイムズ イエローラベル」

「アーリータイムズ」は、1860年に誕生した歴史ある銘柄。

ライトでまろやかな味わいの「アーリータイムズ イエローラベル」(※終売)や、スモーキーでスパイシーな風味が特徴の「アーリータイムズ ブラウンラベル」、「アーリータイムズ ホワイト」などがあります。

バーボンウイスキー「フォアローゼズ」

「フォアローゼズ」は厳選された原料を使い、熟成期間が比較的長いのも特徴です。
やわらかく甘い香りと、シナモンなどのスパイシーさを感じる味わいの銘柄で、カクテルなどのアレンジにもよく合います。

バーボンのおすすめを知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

アイリッシュウイスキー

ジェムソンのボトルと飲みかけのグラス
画像提供:Whiskeen編集部 アスカ

アイリッシュウイスキーは、通常大麦麦芽の乾燥にピートを使いません。
そのためスモーキーな香りが少なく、穏やかな味わいのウイスキーが多いのが特徴です。

原料に未発芽の麦芽を使い、穀物の味わいを出しているのもユニークな点。

また、通常2回行われる蒸溜を3回行っており、よりクリアなウイスキーに仕上がっています。

近年のアイリッシュウイスキーは、ピートを使った銘柄や2回蒸溜の銘柄も増えており、より多彩になってきました。

ブレンデッドウイスキー「ジェムソン スタンダード」

アイリッシュの代表的な銘柄は「ジェムソン」。
3回蒸溜のポットスチルウイスキーと、グレーン原酒を混ぜた、アイリッシュブレンデッドウイスキーです。

原酒のポットスチルウイスキーは大麦麦芽を30%、未発芽の大麦を30%使うことで、オイリーで穀物を感じる味わいを出し、3回蒸溜によりクリアな飲み口に仕上げています。

アイリッシュウイスキーの入門にもおすすめの銘柄です。

アイリッシュウイスキーについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

カナディアンウイスキー

軽やかなタイプや深いコクのあるタイプなど、バラエティーに富んでいるのが特徴のカナディアンウイスキー。

市場に流通しているカナディアンウイスキーのほとんどが、トウモロコシ主原料のベースウイスキーと、大麦麦芽とライ麦芽で造られるフレーバリングウイスキーをブレンドした、ブレンデッドウイスキーです。

5大ウイスキーの中で、最もライトな味わいなので、ウイスキーを初めて飲む方にもおすすめです。

ブレンデッドウイスキー「カナディアンクラブ」

代表的な銘柄は「カナディアンクラブ」です。

アメリカ禁酒法時代に、カナダに移り住んだハイラム・ウォーカーにより製造された、160年の歴史を持つウイスキー。

バランスが取れた味わいで、バニラの甘みやほんのり香るスパイシーさが特徴です。

カナディアンウイスキーについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

近年期待が高まる各国のウイスキー

テーブルの上に置かれたウイスキーデキャンタとわずかに残ったウイスキーロック

世界の代表的なウイスキーについて見てきましたが、他の国でも近年注目を集めつつあるウイスキーを製造しています。

もしかしたら将来、世界6大、7大ウイスキーになるかもしれないのが、インドと台湾です。

世界5大ウイスキー以外のウイスキーにもチャレンジしてみたい、という方は、ぜひ試してみてくださいね。

インドウイスキー

日本では馴染みが薄いですが、実はインドは消費量、販売量ともに世界トップクラスのウイスキー大国です。

イギリスの植民地であった頃からウイスキー造りが広まり、近年は世界的な知名度を誇る銘柄もあります。

スコットランドやアイルランドとは異なり、熱帯気候の環境で造られるインドウイスキー。
気温が高いことで熟成が早く進むため、品質管理が難しいのがネックですが、この熟成の早さを活かした個性豊かなウイスキーが生まれています。

シングルモルトウイスキー「アムルット」

インドウイスキーの中でも人気を集めているのが「アムルット」。
ブランドを代表する銘柄「アムルット・フュージョン」は、2008年の品評会「モルト・マニアックス・アワード2008」で最高賞を受賞するなど、高く評価されているウイスキーです。

台湾ウイスキー

台湾も近年、5大ウイスキーに並ぶ品質のウイスキーを製造していることで注目されています。

インドと同様、亜熱帯気候による熟成の早さが特徴です。

シングルモルトウイスキー「カバラン」

2008年に販売開始された新しいウイスキーでありながら、国際的な品評会で多数の賞を受賞しているのが「カバラン」。

高品質の樽と、良質な水で造られるこの台湾ウイスキーは、フルーティーでトロピカルな味わいが楽しめます。

最後に

キャンドルの両脇に置かれたウイスキーの入ったテイスティンググラス

世界を代表する5大ウイスキーには、それぞれの歴史と、積み上げられた伝統、特徴的な味わいがあることがわかりました。

日本のウイスキーが、スコッチやバーボンと肩を並べるまでになっているのは嬉しいですね。

お気に入りの国がある方も、ぜひ他の国のウイスキーも試して違いを楽しんでみてください。

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  • この記事を書いた人

けい

Webライター/オンラインコーチングで活動中のノマドワーカー。海外旅行好きで旅行先のバーやレストラン巡りが趣味。ウイスキーは勉強中!ワイン、日本酒、ビールが好き。

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