台湾で造られるウイスキーは、近年世界的に高く評価されています。
しかし、台湾ウイスキーが世界的に台頭してきたのは2014年頃からで歴史はまだ浅く、飲んだことのない方や、そもそもあまり情報を知らない方も多いことでしょう。
今回の記事では、そんな台湾ウイスキーの中でも「オマー」というブランドについて、歴史や特徴をはじめ、ラインナップやおすすめの飲み方、さらにはもう1つの台湾ウイスキーブランド「カバラン」との違いなど、詳しく解説していきます。
台湾のウイスキー「オマー(OMAR)」とは?

「オマー」は、台湾の内陸部に建てられた南投蒸留所で造られるウイスキーです。
ブランド名は、かつてスコットランドで話されていたゲール語の「琥珀(OMAR)」から来ています。
2013年10月にブランド初となるウイスキーをリリースしたばかりで歴史は浅いものの、多くの賞を獲得。
リリース翌年の2014年には「ISC(International Spirits Challenge)」や「SFWSC(San Francisco World Spirits Competition)」など、数々の権威あるウイスキーコンペティションで受賞したことを皮切りに、毎年受賞者リストに名前を連ねるようになりました。
現在では酒類関係者はもちろん、ウイスキー好きの消費者からも広く認知されはじめるなど、多くの注目を集める世界有数のウイスキーブランドの1つとして評価を受けています。
「オマー」を造る南投蒸留所の歴史
1978年 | 元国営のタバコ・アルコール製造業者「TTL(Taiwan Tobacco and Liquor Corporation)」が、自社で保有している南投酒工場(南投酒廠)の敷地内に南投蒸留所を設立。 当時はウイスキー用の蒸留所ではなく、ブランデーやラムなど、さまざまなお酒が造られていた。 |
2008年 | ウイスキー専用の蒸留工場を設立。 技術者をスコットランドへ派遣し、ウイスキー造りに関する知識・技術を得ることで、本格的なウイスキー造りが可能となった。 |
2013年 | カスクストレングスで瓶詰めされ、バーボン樽熟成タイプ・シェリー樽熟成タイプの2種類のモルトウイスキーを「オマー」ブランド初のウイスキーとして発売。 |
2014年 | 2013年に発売した2種類のモルトウイスキーの2ndバッチをリリース。 世界的に権威のあるウイスキーコンペティションで高く評価され、「オマー」の名を世に知らしめる。 |
2015年 | ブランド初のシングルモルトウイスキーとして、バーボン樽熟成タイプ・シェリー樽タイプの2種類のウイスキーを発売。 他にもライチ酒の樽や梅酒(プラム酒)の樽を使って後熟したウイスキーなど、ほかでは類を見ない革新的なウイスキーも製造。 |
「オマー」がブランド発足から短期間で世界的な評価を得ているのは、1987年の南投蒸留所の設立以前から長年築いてきた、お酒造りの技術に裏打ちされているからでしょう。
現在までにリリースされているウイスキーは、軒並みコンペティションで受賞を果たすほど質の高いものばかりです。
「オマー」の特徴や製法
「オマー」は、トロピカルフルーツのような風味としっかりとした樽香が特徴です。
これは台湾の温暖な気候下で造られることで熟成の速度が速まり、樽の成分が早く染み込むからだといわれています。
「オマー」が世界に評価される要因の1つでもある、こだわりの製法を以下にまとめました。
- 原料:厳選したイングランド産の二条大麦を100%使用
- 糖化:最先端のドイツ製マッシュタンを使用
- 熟成樽:定番のバーボン樽・シェリー樽はもちろん、果実酒の樽も使用
- 瓶詰め:ノンチルフィルタード(冷却無ろ過)で瓶詰め
多くのウイスキーは瓶詰め前にチルフィルタード(冷却ろ過)を施し、ウイスキーの温度が低くなったときに液体内の成分が結晶化して白濁する現象を防いでいます。
しかし、チルフィルタードは液体内に溶け込んだ香味成分までもろ過してしまうため、ウイスキー本来のおいしさを逃してしまうことも。
「オマー」はノンチルフィルタードで瓶詰めしているため、ウイスキーが本来持つ複雑で豊かな風味がそのまま味わえます。
台湾ウイスキー「カバラン」との違い

「オマー」以外に、台湾にはもう1つの代表的なブランド「カバラン(KAVALAN)」が存在します。
両者ともにトロピカルフルーツのような風味がするのは共通していますが、他の部分でどのような違いがあるのでしょうか。
両ブランドの公式サイトに記載されている製法等の違いを、以下にまとめました。
オマー | カバラン | |
蒸留所の位置 | 山岳部で標高の高い山々の麓 | 海と山どちらにも面していて標高は低い |
熟成年数 | 3年以上 | 4年以上 |
【レビュー】「オマー」と「カバラン」飲み比べ
筆者が、エントリーモデルである「オマー シングルモルトウイスキー バーボンタイプ」と「カバラン ディスティラリー セレクト No. 1」をそれぞれ飲み比べました。
両者はそもそも製法が違うため、同じ基準での飲み比べとはいえないものの、「オマー」は原料の大麦由来のモルティな風味がしっかりと感じられ味わいのバランスが良く、「カバラン」はフルーティーさと甘さを強く感じました。
「オマー」の主なラインナップ

オマーは比較的入手がしやすいエントリーモデルから、希少性の高い限定モデルまで、幅広いラインナップを有しています。
今回はその中でも日本で現在入手できるラインナップをご紹介します。
ぜひ、ご自身で購入される際やバーで飲む際の参考にしてみてください。
オマー シングルモルトウイスキー バーボンタイプ

容量 | 700mL |
度数 | 46% |
受賞歴 | 2022 USC ファイナリスト 2020 ISC 金メダル賞 2020 TWSC 銅メダル賞 他多数 |
数ある「オマー」のラインナップの中でも、エントリーモデルに位置するウイスキーです。
バーボン樽で熟成されており、バニラやハチミツのような甘さ、大麦由来の香ばしさ、マンゴーのようなフルーティーさ、フローラルな風味が楽しめます。
「オマー」のスタンダードな味わいを知るためにも、一度は飲んでおきたい1本です。

オマー シングルモルトウイスキー シェリータイプ

容量 | 700mL |
度数 | 46% |
受賞歴 | 2020 TWSC 銀メダル賞 2019 CMB 金メダル賞 2019 ISC 銀メダル賞 他多数 |
こちらも「オマー」のラインナップの中でエントリーモデルに位置するウイスキーです。
シェリー樽で熟成されており、トロピカルフルーツのような華やかな甘さに加え、レーズンやチョコレートのような深い甘みも感じられます。
先ほどご紹介した「オマー シングルモルトウイスキー バーボンタイプ」とともに、「オマー」ならではのスタイルを知るために飲んでおきたい1本です。

オマー シングルモルトウイスキー ピーテッドタイプ

容量 | 700mL |
度数 | 46% |
受賞歴 | 2022 SFWSC 銀メダル賞 2022 LSC 銀メダル賞 2022 WWA 銀メダル賞 |
こちらもエントリーモデルに位置するウイスキーの1つです。
ピーテッドモルト原酒をオーク樽で熟成したタイプで、バニラのような甘さ、シトラスのような爽やかさ、スモーキーな余韻が楽しめます。
スモーキーさが特徴であるスコッチウイスキーのアイラモルトと比べると、そこまで強いクセはありません。

オマー カスクストレングス・シングルモルトウイスキー 梅樽(プラム樽)

容量 | 700mL |
度数 | 51~59%(リリースごとに変化) |
受賞歴 | 2022 TWSC 銅メダル賞 2021 SFWSC ダブル金メダル賞 2019 WWA 台湾最優シングルモルト 他多数 |
「梅酒(プラム酒)」の樽を使って後熟させた、カスクストレングスタイプのウイスキーです。
バニラのような甘さとオリエンタルな樽香、トロピカルフルーツのようなフルーティーさに加え、プラムのような甘酸っぱさも感じられます。
カスクストレングスとは?
加水を行わず、原酒を樽から取り出したままの度数で瓶詰めしたウイスキーのこと。
多くのウイスキーは加水によって商品の味を均一にしているが、カスクストレングスのウイスキーは原酒を取り出す樽ごとに度数が異なるため、リリースごとに味わいが若干異なる。
オマー カスクストレングス・シングルモルトウイスキー ライチ樽

容量 | 700mL |
度数 | 51~59%(リリースごとに変化) |
受賞歴 | 2021 IWSC 銅メダル賞 2020 SFWSC 特等金メダル賞 2018 IWSC 金メダル賞 他多数 |
世界でも類を見ない「ライチ酒」の樽で後熟した、カスクストレングスタイプのウイスキーです。
バニラのような甘さ、大麦由来の香ばしさ、シトラスやライチのようなフルーティーさをしっかりと感じられます。
オマー カスクストレングス・シングルモルトウイスキー ワイン樽

容量 | 700mL |
度数 | 51~59%(リリースごとに変化) |
受賞歴 | 2021 USC ファイナリスト 2019 IWSC 銅メダル賞 2018 SFWSC 銀メダル賞 他多数 |
日本で開発された赤ワイン用黒ブドウ品種「ブラッククイーン」で造られるワイン。
そのワインの熟成に使われた樽で後熟した、カスクストレングスタイプのウイスキーです。
ドライフルーツのような甘さ、トーストのような麦由来の香ばしさ、ワイン樽によるタンニンのニュアンスを伴った余韻が楽しめます。

オマー カスクストレングス・シングルモルトウイスキー オレンジ樽

容量 | 700mL |
度数 | 51~59%(リリースごとに変化) |
受賞歴 | 2022 TWSC 銅メダル賞 2022 IWSC 銅メダル賞 2021 ISC 銀メダル賞 他多数 |
オレンジブランデーの樽で後熟した、カスクストレングスタイプのウイスキーです。
ハチミツのような甘さ、オレンジブランデー由来の爽やかなフルーティーさ、フローラルな華やかな風味が楽しめます。

オマー カスクストレングス・シングルモルトウイスキー バージン・オーク樽

容量 | 700mL |
度数 | 46% |
受賞歴 | 2022 CMB 金メダル賞 2022 SFWSC ダブル金メダル 2022 WWA 分類優勝 他多数 |
アメリカンホワイトオークの新樽(バージンオーク)で熟成した、カスクストレングスのウイスキーです。
バニラのような甘さ、トロピカルフルーツのような風味、刺激的なスパイシーさ、新樽由来の強い樽香を感じます。

「オマー」のおすすめの飲み方

台湾ウイスキーに特有のトロピカルな風味を楽しむために、どの銘柄もまずはストレートで飲むのがおすすめです。
カスクストレングスタイプの銘柄は、ストレートもしくはロックで飲むほうが、ウイスキー本来の味わいが楽しめます。
ソーダ割りや水割りで飲みたい方は、「オマー シングルモルトウイスキー バーボンタイプ」がバランスよく作れておすすめです。
「オマー」のネット上での評判

「オマー」を実際に飲んだ方々の感想を、Twitterからいくつかご紹介します。
Twitter内の評判は概ね良く、トロピカルフルーツのような風味を評価する声が多くありました。
悪い評判としては、カスクストレングスシリーズで使われている熟成樽の風味をネガティブに捉えてしまう方もいるようです。
まとめ
今回ご紹介した台湾ウイスキー「オマー」は、2013年に初めてウイスキーをリリースしたばかりの新ブランドです。
温暖な気候で造られることによって生まれるトロピカルフルーツのような風味が特徴で、世界中で高い評価を受けています。
バーボン樽熟成タイプやシェリー樽熟成タイプといったスタンダードなラインナップをはじめ、果実酒の樽を使ったユニークな銘柄も揃っていますので、それぞれ飲み比べてみると「オマー」の良さがより一層感じられるはずです。
まだ台湾ウイスキーを飲んだことのない方や、「オマー」というブランドを初めて知った方は、これを機にぜひ一度飲んでみてはいかがでしょうか。