個性豊かな飲食店で賑わう街、大阪・天満。最寄り駅から徒歩数分、静かな住宅街を抜けた先に「BAR 寅馬」はあります。
オーナーは、寅年生まれの下司 洋輝(げし ひろき)さん。BAR経営のかたわら、『Whiskeen』でライターも務める人物です。
今回は、バーオープンまでの経緯やおすすめのウイスキー、将来へ向けた思いなどについて伺いました。
オーナープロフィール
寅と馬、2人で始めた気さくなバー

「BAR 寅馬」がオープンしたのは、2019年7月23日(火)のこと。京都出身・寅年生まれの洋輝さんと、沖縄出身・午年生まれの真理華(まりか)さんの2人でスタートしたお店です。
昨年、2人の間には第一子が誕生し、現在真理華さんは育休中。
アメリカンテイストな店舗は、洋輝さんが1人で切り盛りしています。
「大阪で初めて勤めた飲食店は、お好み焼き屋さんでした。当時は仕事のあとバーに行くたびに、バーテンダーってかっこいいなぁって思っていましたね。」
やがて、洋輝さんは市内のバーへ転職。そのきっかけとなったのが、飲食店での人間模様を描いたドラマ『深夜食堂』の存在です。
「ドラマにであったのは、ちょうど将来について迷っていた時期でした。ひとつの店にいろんな人が来て、ときに仲良くなって、店主は人生の一部にそっと寄り添う。これはおもしろいなぁって。何かするなら、以前から興味があったバーだなと確信しました。」
ときには夜の喫茶店のように利用してもらいたいと、「BAR 寅馬」には4つのテーブルとカウンター席が設けられています。
奥には入り組んだスペースがあり、大切な人と静かな時間を過ごしたいときにもおすすめです。

メニューには自慢のレモネードをはじめとするソフトドリンクも並び、お酒を飲む人も飲まない人も楽しい時間を共有できます。
とはいえ、コロナ禍を経て世間の飲酒スタイルが変化しているのも現実です。
店がオープンしたのは、誰もが未曾有の事態を想像し得なかった時期。「BAR 寅馬」もまた、オープンからわずか9カ月足らずで休業を余儀なくされたのでした。
当たり前が、人を笑顔にする

日本国中がラグビーワールドカップ開催に沸き立った2019年。
オープン当初の「BAR 寅馬」も、プロジェクターによるラグビー観戦とお酒を目当てにした外国人観光客で賑わいました。
コロナウイルス感染症が猛威を振るい始めたのは、ちょうど店の売上が安定し始めたころ。
店は2020年4月から休業と再開を繰り返し、結局1年半ほど営業できない状態が続きます。
「当時はもう、開き直るしかなかったですね。めったにできない経験をさせてもらったと今ならそう言えます。」
常連さんに助けられつつ、ここまで来られたと語る洋輝さん。
休業中に知人の手で制作されたシャッターは、今では待ち合わせの目印になり、昼間は近所の子どもたちが喜んで前を通るといいます。

コロナ禍も気負うことなく、寅と馬、2人で続けたバーの人気メニューはハイボールです。
グラスをきちんと氷で冷やし、ウイスキーを注いでさらに冷やしたら、炭酸をゆっくり入れてステアする。
基本に沿った当たり前のことをしているだけと、洋輝さんは照れくさそうに笑います。



ハイボールにあうフードメニューの充実ぶりも注目です。
トロトロの「軟骨ソーキ」のレシピは、真理華さんのお母様直伝だそう。
沖縄だしをきかせた「やきそば」は、スパムの旨味と塩味がお酒を進ませます。
野菜をふんだんに使用した「タコライス」も店の定番メニューです。
店内のアメリカンなイメージに合わせ、ウイスキーはバーボンを中心に揃えられています。
青春時代にバーボンを嗜んだ50代のお客様からは「こんなんあるんや、懐かしい」「昔はここみたいな酒場でよう飲んだわ」と喜ばれることも多いそう。
真理華さんが居た頃は“ネオスナック”とも呼ばれていたという「BAR 寅馬」。
今回は、メニューにはない、おすすめウイスキーをこっそりと教えていただきました。
「ウィレット ファミリー エステート スモールバッチ ライ 4年」

ライ麦を主原料とするライウイスキーは、洋輝さんおすすめのジャンルだそう。
「Willett(ウィレット)」は、アメリカケンタッキー州にあるバーズタウンで古い歴史を持つ蒸留所。
なかでも「ファミリー エステート」は世界的評価の高い人気商品だといいます。
「梅干しみたいな風味があるでしょう?」と洋輝さんがおっしゃるように、後口に残るソルティな風味と独特のアタックが印象的。
赤みがかった琥珀色を店内のライトがきれいに照らします。
「コルセア オートレイジ」

店の雰囲気に絶妙にマッチするこちらは、洋輝さんが思わずジャケ買いしたという1本。
色が濃くなるまで焙煎した大麦麦芽を使用し、まるでコーヒーのような香りとコクを生み出しています。
「牛乳で割ってもおいしいですよ」と洋輝さん。知らないお酒、飲み方にであえるのはバーならではの醍醐味です。
こちらもメニューには載っていない銘柄のため、ぜひ洋輝さんに直接声をかけてみてください。
楽しく飲んで笑ってもらえるのがいちばん

「最近、やっと1人で営業するペースに慣れてきました。はじめは勝手がわからなくて苦労しましたね。気配り上手な彼女に助けられていたんだなと、あらためて実感しています。」
1人で写真に写るのは苦手なんですと、照れくさそうにカメラの前に立ってくれた洋輝さん。
真理華さんの姿はないものの、手書きのイラストや手作りソーキなど、店のあちこちにその存在が感じられます。
「カウンターのこっち側から、お客さんが楽しそうにしているのを見るのが好きなんです。難しいことは考えず、ただ笑って、楽しかったって帰ってもらえればそれでいい。やっぱりこういう場所、バーという居場所は、人にとって必要なものなんじゃないかな。」
洋輝さんにお話を聞く合間も、「お疲れさまー」「また来ちゃった」と扉を開けてやって来る常連さん。
ポップな雑貨で彩られた店内は、どこか懐かしさを感じさせる空気に包まれています。
おもしろいことにどんどんチャレンジしたいという「BAR 寅馬」では、イベント開催も予定しているそう。
店内にはプロジェクターを完備し、パーティー利用にも対応可能です。
1人でゆっくり、オーナーとのおしゃべりを楽しみに、気の合う仲間でワイワイと楽しみ方は気分次第。
お酒好きへの懐が深い街、大阪天満の「BAR 寅馬」へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
「BAR 寅馬」
所在地/大阪府大阪市北区同心2-7-19-101
電話番号/06-6949-9223
アクセス/堺筋線「扇町駅」より徒歩4分、大阪環状線「天満駅」より徒歩5分
「BAR 寅馬」の公式サイトはこちらから