「オールド クロウ」は、ケンタッキー州で造られている歴史のあるバーボンウイスキーです。
カラスの絵のパッケージが目を引きます。
比較的安く購入できるウイスキーですが、世界中で評価されているウイスキーです。
この記事では「オールド クロウ」の歴史や名前の由来、製法をご紹介します。
名前の由来、歴史、製法を知れば「オールド クロウ」がいかに優れたバーボンなのかが分かりますよ。
また、ラインナップやおすすめの飲み方も紹介しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
この記事の監修者

「オールド クロウ」とは
カラスの絵のパッケージが目印のバーボン「オールド クロウ」。
「オールド クロウ」はとても歴史が古いバーボンで、誕生してからアメリカはもちろんのこと世界中でも愛飲されています。
特に、著名人にも愛されるバーボンウイスキー銘柄のひとつで、以下の偉人・著名人などがファンだったそうです。
- アメリカ第7代大統領、アンドリュー・ジャクソン
- アメリカ第9代大統領、ウィリアム・ヘンリー・ハリソン
- アメリカ18代大統領、ユリシーズ・グラント
- 南北戦争時の南軍 将軍、ジュバル・アーリー
- ケンタッキー州出身の政治家、ヘンリー・クレイ
日本では、昭和の名俳優・松田優作が愛していていたことでも有名です。
オーナーが何度か変わったウイスキーですが、現在はビームサントリーが製造・販売をしています。
バーボン「オールド クロウ」の誕生は、後のバーボン造りに大きな影響を与えました。
気になる名前の由来
まずは「オールド クロウ」という名前の由来について解説しましょう。
バーボン「オールド クロウ」の名前の由来は、製造者のジェイムズ・クロウにちなんで付けられました。
前述でも触れたように、ジェイムズ・クロウは「サワーマッシュ」というバーボンの製法を生み出した偉大な人物です。
彼の生み出したサワーマッシュ製法は、後のバーボン造りに革命的な影響を与えることになります。
そんなジェイムズ・クロウは優秀な蒸留者で、依頼されてウイスキーを蒸留していました。
彼の作るウイスキーは非常に評判がよく、依頼者たちは蒸留酒を「クロウ」や「オールド クロウ」と呼んでいたそうです。
高いコーン比率と4年熟成のリリース
「オールド クロウ」は他のバーボンと比べてコーン比率が高く、原料の70〜80%がコーン。
熟成樽には内側を焦がしたオーク樽を使用することで「オールド クロウ」の原酒の香りや風味を高めています。
これまで「オールド クロウ」は、3年の熟成期間を守り続けてきましたが、2010年には4年熟成の「オールド クロウ リザーブ」がリリースされました。
「オールド クロウ リザーブ」の販売により、スタンダードボトルに比べてコクや深みのある「オールド クロウ」が飲めるようになったのです。
「オールド クロウ」の発祥と歴史
「オールド クロウ」の歴史は古く、1835年に販売が開始されました。
販売当時から評判がかなり良かった「オールド クロウ」。
なぜそこまで評価されたのかは、「オールド クロウ」の発祥と歴史を知る必要があります。
化学的視点で造るバーボンウイスキー
「オールド クロウ」の生みの親ジェイムズ・クロウは、スコットランド出身の医学博士で化学者という経歴の持ち主です。
移民として1820年代にアメリカのケンタッキーに渡り、医者として働く傍ら、蒸留所で働き始めます。
当時のバーボンは職人が長年の経験による勘で発酵や蒸留を行っていたので、味にばらつきがありました。
そこでジェイムズ・クロウは、どうにかして味を安定させ、美味しいバーボンを造れないか考えます。
ジェイムズ・クロウは糖度や温度、アルコール度数のチェックを徹底的に管理してレシピを数値化し、化学的視点からバーボンを造ったのです。
試行錯誤の結果、前述でご紹介したサワーマッシュ製法を編み出し、ばらつきがあったバーボンの味の安定に成功しました。
「オールド クロウ」の隆盛と蒸留所の誕生
ジェイムズ・クロウの蒸留技術は高い評判となり、やがて彼はオールド・オスカー・ペッパー蒸留所(現在のウッドフォード蒸留所)で働き始めます。
経営者のオスカー・ペッパーはジェイムズ・クロウが開発したバーボンに感銘を受け、「オールド クロウ」として1835年に発売しました。
この時代、ブランド名で販売されているバーボンは、ほとんどなかったそうです。
他のウイスキーと一線を画す「オールド クロウ」ブランドは、品質の高いウイスキーと認知されました。
アメリカ国内で飛ぶように売れていた「オールド クロウ」ですが、1856年にジェイムズ・クロウが亡くなったことで状況が変わります。
ジェイムズ・クロウのレシピの引き継ぎがうまくできておらず、オリジナルの味や香りはこの年で失われてしまったようです。
その後、経営者のオスカー・ペッパーも亡くなり、経営はゲインズ・ベリー&カンパニーが引き継ぎました。
レシピはなくなっていましたが、ジェイムズ・クロウの助手ウィリアム・ミッチェルがいたことで、何とかオリジナルに近い「オールド クロウ」を造れました。
そして、1870年にゲインズ・ベリー&カンパニーが、ついにオールド クロウ蒸留所を開設。
この頃になると「オールド クロウ」は著名人に愛されるバーボンとなっており、19世紀のバーボン、ライウイスキーブームの立役者となりました。
売却、そして放棄された蒸留所
「オールド クロウ」は誕生して100年以上、アメリカのバーボン産業をけん引する存在でした。
しかし、1960年代に蒸留所の改修をした際、タンクやファーメンター(発酵槽)のサイズを誤って発注し、分量や配合を間違えたことをきっかけにどんどん味が落ちてしまいます。
当時の所有者は、ナショナルディスティラーズ社。
蒸留所の改善はうまくいかず、1980年代に入ると急激な顧客離れに陥りました。
その結果、1987年にかつてのライバルだったジムビーム社に買収されてしまったのです。
オールド クロウ蒸留所はジムビームに買収されるとすぐに閉鎖。
現在でも樽保管のために使われている倉庫がありますが、老朽化が進んでいた倉庫は1990年代には放棄されます。
オールド クロウ蒸留所の現在
現在「オールド クロウ」を造っているのは、ジムビーム社が所有しているクレアモントの蒸留所です。
放棄されたオールド クロウ蒸留所は、2013年にニール・クレイグ氏とそのパートナーのデビット・マイヤー氏が買い取りました。
ニール・クレイグ氏は、バーボン造りのパイオニアともいわれているエライジャ・クレイグの子孫にあたります。
彼はさまざまな蒸留酒を造るべく新たにグレンズクリーク蒸留所を立ち上げて、建物の保存と改修に努めています。
「オールド クロウ」の製法

バーボン造りの基礎を作ったと言っても過言ではない「オールド クロウ」。
ジェイムズ・クロウ考案のサワーマッシュ製法に加えて、今では当たり前に行われている樽熟成をいち早く取り入れていたといわれています。
バーボン造りに革命を起こした「オールド クロウ」の製法を解説していきましょう。
クロウ博士考案のサワーマッシュ製法
サワーマッシュ製法とは、すり潰した穀物液(マッシュ)にバーボン蒸留時に残った残留液を混ぜ合わせる製法です。
残留液とは、蒸留時に残るアルコールの抜けた蒸留廃液のこと。
この残留液の酸性度が高いことから、製法にサワーマッシュ(酸っぱいマッシュ)という名前が付けられました。
バーボン造りには糖化・発酵という工程があります。
原料を糖化させる際は、まず原料の穀物を細かくすり潰しお湯につけてトロトロにします。
この粥状の穀物液がマッシュです。
マッシュの糖化が終わると、酵母を添加し発酵に移ります。
この糖化・発酵の過程で、マッシュに残留液を混ぜるのがサワーマッシュ製法です。
サワーマッシュ製法のメリットは、酸性の残留液を足すことで糖化環境が整うことです。
バーボンの仕込み水はアルカリ性の石灰水。酸性の残留液との相性がよいため、糖化がスムーズに進むのです。
他にも雑菌が繁殖しにくい、酵母の成長が促進されるなどの利点もあり、これによりウイスキーの味に深みが増して品質が安定します。
サワーマッシュ製法で造ったバーボンが残留液の酸味を引き継ぐことはないのでご安心を。
熟成樽の先駆け
今では当たり前となっている樽熟成ですが、「オールド クロウ」はいち早く樽での熟成を取り入れています。
当時は、熟成させない透明のスピリッツでもウイスキーと名乗っていました。
今でも、あえて熟成させていないウイスキーはあります
しかし、ジェイムズ・クロウは早くから熟成の有効性を認識しており、樽熟成を取り入れていました。
「オールド クロウ」は、当時ではあり得ないほど革新的な製造方法で造っていたバーボンということですね。
「オールド クロウ」のラインナップとおすすめの飲み方
「オールド クロウ」にはさまざまな種類があります。
あわせて、おすすめの飲み方も紹介しますので、参考にしてください。
「オールド クロウ」
アルコール度数:40%
「オールド クロウ」のスタンダードボトル。
価格も安くて家の晩酌用ボトルにもってこいです。
アルコールの香りがしっかりしたバーボンですが、バニラやナッツのような甘い香りもほのかに感じられます。
味わいはアルコール特有の辛味はあるものの、その後フルーティーな甘味が追いかけてきます。
おすすめの飲み方
「オールド クロウ」は3年という比較的短い熟成期間です。
ストレートやロックでもおいしく飲めるのですが、ハイボールにすることで「オールド クロウ」のクセがマイルドになり、フルーティーな味わいをさわやかに感じられます。
ジンジャーハイやコークハイにするのも、おすすめです。
「オールド クロウ リザーブ」
アルコール度数:43%
スタンダードボトルより1年長い、4年熟成の「オールド クロウ リザーブ」。
熟成期間が1年長い分、樽の香り、香ばしさが増しています。
スタンダードボトルのアルコールの辛味がマイルドになっている印象があります。
現在は並行輸入品やギフトなどという形でしか、日本で販売されていないようです。

おすすめの飲み方
スタンダードボトルよりもマイルドになっているので飲みやすく、ロックやストレートはもちろんハイボールでもおいしくいただけます。
「オールド クロウ ボンデッド」
「オールド クロウ ボンデッド」はボトルド・イン・ボンド法に従って造られています。
ボトルド・イン・ボンド法は、一昔前のバーボンの製造に関する法律です。
- 単一の蒸留所で製造
- 1年のうちの1シーズンに蒸留された原酒のみを使用
- 政府が管理している保税倉庫で4年以上熟成
- アルコール度数50%以上でボトリング
ボトルド・イン・ボンド法を守って造ったバーボンだけが「ボンデッド」と名乗れます。
ボトルド・イン・ボンド法は現在では廃止されている法律ですが、「ボンデッド」という表記は、品質の高さを示しています。
90年代によく流通していたようですが、現在はかなり希少なバーボンとなってしまいました。
なお、アルコール度数は50%ありますが、高いアルコール度数を感じさせない甘味と芳醇な香りを感じられます。
おすすめの飲み方
「オールド クロウ ボンデッド」は現在かなり希少なので、飲むならストレートかロックがおすすめ。
バーなどで見かけたらぜひ飲んでみたい一品です。
「オールド クロウ トラベラー」
「オールド クロウ トラベラー」は旅行などのお出かけの際に持って行けることをコンセプトに造られました。
スリムでスタイリッシュなボトルデザインが特徴です。
1960年〜1970年代に流通していた商品で、現在は希少品となっています。
フルーティーな香りとバニラやキャラメルのようなまったりした甘味があり、そこに心地よい苦味とスパイシー感も感じられるバランスの良いバーボンです。
おすすめの飲み方
こちらもかなり希少なので、ストレートかロックがおすすめ。
味わいもすばらしいですし、ボトルデザインも素晴らしいといえます。
ボトルを眺めながらゆっくりと飲みたいですね。
「オールド クロウ ローリングK」
「オールド クロウ ローリングK」は日本人向けに造られたボトル。
オールド クロウ蒸留所が閉鎖した翌年の1988年から造られていることから、旧オールド クロウ蒸留所の原酒が使われていた可能性があります。
味わいはスタンダードボトルよりもまろやかにした印象。
現在は終売となっています。

おすすめの飲み方
とても飲みやすいバーボンなのでストレート、ロック、水割り、ハイボールなんでもいける万能タイプのバーボンです。
まとめ
サワーマッシュ製法や樽の熟成をいち早く取り入れた革新的なバーボンだったことから、「オールド クロウ」はバーボンの歴史を変えたと言っても過言ではありません。
スタンダードボトルは価格も1,500円ほどで購入可能ですので、家の常備ボトルとしてもおすすめです。
名だたる著名人が愛した「オールド クロウ」。
ぜひ一度お試しあれ。
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