「フロム・ザ・バレル」というウイスキーを見聞きしたことがあるという方もいるのではないでしょうか。
「フロム・ザ・バレル」はニッカウヰスキー社から販売されているジャパニーズ・ブレンデットウイスキーで、小ぶりながらも印象的なボトルデザインを持つウイスキーとして知られています。
この記事では、「フロム・ザ・バレル」について概要やボトルデザイン、定価以下で購入できる店舗について解説します。
「フロム・ザ・バレル」おすすめの飲み方についてもご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
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「フロム・ザ・バレル」とは?
「フロム・ザ・バレル」は、1985年にニッカウヰスキー社から発売されているブレンデッドウイスキーです。
本格的な味わいと良心的な価格から、ウイスキーファンに愛されています。
ニッカウヰスキーの創業者は竹鶴政孝(たけつる まさたか)で、日本にウイスキーを広めた伝道者として有名です。
ニッカウヰスキー創業者が主人公のドラマ「マッサン」
「日本のウイスキーの父」と呼ばれる程の影響力があったとされる竹鶴政孝ですが、彼の名を日本中に広めることとなったきっかけとなったのが、NHK連続ドラマ「マッサン」です。
「マッサン」は2014年9月から2015年3月までの半年間、NHKにて放送された結果、関東地区での平均視聴率は21.1%と世間を騒がせる超人気ドラマとなりました。
参考:「マッサン」平均視聴率は21・1% 過去10年で3番目
主人公のマッサンこと竹鶴政孝が、日本にウイスキーを広めるという内容のドラマ「マッサン」。
さまざまな困難を乗り越えながら「余市」という銘柄のウイスキーを誕生させたシーンだけでなく、妻のエリーが亡くなってしまったシーンは多くの視聴者が涙したことでしょう。
ドラマ「マッサン」が始まってからは、多くのスーパーやコンビニでウイスキーが品切れになってしまうほど、空前のウイスキーブームが到来します。
特にニッカウヰスキーは一番ウイスキーブームの影響が強く、余市やニッカシリーズを中心に、さまざまな銘柄が大人気になりました。
「フロム・ザ・バレル」ならではの製造方法
空前のウイスキーブームの中でも、他の銘柄と違った製造方法や特徴的な香りや味わいで存在感を出しているウイスキーが「フロム・ザ・バレル」です。
では、「フロム・ザ・バレル」製造方法には、どんな工夫があるのでしょうか。
「フロム・ザ・バレル」の製造方法には2つの特徴があります。
・マリッジ
・樽出し 51度
詳しくご紹介します。
マリッジ
1つ目の「フロム・ザ・バレル」の製造方法の特徴、「マリッジ」です。
2つの原酒が結婚した夫婦のようになじみ合うことから、マリッジと呼ばれます。
「フロム・ザ・バレル」と一般的なウイスキーの熟成・樽詰めの過程を比較してみましょう。
一般的なブレンデッドウイスキーの熟成・樽詰め過程 | フロム・ザ・バレルの熟成・樽詰め過程 |
1. 熟成 2. モルト原酒とグレーン原酒のブレンディング 3. ボトル詰め | 1. 熟成 2. モルト原酒とグレーン原酒のブレンディング 3. 2をもう一度樽に入れて、数カ月熟成(マリッジ) 4. ボトル詰め |
一般的なブレンデッドウイスキーの工程に含まれていないマリッジの工程によって、2つの原酒が合わさった濃厚な香りや味わいが生まれるのです。
樽出し 51度
「バレル」は「樽」という意味で「フロム・ザ・バレル」という名前は「樽出し」という製法を表しています。
一般的なウイスキーは、瓶詰めする際に水を加えること(加水)でアルコール度数を調整しますが、一方の「樽出し」は加水量を最低限に抑えているので、より原酒に近い味わいや風味が楽しめます。
そのため、一般的なウイスキーのアルコール度数が40%~43%であるのに対して、樽出し製法の「フロム・ザ・バレル」は51%という高いアルコール度数をキープできるのです。
ただし、アルコール度数が高ければ良いというわけではありません。
アルコール度数が高くなると当然、アルコールの刺激や辛みは強くなります。
樽出し製法のウイスキーでは、キツさや辛みを抑えながら、原酒の味わいや香りを感じられるようなバランスが求められるのです。
マリッジ製法によって生まれ、クセのない調和された「フロム・ザ・バレル」の甘みによって、高いアルコール度数との絶妙なバランスがとれているといってもよいでしょう。
コストよりもこだわり重視!「フロム・ザ・バレル」の香りと味
基本的に、コンビニに並ぶリーズナブルなウイスキーや大衆居酒屋のウイスキーには、マリッジと樽出しが用いられることは滅多にありません。
理由は単純で、コストがかかるからです。
コストよりもこだわりを追い求めて製造された「フロム・ザ・バレル」からは、どんな香り、どんな味わいが生まれるのでしょうか?
香り
51%のアルコール度数でも優しい口当たりなのは、「フロム・ザ・バレル」の香りが強く影響しているからといえます。
まず強く残るのが、フルーティーな甘い香りです。
「フロム・ザ・バレル」の甘さの奥には、柑橘系の爽やかさも感じられます。
また、長時間樽に熟成されることで生まれる、木の持つ落ち着いた残り香も感じられるでしょう。
「フロム・ザ・バレル」独特の柔らかい香りも、樽の匂いや、樽の取り込む微量な外気がそのままウイスキーになじむことにより生まれます。
味わい
「フロム・ザ・バレル」は舌に絡むような甘さと粘性のあるウイスキー。
リッチな味わいで、優しい印象です。
マリッジ製法で生まれたコクを感じ、なめらかに喉を通った後には、スモーキーな余韻が長く残ります。
最後まで51%のアルコール度数を感じさせない、温かみのある味わいが特徴です。
「フロム・ザ・バレル」の市場価格
高品質なお酒には付きもののプレミア価格。
冒頭で「フロム・ザ・バレル」は良心価格だとお伝えしましたが、実際の市場価格はいくらなのでしょうか。
通信販売サイト大手の「楽天市場」を参考に見ていきましょう。
・定価(メーカー希望小売価格)……税別2,400円 ・市場価格(楽天市場の場合)……3,900円~5,900円程度 |
※量り売り除く
正直、「楽天市場」の市場価格帯である5,900円でも「安い」と感じてしまうという方もいるかもしれません。
「フロム・ザ・バレル」は高品質な味わいにも関わらず定価は2,400円ですので、これほどコストパフォーマンスの高いウイスキーは珍しいのではないでしょうか。
【編集部調査】「フロム・ザ・バレル」はどこで安く買えるのか?
高品質でプレミア価格がついてしまうのは仕方がないものですが、「それでもできるだけ安く買いたい」というのが全消費者の願いでしょう。
では、どこに行けば安く買えるのでしょうか。
Whiskeen編集部がSNSを中心に以下の購入場所について調査してみました。
・ドン・キホーテ
・やまや、カクヤスなどの酒屋
・各コンビニやスーパーマーケット
・成城石井の通販
・インターネット通販
「今日はフロム・ザ・バレル入荷してるかな?」と、宝探し気分で買い物をすると楽しくなるかもしれませんよ。
ドン・キホーテ
2,400円前後
「フロム・ザ・バレル」がドン・キホーテで定価で買えるかもしれません。
どの商品も安いドン・キホーテですが、なんとお酒も定価以下で買えることもあるようです。
ドン・キホーテに行った際には、ぜひお酒コーナーもチェックしてみましょう。
酒屋(やまや、カクヤスなど)
2,400円前後
「やまや」や「カクヤス」など酒類に特化した店舗でも定価以下で購入可能のようです。
酒屋さんということから、大量入荷することも多いのだとか。
各コンビニやスーパーマーケット
2,300円~3,000円前後
「フロム・ザ・バレル」は、各コンビニやスーパーでも、運が良ければ巡りあえるかもしれません。
お店によっては定価以下で販売しているようです。
成城石井の通販
2,500円前後
「フロム・ザ・バレル」はAmazonなど通販だとプレミア価格が基本なのですが、成城石井は定価で購入できる場合があります。
人気で売り切れも早いため、定期的にチェックすると良いかもしれませんね。
インターネット通販
3,900円~5,800円前後
「来週のプレゼント用にフロム・ザ・バレルを絶対入手しなければならない!」
という時は、プレミア価格になってしまいますが、Amazonや楽天市場などのインターネット通販がおすすめです。
早く確実に入手するための手数料だと割り切りることも、いざという時には大事だといえます。
「フロム・ザ・バレル」のパッケージデザイン
お店に並んだウイスキーを眺めると、「フロム・ザ・バレル」のパッケージやデザインが特徴的なことに気が付きます。
「フロム・ザ・バレル」のボトルをデザインしたのは日本のグラフィックデザイナーの佐藤卓氏です。
「フロム・ザ・バレル」のパッケージはどんなデザインで、どんな意味が込められているのでしょうか。
500mlで試験瓶のような「フロム・ザ・バレル」のボトルデザイン
一般的なウイスキーボトルは700mLで、加えてウイスキーの特徴がひと目で分かるように、高級感あるラベルデザインを施します。
しかし、「フロム・ザ・バレル」の場合は500mLという他とは違う容量だけでなく、ボトルデザインもシンプルです。
お世辞にもオシャレとは言えませんし、人によっては数百円の安価なウイスキーに見えてしまうかもしれません。
「フロム・ザ・バレル」のフォルムは、蒸留所でウイスキーを保存する試験瓶がモデルになっているとのこと。
ニッカウヰスキーの公式サイトより「フロム・ザ・バレル」のデザインを担当した佐藤卓氏の著書「クジラは潮を吹いていた。」を抜粋してみましょう。
氏の著書「クジラは潮を吹いていた。」では
「強くて濃いウイスキーが、どのようなボトルであるべきか。私は「小さな塊」にしたいと思った。濃いものは少ない量のほうが美味しそうである。・・(中略)・・味の濃いものは少ない量。つまり、小さな塊という隠喩に則ってこのような首の短い四角いボトルをデザインした。四角いボトルは同量の円柱ボトルとくらべ、正面から見て小さくなる。」と語られています。
引用:フロム・ザ・バレル|商品紹介|NIKKA WHISKY
丸瓶ではなく角瓶にしたのも、正面から見て小さく見せるためかもしれませんね。
質素なデザインでも確かな自信!「フロム・ザ・バレル」受賞歴
「フロム・ザ・バレル」独自のコンセプトがあるとはいえ、店頭で選ぶ時にはきらびやかなデザインが目に入るもの。
質素なデザインでも飲んで貰えれば満足させられる、というニッカウヰスキーの絶対的な自信が伺えるのではないでしょうか。
その自信どおり、「フロム・ザ・バレル」には数々の受賞歴があります。
以下にまとめました。
受賞歴 |
・ISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ) 2012年~2015年・2016年・2019年金賞 受賞 ※2015年は「トロフィー(部門最高賞)」受賞 ・WWA(ワールド・ウイスキー・アワード) 2007年~2011年 ベスト・ジャパニーズ・ブレンデッドウイスキー(ノーエイジ) 受賞 ・2009年ベスト・ジャパニーズ・ブレンデッドウイスキー 受賞 |
大事なことなのでもう一度お伝えしますが、「フロム・ザ・バレル」は定価2,400円のウイスキーです。
それにもかかわらず、2015年に至ってはトロフィー受賞です。
年代物で数万円のウイスキーを差し置いて、これだけ何度もさまざまな賞を受賞しているウイスキーはとても希少です。
入手困難?フロム・ザ・バレルの種類【レア商品についても解説】
アルコール度数:51%
現在、ニッカウヰスキー社で紹介されているのは「フロム・ザ・バレル」1種類です。
後述しますが、「フロム・ザ・バレル」は公式サイトでの販売は行われておらず、現在も入手困難とされているボトルです。
レアな「フロム・ザ・バレル」3種類
現在は市場に出回っていないものの、ネットオークションや通販サイト、個人間取引サイトなどで購入できるものもあります。
以下の3種類のウイスキーに出合えたら、あなたはラッキーかもしれません。
・フロム・ザ・バレル特級
・フロム・ザ・バレル有田焼デザイン
・フロム・ザ・バレル(宮城峡蒸溜所限定)
詳しくご紹介します。
フロム・ザ・バレル 特級
アルコール度数:51.4%
通販サイトでも滅多にお目にかかれないレアな「フロム・ザ・バレル」の代表格が、「特級」の文字があしらわれた商品です。
かつてウイスキーには階級が定められていたという歴史的背景がありますが、その歴史を感じさせるボトルだといえます。
インターネット上で検索すると、やはりオークションサイトでの取引が目立ちます。
価格帯:1万800円前後
フロム・ザ・バレル 有田焼デザイン
アルコール度数:51.4%
有田焼のボトルデザインが美しい「フロム・ザ・バレル 有田焼デザイン」は、主に贈答用として流通していたボトルです。
1985年(昭和60年)10月に発売されていたため、現在公式サイトでは見かけません。
一部通販サイトやオークションサイトで手に入りますが、それでも取り扱っている場所が限られます。
贈答用としてだけでなく、部屋に飾るだけでもオシャレですよね。
ウイスキー好きの方にプレゼントするもよし、「フロム・ザ・バレル」をたのしんだ後にインテリアにしてもよいでしょう。
価格帯:5万3,000円~7万3,000円前後
フロム・ザ・バレル(宮城峡蒸溜所限定パッケージ)
アルコール度数:51.4%
中身は変わりませんが、パッケージデザインが宮城峡蒸溜所限定デザインの「フロム・ザ・バレル」です。
オークションサイトや通販サイトでも見かけることが珍しいため、出合ったアナタはラッキーかもしれません。
「フロム・ザ・バレル」終売のウワサは本当!?
改めて「フロム・ザ・バレル」のコストパフォーマンス、ポテンシャルの高さを実感できたことでしょう。
しかし、「フロム・ザ・バレル」には終売のウワサが広がっています。
Whiskenn編集部調べによると、2022年10月現在では、「フロム・ザ・バレル」は変わらずアサヒビール社の商品情報に掲載されているだけでなく、店舗でも見かけることがあるため販売中です。
終売の公式アナウンスも出ていません。
参考:https://www.asahibeer.co.jp/products/whisky_brandy/nikkablended/barrel/
では、なぜ終売の噂が広がるのでしょうか。
理由1)「フロム・ザ・バレル」が品薄
一番大きな理由は、常に品薄が続いている状況にあるからです。
品薄が続く状況であれば、終売の噂が立つのも自然なのではないでしょうか。
品薄が続いている背景には、製法と原酒不足にヒントが隠れています。
「フロム・ザ・バレル」はマリッジ製法によって、他の銘柄よりも時間とコストがかかります。
マリッジ製法では大量生産が難しく一定量しか製造できないため、品薄になってしまうのです。
理由2)原酒不足
そして、国産ウイスキー業界全体の問題として、原酒不足が挙げられます。
原酒の量が限られているため製造量を抑える必要があり、結果として需要に供給量が追いつかなくなってしまうという内容です。
今、終売予定がなくても、今後もしかすると終売や販売中止になる可能性はあります。
適正価格で飲める今のうちに、おいしく飲んでおきたいところです。
「フロム・ザ・バレル」のおすすめの飲み方
最後に、「フロム・ザ・バレル」に合ったおすすめの飲み方をご紹介します。
「フロム・ザ・バレル」は飲み方によって全く違った表情を見せてくれますので、ぜひ飲み比べてみてください。
ストレート
樽出しウイスキーの良さを最も感じられるのは、やはりストレートです。
特に「フロム・ザ・バレル」は、51%の度数ながら口当たりがよいことが特徴的。
ストレートで飲めば、きっと樽や蒸留所の空気まで感じられますよ。
迷ったらぜひストレートをお試しください。
トワイスアップ
「ストレートはすぐに酔っ払ってしまうけれども、しっかり味わいたい」という方には、氷を入れないトワイスアップがおすすめです。
ストレートの味わいを横に広げたような感覚で楽しめます。
香りを逃さないために、ワイングラスなどの口がすぼんだグラスが合いますので、試してみてください。
また、水を優しく注ぐことも、香りを逃さないための重要なポイントです。
トワイスアップの詳しい割り方については以下の記事も参考にしてみてください。
オン・ザ・ロック
ストレートやトワイスアップよりも、冷えて飲みやすいのがロックです。
飲み始めと最後の一口では温度や濃さも全く変わりますので、ウイスキーのグラデーションを楽しむのも一興ですね。
ハイボール
日本人に最も親しみ深いのがハイボールです。
「フロム・ザ・バレル」のアルコール度数は51%ですので、ハイボールにしても「フロム・ザ・バレル」らしさを味わえます。
レモンとまざった爽やかな香りを、心行くまで楽しんでみてください。
まとめ
「フロム・ザ・バレル」の定価は2,400円と、手の届きやすい良心的な価格設定です。
しかし、甘みとコクのバランス良い味わいは、数万円の年代物ウイスキーと比べても遜色ありません。
トロフィー(部門最高賞)の受賞がその証拠です。
トロフィー(部門最高賞)の受賞歴があるウイスキーですので、ヤフオク!などのオークションサイトやAmazonなどの通販サイトで購入しようとすると、どうしてもプレミア価格がつきやすい傾向にあります。
「フロム・ザ・バレル」を定価あるいはプレミア価格以下で購入したい場合は、ドン・キホーテや成城石井・コンビニに行った時に、ぜひお酒コーナーをチェックしてみてください。
「フロム・ザ・バレル」と定価あるいは定価以下の価格で巡りあえるかもしれませんよ。