世界5大ウイスキーのひとつ「アメリカンウイスキー」の人気が、現在急上昇中であることをご存じでしょうか。
アメリカは世界のウイスキーファンが注目するウイスキーの産地で、現在、新進気鋭のクラフト蒸留所が増えています。
バーボンのイメージの強い「アメリカンウイスキー」には、どのような種類や特徴があるのでしょうか。
今回は「アメリカンウイスキー」の特徴や種類、今知っておきたい「アメリカンウイスキー」の銘柄を5つ紹介します。
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アメリカンウイスキーの特徴
アメリカンウイスキーの定義は、連邦アルコール法によって、以下のように定められています。
- 穀物を原料として発酵させ、アルコール度数95%以下で蒸溜
- オーク樽で熟成(※コーンウイスキーは必要なし)
- アルコール度数40%以上でボトリング
アメリカンウイスキーと名乗るには、これらの条件をクリアしないといけません。
スコッチやジャパニーズウイスキーの主な原材料が大麦麦芽であることに対し、アメリカンウイスキーは原料にさまざまな穀物を使用するのも大きな特徴です。
アメリカンウイスキーとバーボンの違い
アメリカンウイスキーといえばバーボンと思われるかもしれませんが、バーボンはアメリカンウイスキーのひとつに過ぎません。
アメリカンウイスキーの中で「原料比率のうち51%以上トウモロコシが含まれているウイスキー」がバーボンです。
主原料がトウモロコシなので、甘くまろやかな味わいです。
アメリカンウイスキーの種類と定義
アメリカンウイスキーの種類と定義を紹介します。
バーボンウイスキー | ・原料比率のうち、トウモロコシを51%以上使用 ・内側を焦がしたオークの新樽を使用 ・アルコール度数80%以下で蒸留し、62.5%以下で樽詰めして熟成 ※熟成期間が2年以上経過したものをストレートバーボンウイスキーと呼ぶ |
ライウイスキー | ・原料比率のうち、ライ麦を51%以上使用 他は「バーボンウイスキーの定義」と同じ ※熟成期間が2年以上経過したものをストレートライウイスキーと呼ぶ |
ホイートウイスキー | ・原料比率のうち、小麦を51%以上使用 他は「バーボンウイスキーの定義」と同じ |
モルトウイスキー | ・原料比率のうち、大麦麦芽を51%以上使用 他は「バーボンウイスキーの定義」と同じ |
ライモルトウイスキー | ・原料比率のうち、ライ麦麦芽を51%以上使用 他は「バーボンウイスキーの定義」と同じ |
コーンウイスキー | ・原料比率のうち、コーンを80%以上使用 ・アルコール度数80%以下で蒸留 ※古樽、もしくは内側を焦がしていないオークの新樽を使用して熟成期間が2年以上経過したものをストレートコーンウイスキーと呼ぶ |
テネシーウイスキー | ・アメリカ・テネシー州で、チャコールメローイング製法(蒸留後にサトウカエデの炭でろ過する)で造られている 他は「バーボンウイスキーの定義」と同じ |
「アメリカンウイスキー」はそれぞれ主原料が違うので、味わいもさまざま。
ぜひ自分好みの「アメリカンウイスキー」を見つけてみましょう。
アメリカンウイスキーが今アツい
アメリカンウイスキーは昨今のウイスキーブームの波に乗り、どんどん需要が高まっています。
アメリカンウイスキーが「今アツい」要因をご説明しましょう。
新進気鋭の小規模蒸留所がたくさんできている
アメリカはクラフトウイスキーブームで、続々と小規模蒸留所が創業しています。
バーボンの本場ケンタッキー州以外でも蒸留所が増えており、独自の製法で造られた「クラフトアメリカンウイスキー」が魅力です。
小規模蒸留所では原料や製法にこだわっているところが多く、各蒸留所が個性的なウイスキーを造っています。
それに伴いクラフトウイスキーやスモールバッチウイスキーの価値が上がり、世界中のウイスキーファンから注目される「アメリカンウイスキー」が多く誕生しています。
アメリカンウイスキーベースのカクテルが人気
アメリカでは「アメリカンウイスキー」をベースとしたカクテルも人気で、ウイスキーを普段飲まない若者からも支持を得ています。
カクテルにすることで飲みやすくなったり、ウイスキーの良さをさらに引き出したりできます。
日本でも、コカ・コーラがテネシーウイスキーの「ジャックダニエル」とコラボした「ジャックダニエル&コカ・コーラ」を販売したことで話題となりました。
これがきっかけとなり、日本でも「アメリカンウイスキー」をベースとしたカクテルが流行するかもしれませんね。
今押さえておきたいアメリカンウイスキー5選
「アメリカンウイスキー」は自由度が高く、独自の原料や製法で造る蒸留所も増えてきました。
こだわりの原料や製法で今後話題になりそうな「アメリカンウイスキー」を5つ紹介しましょう。
コルセア
「コルセア」は他のウイスキーでは考えられない革新的な原料や製法で注目を集めているブランドです。
幼馴染のダレク・ベルとアンドリュー・ウェバーの2人が設立し、ウイスキーの他にも、ジンやウォッカを製造しています。
これまでに国内外で約800の賞を獲得している注目の蒸留所といえます。
「コルセア」のこだわり
2008年にケンタッキー州ボウリンググリーンに蒸留所を設立、2010年からはテネシー州ナッシュビルに蒸留所を移設。
従来のウイスキーには無い原料や製法を取り入れて造られる挑戦的なウイスキーは数々の賞を獲得するなど世界的に注目されています。
例えば、「コルセア」のブランドを世に知らしめた「コルセア トリプルスモーク」は、チェリーウッド、ブナ、ピートの3種類の燃料を使ってスモークさせたモルトを使用したアメリカン・シングルモルト。
他にも3種類の異なるライ麦を使用した「コルセア ダークライ(旧ライマゲドン)」やスーパーフードとして有名なキヌアを主原料とした「コルセア キヌア ウイスキー」などがあります。
「コルセア」の飲み方
「コルセア」はどのラインナップも高品質で、他ではあまり使用されていない原料を使っているためダイレクトに味わえるストレートがおすすめです。
オン・ザ・ロックで味の変化を楽しむのも良いでしょう。
ティンカップ
「ティンカップ」はコロラド州で2004年に誕生したアメリカンウイスキーです。
ロッキー山脈の西側にある鉱山の街が名前の由来で、鉱山夫たちがウイスキーを飲む時にスズ(ティン)のカップを使用していたことから街の名前になったようです。
それらに敬意を表して「ティンカップ」と名付けられました。
「ティンカップ」のこだわり
「ティンカップ」のコンセプトはアウトドア専用のアメリカンウイスキーです。
いつでも気軽に飲めるように、ブリキのカップがボトルの口の部分についています。
インディアナ州で造られたライ麦比率が多いバーボンと、コロラド州で造られたシングルモルトをブレンドし、世界一美しい水源といわれるロッキー山脈の水を加水してボトリングされています。
「ティンカップ」の飲み方
「ティンカップ」はスムースで口当たりが良い「アメリカンウイスキー」。
飲み方はハイボールがおすすめで、スムースで少しスパイシーな味わいと炭酸が非常にマッチします。
キャンプやバーベキューのときには、付属のカップでストレートで飲むのもいいでしょう。
キングスカウンティ
「キングスカウンティ」は2010年ニューヨーク州に設立されたブランドです。
禁酒法以後、ニューヨーク州で初めてできた蒸留所で、小規模ながら高品質のウイスキーを造ることから注目を浴びています。
「キングスカウンティ」のこだわり
「キングスカウンティ」はニューヨーク産の有機トウモロコシとライ麦、スコットランドやイングランド産の大麦麦芽を使用して造られています。
ポットスチルはスコットランド製のものを2台と、ケンタッキー州のメーカーが作ったものを使用。
ラインナップの中にはバーボンでは珍しいピーテッド麦芽を使用しているものもあります。
開放発酵(外気に接したままの状態で行う発酵)、ノンチルフィルタード製法を採用するなど、製法のすみずみにこだわりが感じられますね。
伝統的なバーボンの製法とスコッチの製法をミックスしたような、革新的な製法が魅力のブランドです。
「キングスカウンティ」の飲み方
「キングスカウンティ」のおすすめの飲み方はストレートです。
最高品質の原料、細部にまでこだわった製法をまずはダイレクトに味わってみてはいかがでしょうか。
エンジェルズエンヴィ
「エンジェルズエンヴィ」は伝説のマスターディスティラーであるリンカーン・ヘンダーソンが設立したブランド。
蒸留所はバーボンの本場、ケンタッキー州ルイビルのメインストリートに蒸留所があります。
これは禁酒法以後、最初にルイビルのメインストリートで本格的に稼働した蒸留所となったようです。
「エンジェルズエンヴィ」のこだわり
「エンジェルズエンヴィ」は伝統的な製法を守りつつ、ポートカスクやラムカスクで追熟を行うことが特徴のクラフトバーボン。
「スコッチはポートカスクを使用して熟成するのになぜバーボンはポートカスクを使わないのか」この疑問を解消してくれたのが「エンジェルズエンヴィ」です。
「エンジェルズエンヴィ」はバーボンとポートカスク両方の甘さを絶妙にマッチさせたクラフトバーボンの製造に成功しました。
ライウイスキーにはカリビアンラムカスクを使用しています。
世界のウイスキーファンから注目されるブランドとなりました。
「エンジェルズエンヴィ」の飲み方
「エンジェルズエンヴィ」は非常に口当たりがよくスムースで飲みやすい銘柄です。
バーボンが少し苦手という方にもおすすめで、ストレート、ロック、ハイボールとどんな飲み方でもおいしく飲める万能なウイスキーです。
ホイッスルピッグ
メーカーズマークの元マスターディスティラーであり、アメリカンウイスキーファンから絶大な人気を誇るデイブ・ピッカレル率いるチームによって造られた「ホイッスルピッグ」。
2007年に設立された比較的新しいブランドですが、その素晴らしい味わいから世界で1番賞を獲得したライウイスキーとなりました。
「ホイッスルピッグ」のこだわり
「ホイッスルピッグ」はバーモンド州にある500エーカー(東京ドーム43個分)の広大な敷地で造られています。
その広大な敷地ではライウイスキー以外にも家畜を育てたり、メープルシロップを作ったりとさまざまなことに挑戦しているファームです。
熟成樽にもこだわっていて、ファーム内や周辺で採れる上質なバーモンドオークを使用。
ライ麦100%で造られるライウイスキーは、華やかで高級感あふれる味わい。
「ホイッスルピッグ」は、今後も世界を席巻することでしょう。
現在、フラッグシップボトルの「ホイッスルピッグ 10年 スモールバッチ・ライ」、3種類のワイン樽で追熟させた「ホイッスルピッグ 12年 オールドワールド・ライ」、長期熟成させた「ホイッスルピッグ 15年 エステートオーク・ライ」といった3種類のラインナップがあります。
プレミアムラインの「ザ・ボスホッグシリーズ」も、日本で2023年6月より数量限定で発売されます。
「ホイッスルピッグ」の飲み方
「ホイッスルピッグ」のおすすめの飲み方はストレート。
高級感と華やかさがこれほど漂うライウイスキーは非常にまれな存在ではないでしょうか。
「ホイッスルピッグ 10年 スモールバッチ・ライ」に関してはハイボールもおすすめ。
華やかでスムースなハイボールです。
まとめ
「アメリカンウイスキー」は多種多様なものがあるのがおもしろいところで、「アメリカンウイスキー」=「バーボン」では片付けられません。
新進気鋭の小規模蒸留所がたくさん設立されており、これからのウイスキーブームを支える存在となりうるのではないでしょうか。
原料、製造方法の細部にまでこだわりを持つ「クラフトアメリカンウイスキー」がこれからもたくさん世に出ることでしょう。
皆さんも「アメリカンウイスキー」に目を向けてみてはいかがでしょうか。
今までのウイスキーの概念が変わる味わいにであえるかもしれません。