ウイスキーを探していると、終売・休売の情報を目にすることがありますよね。
では、「終売」や「休売」は、具体的にどういった状態を指すのでしょうか。
今回は、「終売」や「休売」の定義について、ウイスキー市場の動きを確認しながら、わかりやすく解説します。
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【元バーテンダー監修】休売とは?

ウイスキーを探していると、目にする機会がある「終売」「休売」という悲しい情報。
ネットの情報だけでは、すでに売り切れなのか、実店舗にはまだ置いてあるのかなど、さまざまな憶測をしてしまいます。
実際に「休売」とは、どのような状態を指すのでしょうか。「休売」と発表されている銘柄の具体的な流通状態ついて、大きく3つに分けて解説します。
メーカー欠品として使われる
「休売」をメーカー欠品とする場合が考えられます。
特定銘柄の在庫が、ウイスキーを製造または輸入(インポート)しているメーカーに無いことを「メーカー欠品」といいます。取り扱いは続いていますが、売る商品がない状態です。
「メーカー欠品」は短期間で解消される場合もありますが、銘柄によっては欠品状態が長期に渡ることもあります。
長期間の「メーカー欠品」が予想される場合、メーカーは「休売」にすることがあります。
「長期欠品につき休売中」という状態です。「長期欠品につき休売中」という場合、メーカー側も流通の再開目処が立っていないことが多く、販売再開時期の問い合わせに対して明確な回答ができません。
そのため、「休売」にすることで、メーカーに問い合わせが殺到することを防ぐ目的もあります。
なお「メーカー欠品」は、欠品している製品が日本に届けば、流通が復活する可能性があります。
しかし、製品を運ぶ便やコンテナも限られているため、主力製品やシェアの高いアイテムが優先されることも考慮しなければなりません。
以上のことから、特定の銘柄だけ欠品し続けているという事態も、しばしば見受けられます。
メーカーも把握が困難という実情
「休売」については、流通再開の確かな情報が少ないことも原因の1つです。メーカー側も、製品を運ぶ輸入コンテナがいつ来るのか見通しが立っていないケースがあります。
最近では、新型コロナウイルスによる人手不足やウクライナ戦争の影響などにより、メーカー側も製品がいつ日本に届くのか把握が困難です。
そのため、輸入ウイスキーの全体的な流通も、不安定な状態が続いています。
流通困難を避けるために行われる「出荷調整」
タンカー座礁事故や世界情勢などによる不安定な流通状態と反比例するかのように、ウイスキーの需要は日本だけでなく世界でも急激に高まり、定番品とされる銘柄も欠品となることが増えてきました。
「メーカー欠品」や「休売」といった状態に陥ることを避けるために、酒類メーカーが出荷量を調整し、市場に流す数量をコントロール(出荷調整)することがあります。
ウイスキーの瓶不足も関係
ウイスキーは通常、瓶に詰められて出荷されますが、瓶不足により流通が滞るケースもあります。
先述の輸入目処が立たない理由とも重なりますが、主にコロナウイルスの流行やウクライナ戦争が要因となり、瓶の製造工場がストップしてしまったり、瓶の輸送ができなくなってしまったりする事態が発生してしまうのです。
特にスコットランドのシングルモルトウイスキーは、スコットランド国内で瓶詰することが厳しく定められていることに注目です。
参考:東京ウイスキー&スピリッツコンペティション-TWSC ジャパニーズウイスキーの定義に関するQ&A
「原酒はあるのに詰める瓶がない」という理由でコンテナへの荷積みが間に合わず、日本市場では欠品や休売になる場合もあります。
ウイスキー終売・休売の情報を追うのは根気が必要

常にウイスキーの終売・休売情報を集めるには、時間と労力と根気が必要です。
ウイスキーの終売・休売はとても悲しいことですが、多くは流通再開の目処が立っていない状態がほとんどです。消費者としては、辛抱強く流通再開情報を待つしかありません。
また、終売や休売が発表されると買占めが行われ、市場から一気に消えてしまうこともあります。
流通数が減ると自ずと希少価値が上がるため、転売の対象になってしまうケースがあるのも事実です。
ときどき、製造・輸入メーカーが正式発表する前に情報がリークされることもありますが、その情報が正しいかどうかを精査することは、一般消費者にとっては困難といえます。
専門家が語る終売・休売パターン3つ

ウイスキーが終売・休売してしまうケースには、いくつかの要因が複雑に絡んでいます。
終売・休売という状態に陥ってしまう理由について、3つのパターンに分けて具体例を交えながら解説します。
1. 蒸留所の原酒不足
ウイスキーを生産している蒸留所の原酒(ウイスキー)が不足し、出荷できないというのが大きな要因の1つです。
昨今の世界的なウイスキーブームにより消費が増える一方、生産が追いつかないことで原酒不足が起こります。
ウイスキーは樽で熟成を行うため、出荷までに非常に長い時間が必要です。
大手の蒸留所であれば、出荷量の増減から早めに手を打つことで対応できますが、中・小規模な蒸留所では原酒のストック規模が小さいため、原酒が足りなくなってきてから生産設備を増強しても、原酒不足に陥りやすいのです。
原酒不足を打開するために、ラインナップを更新する場合も
長期熟成の原酒が不足している場合、ラインナップを更新して製品をリリースすることがあります。
熟成年数の表記を辞め、ノンエイジ(年数表記無し)となるパターンです。ノンエイジ製品を定番として、既存の製品を終売や休売とすることもあります。
この他にも、シェリー酒において樽での運搬が認められなくなって以降、シェリー樽熟成のウイスキーも不足している傾向にあります。
【ラインナップ入れ替え例】ベンリアック
2020年9月にスコットランドのシングルモルトウイスキー「ベンリアック」が、ボトルやラベルデザインを刷新し、ラインナップを大きく変更しました。
変更後のラインナップには、今までリリースされていた100%シェリー樽熟成の「ベンリアック12年 シェリーウッド」の後継品となる銘柄がありませんでした。
そのため、シェリー樽熟成のみで構成されたベンリアックは無くなり、「ベンリアック12年 シェリーウッド」はラインナップ入れ替えとともに終売。
シェリーの空き樽が高騰したため手に入りにくくなり、シェリー樽熟成の原酒の確保が困難になったのではと考えられています。
ベンリアックのシェリー樽熟成モルトが全く無くなったということはなく、入れ替え後の10年、12年レンジのベンリアックにバランスよくブレンドされています。
2. 輸入元販売の契約が終了
輸入を行っているメーカーが販売元との契約が終了し、取り扱いがなくなるパターンです。取り扱いが終了したため、基本的に日本には流通しなくなります。
ただし、製品の製造自体は続いているということもあり、終売・休売というより日本への正規輸入がないという状態です。
この場合、正規とは別で、並行輸入や個人輸入で購入できる可能性があります。
また、別のメーカーが販売元と契約すれば、正規輸入による流通が再開するといったことも考えられます。
【輸入元販売の契約終了事例】アーリータイムズ
「アーリータイムズ」はもともと、アサヒビールが輸入販売を行っていました。
しかし、2022年6月14日にアサヒビールの輸入元販売契約が終了し、国内終売に。
その後、明治屋が「アーリータイムズ」をはじめとした、サゼラック社所有のアルコール7品の取り扱いを開始。
新製品「アーリータイムズ ホワイト」が日本で発売開始されました。これで「アーリータイムズ」ブランドが国内復活したといえます。
3. 製造元による製造中止
製造自体が終了し、終売となるパターンです。多くの場合、今後のウイスキー製造見込みがないため、現在庫しかありません。
輸入をしているメーカーが現在庫を卸や小売りに流すため、酒屋や百貨店、スーパーの酒販部門を探し回れば発見できる可能性が残されています。特に地方の酒屋では、終売品等の掘り出し物があるかもしれません。
【製造元が製造中止した事例】「アーリータイムズ イエローラベル」
前述のとおり、「アーリータイムズ」ブランドは代理店を明治屋に変更し、日本で販売されました。
その中でも「アーリータイムズ イエローラベル」は国内で再販されませんでした。
最終的にアメリカ本土でも製造中止となり、惜しまれつつ完全終売終売品となりました。
終売・休売になったウイスキーはどうなる?

ウイスキーが終売・休売になると価格が高騰し、定価での購入が困難となります。
かつて定価または定価以下で手に入ったウイスキーも、供給数の減少やプレミアム化により、なかなか買えなくなることも珍しくありません。
この現象は、ジャパニーズウイスキーや国産ウイスキーの多くが該当します。例えば、代表銘柄「山崎」ノンエイジの700mLボトルは、かつて希望小売価格が1,250円でしたが、現在の相場は1万円台です。
「あのとき気軽に買えた銘柄なのに、今では手に入りづらい」
「早めに買っておけばよかった」
という状況になることもよくあるため、ボトルストックするファンも一定数います。
2023年に終売・休売になってしまうかもしれないウイスキーはあるのか?

ウイスキーの終売・休売情報については、2023年もSNSなどインターネット上でさまざまな憶測が繰り広げられています。
2023年3月現在、インターネット上において目立った終売・休売情報については確認できませんが、出荷調整されている銘柄が散見されます。
例えば、サントリーが発売する「知多」は、出荷調整の影響を受ける銘柄の1つです。
出荷調整により700mLボトルの入手がしづらい状況になっていますが、コンビニ限定のミニボトルは、まだ手に入りやすいといえます。
2023年の値上げ情報は発表あり
なお、値上げ情報については各メーカー・代理店で随時発表されています。2023年4月より値上げ予定となった銘柄は128本ほどあり、名の知れた銘柄も多数、値上げの影響を受けていることがわかりました。
値上げが決定している銘柄については以下の記事で詳しく紹介しています。気になる銘柄があるかどうか、ぜひチェックしてみてください。
また、以下では、2022年に終売や休売になったウイスキーについてご紹介しています。併せて参照ください。
まとめ

SNSやインターネットなどのメディアで情報が入手しやすくなった現在。好きな銘柄や、気になっていた銘柄の終売・休売情報は、ウイスキーファンにとって悲しいものです。
消費者である私たち自身も、改めてメーカーや販売代理店が発表する「終売・休売」とはどのような基準の元で決定されるのかを知っておくと、今後情報を精査するうえで役立ちます。
今後、ウイスキーに関する情報をチェックする際は、この記事に記載してある内容を思い出しながら、情報収集に役立ててくださいね。