本とウイスキー。
一見すると関係のない組み合わせに感じますが、実はこの2つを合わせて一緒に楽しむことで、よりぜいたくな時間が過ごせます。
本記事では、ウイスキーを飲みながら読みたいおすすめの小説・エッセイをご紹介。
さまざまなジャンルがあるので、自分にピッタリの作品が見つかるはずです。
この記事の監修者
ウイスキーと小説は合うのか【両者の深い繋がりについても解説】
ウイスキーは芳醇な味わいと香りをたのしみながら、ゆっくりと飲むお酒です。
その特性から、小説やエッセイとの相性は抜群。
中でもウイスキーが出てくる作品を読みながらウイスキーを飲めば、ぜいたくな時間を過ごせるに違いありません。
まずはウイスキーと深い繋がりのある、ウイスキーを愛した作家たちをご紹介します。
実はウイスキーはさまざまな文学作品や映画の中に登場している
ウイスキーは、数々の小説・エッセイや映画に登場します。
これは、ウイスキーが作品において重要な役割を果たすアイテムになるからです。
多くの場合は、登場人物の個性や特徴を表したり、飲むときの心理状態を表したりするときに登場します。
世界的に有名なハリウッド映画やイギリスが舞台の映画などで、主人公がウイスキーを飲むシーンを見たことがある方もいるかもしれません。
例えば『007シリーズ』や『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』などに登場しています。
映画に登場するウイスキーや、ウイスキーを題材にした映画に興味がある方は以下の記事も併せてご覧ください。
ウイスキーを愛した作家たちを紹介
ウイスキーやお酒を愛する作家をご紹介します。
・村上春樹
・伊集院静
・中島らも
・椎名誠
※敬称略
村上春樹氏や椎名誠氏はウイスキーに関するエッセイも出しており、ウイスキー好きとして特に有名。
その他に、伊集院静氏、中島らも氏などの作家も大のお酒好きとして有名なようです。
昭和の時代には、銀座の文壇バーやクラブに出版社や作家たちが夜な夜な集まり、朝方まで飲み明かすこともあったり、お酒の飲みすぎで身体を壊してしまったりする作家もいたようです。
名作を生み出す作家たちは、ときにウイスキーを飲みながら執筆することもありそうですね。
作家名については以降、敬称略にて記載させていただきます
村上春樹とウイスキーの関係性
日本を代表する小説家として名高い、村上春樹。
1979年『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞し、デビューを果たしました。
1987年発行の『ノルウェイの森』がロングセラー作品となり、2009年時点で上下巻の合計売上が1000万部のベストセラーに。
村上春樹のウイスキー好きはファンの中でも有名で、さまざまな作品のシーンやセリフに“ウイスキー”や“バー”が登場します。
後述しますが、彼がスコットランドのウイスキー生産地をめぐった旅行記・エッセイも出版されています。
ウイスキーに関するおすすめ小説・エッセイ12選【Whiskeen編集部セレクト】
日本のウイスキー誕生についての小説や、作家たちのウイスキー愛が伝わるエッセイ・紀行文など、ウイスキーが登場する本のジャンルはさまざまです。
その中から、Whiskeen編集部が12冊を厳選しました。
お好みの本を選んで、その世界観に没入しながらウイスキーを味わってください。
ウイスキーに関するエッセイ・紀行文
ウイスキーに関するエッセイ・紀行文は、作家が実際にウイスキーの生産地を巡ったりウイスキーを楽しんだりする描写が多くあります。
なかなか足を運ぶことが難しい、スコットランドの旅行記として楽しめる作品も。
ぜひウイスキーを飲みながら、気軽に読んでみてください。
『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』村上春樹著 新潮文庫
村上春樹が、ウイスキーの聖地とも呼ばれるスコットランドのアイラ島や、パブの文化が深く根付いたアイルランドへ夫婦で訪れ、現地のパブや蒸留所を巡った紀行文です。
『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』
このタイトルが、村上春樹の世界観を見事に表現しています。
現地の様子がうかがえる写真が多く載っており、ウイスキーを片手に何度も読み直したくなるでしょう。
アイラモルトのロックと合わせたい1冊です。
『青いライオンと金色のウイスキー』田村隆一著 筑摩書房
詩人でもある田村隆一のエッセイです。
彼は大のお酒好きとして知られており、ユーモアを交えてウイスキーについて語っています。
お酒好きとして、読んでいて共感できる部分の多い作品。
軽い口当たりのスコッチと合わせたい1冊です。
『酔うために地球はぐるぐるまわってる』椎名誠著 講談社
お酒好きな作家としても有名な椎名誠の、独特な語り口のエッセイです。
ウイスキー・ビールなどのお酒にまつわるウンチクや、スコットランドや日本の蒸留所を巡った紀行文も楽しめます。
本書にも登場する、ウイスキーのソーダ割りやビールを飲みながら読みたい1冊です。
ウイスキーが登場する小説
ウイスキーが登場する小説は、伝記やミステリーなど、さまざまなジャンルがあります。
ただの飲み物として登場するわけではなく、ウイスキーが物語の核となっていたり、人物の性格を表す重要なアイテムだったりします。
作品の世界観に没入しながら、ぜひウイスキーをゆっくり飲んでみてください。
『ヒゲのウヰスキー誕生す』 川又一英著 新潮文庫
NHK連続テレビ小説「マッサン」のモデルとして有名な竹鶴政孝と妻のリタが、ニッカウヰスキーを創業するストーリー。
ジャパニーズウイスキーの創成期が描かれている作品で、ラブストーリーとしても楽しめます。
竹鶴政孝は”日本のウイスキーの父”とも呼ばれており、日本における「本格的なウイスキー造り」を広めた立役者です。
いつの日か、この日本で本物のウイスキーを造る――。大正7年、ひとりの日本人青年が単身スコットランドに渡った。竹鶴政孝、24歳。
川又一英 『ヒゲのウヰスキー誕生す』 | 新潮社
ニッカのウイスキーに合わせたい1冊です。
『なぜ、そのウイスキーが死を招いたのか』三沢陽一著 光文社
バーを舞台にしたミステリー小説で、ウイスキーがキーワードとなり、さまざまな事件を解決するストーリーです。
短編集なのでミステリー小説初心者でも読みやすく、作中に登場するウイスキーの描写も楽しめる作品です。
ここは仙台のバー。ローカル誌の記者が、一週間ほど前の事件を思い出しバーテンダーに語り出した。――三ヶ月前に取材をした医師が殺されたと知り合いの新聞記者から連絡が来た。現場に駆け付けると、微かに燻製のような匂いが漂ってくる。この香りは一体――?
なぜ、そのウイスキーが死を招いたのか 三沢陽一 | 光文社文庫 | 光文社 (kobunsha.com)
ピートのきいた、スモーキーなスコッチウイスキーと合わせたい1冊です。
『風の歌を聴け』村上春樹著 講談社
群像新人賞を受賞した、村上春樹の原点ともいえるデビュー作。
神戸を舞台に、20代最後の年を迎えた主人公が、1970年の夏の日々を記した作品です。
この小説を読むと、まるで1970年代にタイムスリップしたような感覚になります。
さわやかな潮の香りのするスコッチウイスキーと合わせたい1冊です。
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』村上春樹著 新潮社
村上春樹の4作目となる長編小説で、初期の最高傑作といわれる作品です。
「ハードボイルドワンダーランド」と「世界の終わり」という章が交互に進行します。
異なる2つの世界に、主人公である「僕」と「私」が迷い込む、不思議なストーリー。
少し暗い印象ですが、どんどん引き込まれます。
バーボンと合わせたい1冊です。
『今夜、すべてのバーで』中島らも著 講談社
酒豪で知られていた、中島らもの作品。
冒頭文が、古代エジプトのお酒についての小話から始まります。
アルコールが原因で入院した作者の実体験をユーモラスに書いた小説で、アルコール依存症の闘病記でもあります。
アルコール依存症への警鐘を鳴らす1冊ですので、お酒が好きな方はぜひ読んでみてください。
『ロング・グッドバイ』 レイモンド・チャンドラー著 村上春樹訳 早川書房
レイモンド・チャンドラーによる、ハードボイルド小説シリーズの1作品『長いお別れ』の新訳版。
なんと、日本語に訳したのは村上春樹です。
主人公の私立探偵フィリップ・マーロウは、とあるバーで泥酔しているテリー・レノックスという男と出会う。そして彼から突然「メキシコに連れて行ってほしい」という依頼を受けるも……。
主人公の「男の渋さ」を感じられる作風で、「これがまさにハードボイルドだ」と感じられるストーリー。
イギリスで生まれたミステリー小説なので、スコッチウイスキーと合わせたい1冊です。
『琥珀の夢 上』伊集院静著 集英社
サントリーの創業者で、ジャパニーズウイスキーの製造に人生をかけた男、鳥井信治郎の物語。
テレビドラマ化もされました。
日本にウイスキーはもちろん、洋酒さえ馴染みのなかった時代に若くして商店を始め、今のサントリーとして成長するまでのサクセスストーリー。
経営哲学本としても楽しめる物語です。
ぜひ、サントリーのウイスキーと合わせて読んでみてください。
『女王陛下の007』イアン・フレミング著 井上一夫訳 早川書房
映画化もされ、007シリーズの中でも人気の作品です。
数ある007シリーズの中でも、モルトウイスキーを飲む場面が書かれている、『女王陛下の007』が特におすすめ。
主人公のジェームズ・ボンドの父親がスコットランド人ということもあり、ウイスキーを飲む場面が多く登場します。
ピートのきいたアイラモルトと合わせたい1冊です。
『オリエント急行の殺人』アガサ・クリスティー著 山本やよい訳 早川書房
『オリエント急行殺人事件』は、アガサ・クリスティーのミステリー小説シリーズの中でも、特に有名な作品です。
名探偵ポワロが主人公のシリーズには、ウイスキーが随所に登場します。
ハードボイルドな探偵によく似合う、アメリカンウイスキーのバーボンと合わせたい1冊です。
小説・エッセイに登場するウイスキー【合わせたい銘柄も】
ここで、本記事で紹介した作品に登場するウイスキーの銘柄や、合わせたい銘柄を厳選してご紹介します。
「カティサーク オリジナル」
アルコール度数 | 40% |
原産国 | イギリス |
容量 | 700mⅬ |
「カティサーク オリジナル」は、村上春樹の作品に頻繁に登場する、ブレンデッド・スコッチウイスキーです。
帆のラベルが特徴的で、イギリスの快速帆船「カティサーク号」が名前の由来。
しっかりとしたバニラの甘さと華やかな風味が楽しめ、滑らかな口当たりで飲みやすい仕上がりです。
村上春樹の作品を読みながら、飲んでみましょう。
「ボウモア 12年」
アルコール度数 | 40% |
原産国 | イギリス |
容量 | 700mⅬ |
「ボウモア」は“アイラの女王”ともいわれるアイラモルト。
ドライなスモーキーさや潮の香りは、アイラ島の厳しい気候を彷彿とさせます。
村上春樹の紀行文『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』で、スコットランドのバーに夫婦で訪れて飲んだ銘柄です。
ぜひ、紀行文やエッセイと合わせて楽しんでください。
「ラガヴーリン 16年」
アルコール度数 | 43% |
原産国 | イギリス |
容量 | 700mⅬ |
「ラガヴーリン 16年」も村上春樹の『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』に登場するウイスキー。
熱烈なファンが多く、「アイラモルトの決定版」と呼ばれるほど完成度が高いです。
どっしりとしたスモーキーさや、ナッツのような芳ばしさ、ドライフルーツのような深い甘さが楽しめます。
「ラガヴーリン 16年」も、村上春樹の作品に合わせたい銘柄です。
「ラフロイグ 10年」
アルコール度数 | 43% |
原産国 | イギリス |
容量 | 750mⅬ |
「アイラモルトの王」とも呼ばれる「ラフロイグ 10年」は、英国王室御用達の蒸留所で造られる、格式高いウイスキーです。
ピートや潮の香りと滑らかな口当たり、ドライでクセのある味わいが楽しめます。
「ラフロイグ 10年」も、村上春樹の『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』に登場します。
村上春樹の作品と合わせたい銘柄ですね。
「竹鶴ピュアモルト」
アルコール度数 | 43% |
原産国 | 日本 |
容量 | 700mⅬ |
ニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝の名を冠したウイスキーです。
素材はモルトのみを使用し、グレーンを使わずに実現した究極の飲みやすさが特徴で、ウイスキー初心者にもおすすめ。
バニラのような甘さと、洋梨のようなフルーティーさ、ほのかなスモーキーさが感じられます。
日本の作家の小説に合わせたい銘柄です。
「山崎」
アルコール度数 | 43% |
原産国 | 日本 |
容量 | 700mⅬ |
日本を代表するシングルモルトウイスキー「山崎」。
『琥珀の夢』に登場し、ウイスキーを日本に広めたいという鳥井信治郎の夢が形となった1本です。
現在では年数表記のある「山崎」は入手困難になっていますが、ノンエイジの「山崎」は比較的手に入りやすいでしょう。
飲みやすさの中に複雑な味わいが感じられ、フルーティーで華やかな樽香も楽しめます。
「山崎」も、日本人作家の小説や伝記本と合わせたい銘柄です。
まとめ
ウイスキーは、1人でゆっくりと楽しめるお酒です。
ウイスキーの知識を身に付けられるのはもちろん、作中に登場するウイスキーを飲みながら読めば、さらに世界観に没入できるでしょう。
今回ご紹介した小説・エッセイを参考に選んだ本を読みながら、ご自宅やバーでウイスキーを飲んでみてください。